魔素。
——来た! 来たよ!!
(え? クロム!)
野営のテントをたたみ、全員で街に入るよう進み始めたその時だった。
正面から膨大な魔力。前の鬼よりも強く、それでもクロムよりは劣る。
ただしそれが二体ある。
(どうしよう、なるべく騎士団さんの顔を立てて援護だけに回るつもりだったけど)
少しばかり強過ぎる気がしないでもない。
今でもかなりの魔力を熾している。大量の熱量の発生。これをこのままこちらに打ってくるのだったら騎士団には荷が重い。
魔法師団でもこの全ての人員を守るほどの魔法はきっと難しい。
魔女エメラの得意な次元魔法は、普通の魔法使いでは習得できないレベルの高みにある。
あの鬼の時のように呆気なく倒せるレベルには30人の魔法士が集まっても難しかったろう。
ルークは、こちらの犠牲がゼロでなんとかするという意味では言ってない。
ある程度の犠牲を覚悟してでもなんとかする、と、そういう意味で言っていたのだから。
(ルーク様たちはまだ気が付いてない。最初の一撃だけでも防いでみせる!)
魔人を全て次元魔法で閉じこめるには距離が離れすぎている。
それに、あの時のあれはあの鬼が油断してくれたからうまく自滅してくれただけ。
「アウラ! マ・ギア! アウラクリムゾン! 来て!」
小さなギアが寄り集まって盾のような形に変わる。
ギアアウラの上位存在、マ・ギア、アウラクリムゾンを呼び出したセラフィーナ。
そのまま魔人と騎士団の線上目掛けてそのアウラクリムゾンの盾を飛ばす。
(間に合って!)
最初の一撃さえ防げばこちらの被害は減るはず。
ルーク様の指示も間に合うはず。
騎士団と魔法師団が本来の力を発揮できればなんとか……。
魔法を使うための神の使徒、ギアたちは、この世界に満遍なく存在している。
そんなギアたちと心を通じるために重要なのが「魔力特性値」という概念だった。
「魔力特性値」が高いほど多くのギアの権能を引き出せる。つまり強大な魔法を行使できるかどうかは、魔力特性値の高さとその自身に秘めるマナ、魔力の多さにかかっている。
普通人間で1~2、魔法を使えるレベルでやっと10。高位の魔道士でも20ほど。
50を超えたら達人。歴史上の偉人でさえ70~80くらいだろう。
聖人と呼ばれるような偉大な人物でさえ、100を超えていたかどうか。
あの魔人たちは70レベルを超している。
身に秘める魔素もかなり多い。
魔法とは、ギアにマナを与えてその権能を引き出す行為そのものを指す。
マナと魔素は、姿性質を変えただけの神の氣エーテルそのもの。世界の根幹。
魔素には人や動植物に対する悪影響があるため忌避されるけれど、そのエネルギーは純粋なマナよりも濃度が高い分だけ厄介だ。
その分、短時間でより強い魔力を発揮できるのだから。




