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【Side ルーク】ウィルフォード公爵家。

 元々は本当にただのバーターによる契約婚のつもりだった。

 お飾りの妻。

 手を出すつもりも無かったし、ここで自由に過ごしてもらえればいい。そうすればあいつとの義理も果たせる。そんな軽い気持ちだったのだ。


 そもそも女性とともに過ごすなどということに耐えられそうになかった。


 父は身体の弱い、おとなしい人だった。ウイリアム王陛下の弟ではあったけれど生母の血筋が低かったせいか、貴族院卒業と同時にまだ十五歳の若さで臣籍降下をし、ウィルフォード公爵家を立ち上げたのだ。

 しかし、公爵家といっても名前だけだ。後ろ盾も権力も何もない。せめて父の血筋が歴史ある四大公爵家と繋がりがあったなら、そちらの援助も期待できただろうに。

 母は子爵家の出だったけれど、一緒にいてもいつもいつも口から出るのは家に対する文句だけ。

 公爵夫人になるのだと喜び勇んで嫁いできたもののお金もない名前だけの公爵家。

 社交の場に出てもたいして敬われるわけでもなかったことにうんざりしたのか、よりにもよって父が病の床にいる大変な時に他家の男性と不義をはたらき、家を出されることとなる。

 全てを知った王陛下が激怒したのだと、そう聞いた。


 母に母親らしいことをしてもらった記憶はないし、母だって私のことを愛してなどいなかったのだろう。貴族の家族はそういうものだとそう思っていた分、その事件に対するダメージはあまり負わなかったし、母が居なくなっても「寂しい」と思うこともなかった気がする。

 ただ怒りだけが残って。

 女なんて生き物は所詮そういうもの。

 信用なんてできないし、結婚なんて子を残すための手段でしかないし、家と家とのつながりをつくるための政略的なものでしかない。この時に私の中で結婚というものはそういうものだという確信みたいなものが芽生えたのだった。


 病の果てに父が逝き、一応王陛下の後見の元私が公爵位を継ぐこととなった。

 家に力がない名前だけの公爵だなんて私には関係がなかった。ひたすら勉学に励み鍛錬を積み重ね、卒業後は国家公安省に入省、国家安全保安局という部署に配属され、そこでまたひたすら仕事に励んだ。

 陛下のコネも多少はあったかもしれないけれどそれでも天下りでそういう役所に勤めているのではないという自負はあった。

 爵位など関係なく付き合える同僚たちにも感謝して。

「自分の居場所を見つけた」

 そう思え、ますます仕事にのめり込んでいったのだった。


 言い寄ってくる女性がいなかったわけじゃない。

 それでも。

 ただ爵位だけ、金だけ、権力だけ、そんなものを欲しているのだろう女性という生き物とまともに話をする気にはなれなかった。

 巷で氷結公爵だなんて呼ばれ方をしているのも知っていたけれど、それでも構わなかった。

 こんな公爵家、自分の代で潰れてしまっても構わない。

 本気でそう思っていたから。

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