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前世の頃なら……。

(大丈夫、だったかな……)


 セラフィーナがたどり着いた時にはすでに決着がついていた。

 ルークヴァルトの指揮のもと、見事ドラゴベアーを討伐完了したところ。

 怪我人も数人出てはいるけれどそこまでの被害でもなさそうだ。


(よかった……)


 安心したところで張り詰めていた糸が切れたように、意識が遠くなっていく。

 このまま分身体を維持するのも難しい。


(もう。これくらいで意識が飛びそうになるだなんて……)


 なんとか維持していた気持ちももう限界だった。

 昔なら、前世の魔女エメラの頃なら、こんな魔法、なんてことなかったのに……

 そう今の貧弱な身体、精神に恨み言を言いつつ、セラフィーナの意識は遠のいていった。


 そのまま光の泡に包まれるように魔女エメラの姿は消失する。

 分身体は解除され、マナは全て本体の場所まで還っていったのだった。








「大丈夫? お嬢ちゃん?」


 はっと気がついたセラフィーナ。

 そこは宿屋の庭でも借りている部屋でもなく。


「ここは……、わたし……」


「もう、びっくりしたよ? 敷地の端っこで倒れてるんだもん。騎士さんたちが行ったあとあんた一人残って何してるんだと思ったら、他のお客が倒れてるあんたを見つけてくれてさー」


(ああああああ。恥ずかしい……)


「すみませんおかみさん。助けてくださって感謝します。ありがとうございました」


 よく周りを見たらここは宿の食堂の長椅子。

 そこに寝かされ毛布をかけてもらっていた。


「いいよお。まあとにかく無事でよかった。あんた、あの人ら追いかけて無茶したんかい? 疲れてたんだね? 今夜は精のつくもん食べてゆっくり休みな」


 もうすでに陽が沈みかけている。窓の外、西の空はあかね色に染まっていた。


「夕飯は肉がたっぷりのスープだからね。うまいよ? 食べてきなよ」


「ありがとうございます。ふふ。美味しそうですね」


「はは。味はこの町一番さ。いっぱい作ってあるからね」


 美味しそうな匂いが立ち込めている。優しい家庭的な料理の匂い。


 ひとまず、ルークヴァルトたちの危機も去った。

 魔結晶が他にもあるのかどうかは不明だけれど、きっとあれはマキアベリ侯爵にとってもとっておきの一手だったのだろう。追撃の気配がないことからもそれはわかる。


(今日のところはゆっくり休んで明日に備えよう)


 騎士団も領都に入るのは明日になるだろう。

 それまで、さっきの魔人のような相手が出てきませんように。

 そう祈って。

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