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魔法のチカラのそのおかげで。

(セラフィーナ? それがわたしの名前なのかしら……)


 なんとなく聞き覚えがあるような気もするけど……とそんなふうに思いながら聞き流す。

 どうにも自分の名前ってふうにはしっくりとこない。


「旦那様のお名前、フルネームだとどうおっしゃるのかしら……」


 いかにも知ってるけどフルネームには自信がないからみたいな風を装って。


「ああフルネーム。旦那様は普通にミドルネームにフォンがついてらっしゃるんですよ。普段はあまりそう名乗りませんものね。正式なお名前だと、ルークヴァルト・フォン・ウィルフォード公爵閣下でいらっしゃいますわ」


「そうなのですね」


「奥様ももうセラフィーナ・ウィルフォード様になられたのですから、お間違いのないようにしてくださいね。社交の場でレイニーウッドの家名を名乗ってしまうといけませんから」


「そうね。ありがとうマリア。気をつけるわ」


 そうにっこり微笑み答える。

 ああでも、これでなんとか自分の名前と旦那様の名前はわかった。

 ここはウィルフォード公爵家。

 そんなお貴族様の頂点のようなお家に嫁いできたっていうのだろうか?

 信じられないけど一応自分の実家も貴族の一員だと言うことなのだろう。

 あいにくとこの国にどれだけの貴族がいるのだろうとか、そういった方面の知識はまるっきし残っていなかったらしい。

 公爵様って言ったらものすごく偉い人。王様の次くらい。

 それくらいのイメージで。


 マリアが運んでくれた朝食をいただいて。

「ご馳走様、マリア」

 そう笑みを浮かべ言うと彼女、

「昼食はお部屋で摂られますか? できれば夕食は食堂で召し上がっていただけると助かります」

 と、食器を片付けながらこちらを覗き見る。

 その時は、夕食はお皿の数が多くなるから食堂の方がいいんだろうなぁくらいの気持ちで、

「わかりました」

 と頷いた。


「奥様の微笑みは心がやすまりますわ。それでは失礼いたします」

 マリアがそうにっこり微笑んでお部屋を出ていったあと、なんだかホッとして自然と笑みが溢れた。

 記憶がなくってもなんとかやれていることに、安心して。

 っていうか、なんとなく「わたしはわたしだもの」とそんな思いが先にたつ。

 記憶なんて些細なことだと思えるくらい、自分自身にそこまで悲壮感を持っていなかった。

 記憶喪失になったら、普通だったらこんなにも泰然としていられないかも、なんてふうにも思うけど、それでも「なんとかやって行けそう」だなんてお気楽に思えるくらいには。


 それに。


 心の中にあるマナが、騒ぐのだ。

 外に出して、って。


 この世界には魔法がある。


 人の心の中には魔力のもとであるマナを貯めておく場所がある。

 そして、そのマナを使って魔法を行使するための値。魔力特性値というものがあるのだ。

 それを、感じていた。

 自分の中にあるマナを。

 そしてそれに刺激されるように、そんな魔法の知識がセラフィーナの頭の中にシャワーで水を注ぐように次から次へと流れてきていた。


 マナを貯めて置く場所をバケツに例えると、セラフィーナのバケツはきっととっても大きいのだろう。

 いっぱいのマナがそこに溜まっていて、今にも溢れそうになっている。

 そして。

 《ねえ、ちょうだいな》

 《そのあまーいマナ、ちょうだいな》

 そんなことを喋りながらセラフィーナの周りをぷんぷん飛び回ってる光の粒のようなもの。

(あれは、キュア? アウラもいる? それに、ディンも)

 この世界でマナを物理的に魔法へと変換してくれる存在。ギアという名前の天使たち。

 マナをギアに与えることで通常の物理法則を凌駕する力を生み出すこと。

 それが魔法(マギア)

 そして、そんなギアたちと心を通じることができる値が魔力特性値という。

 当然、特性値が高ければ高いほどより高度な魔法(マギア)を行使できる。

 彼らはマナが大好きだから、あげると喜んでお仕事をしてくれる。

 それが魔法っていう現象として現れるわけだ。


 セラフィーナが自分自身についてなんとなく自信みたいなものを持っていられるのも、こんな自分の中にある魔法の力かもしれない。そう感じていた。




(こんな状況に最初はちょっと怖くなったりもしたけれど、それでも絶望したりしなくて済んだのも。みんな魔法のおかげかなぁ)


 だなんて。そんなふうに。



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