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血の契約。

「おのれ若造め。とうとうそこまで来おったか!」


 ラカン・マキアベリ侯爵は自身の執務室の椅子にどっかりと座り、部下の報告を聞いていた。


「は! 閣下。現在領都西部の平原で野営中であります」


「ブラル魔道士からはその後の報告は」


「音信が途絶えたままであります。しかし、魔道士連の遠見によれば目標地であった場所はすでに浄化されているらしいとのこと。魔結晶も行方不明になっておりまして」


「失踪したブラルの代わりのものを寄越すよう魔道士連に連絡はしてあるのか?」


「それが……、依頼はしてあるのですが魔道士連からは拒否されまして」


「どう言うことだそれは!」


「どうやら王宮魔道協会より圧力があったそうです。国家反逆罪に問われたいのか、と」


「ふん! 腰抜けどもめ! 隣国ベルナールと通じ現在の王宮を打倒してしまえばこの国の王になるのはこのわしだというのに」


「なぁ、ラカン殿よ。こちらから仕掛けて奴らを屠ってしまえばいいんじゃないのか?」


 真っ赤なツノ、肩にはその膨大な筋肉が盛り上がる。赤鬼のフェルノは隣にいる黒豹のノルドとともに立ち上がってラカンと部下の会話に割って入る。


「奴らはルージをも倒しているんだぞ」


「はん! あんな出来損ないの弟分と一緒にしてもらっても困る。俺とノルドなら人間どもなど一瞬で灰にしてみせるさ。そもそも森での急襲に俺らを出してくれていればこんなことにはならなかったんだ」


「しかし……」


「このままだとジリ貧なんだろう? ラカンのダンナ。屋敷で返り討ちにしたんじゃ表立って反逆したことになる。だから森で勝手に魔獣に倒されたことにすればいい。そう言ってたのはあんたじゃないか」


「まあ、そうではあるが……」


「やめろフェルノ。こやつは我らが自分の元から離れるのが怖いのだ。俗物だからな」


「バカな! そんなことはないぞノルドよ!」


「俺の鼻はよくきくんでな。お前の中の恐怖の匂いも感じているぞ」


 うぐぐとくちびるを噛み締めるラカン・マキアベリ侯爵。

 そのでっぷりとした身体をゆすって立ち上がると。


「ならやってみせるが良い。わしはもう知らん」


「じゃぁそうしよう。そのかわりこれが最後だ。こんな世界に呼び出され命令されるのはもう真っ平ごめんだ。俺は好きにする」


「はは、ノルド。まあ、俺も同感だな。力が振るえると思えばこそ従ってきたが、こんなのが主人では俺らの格も落ちちまうってもんだ。じゃぁラカンよ、契約の解除だ。その血をもって応えよ」


「わかった。では、お前らを自由にしてやろう。その代わりわかっているな」


「ああ。これが終わった後も国中で暴れ回ってやるさ」


「ならいい。では」


 ラカン・マキアベリ侯爵は懐から二枚の魔法紙を取り出して、そこに指を少し切りその血を垂らす。


「ラカン・マキアベリの名において。赤鬼のフェルノ、黒豹のノルド両者との血の契約を解除することを宣言する!」


 ラカンの手から離れた魔法紙が一瞬で燃え上がり、灰も残さず光に溶けた。

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