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未来から吹いた風2 《軍人転生編》  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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幕間: 戦艦大和、ハワイ沖に咆吼す

 私の名は宮里みやざと 秀徳しゅうとく

 最近、戦艦大和の艦長となった、海軍大佐である。


 大和については艤装委員長もやったから、すみずみまで知っている。

 この戦艦は日本が実に20年ぶりに新造した、最強の艦なのだ。

 しかし大和型のコンセプトは、それまでの戦艦とは一線を画する。


 なんと敵戦艦との砲撃戦を、最大の目的としていないのだ。

 もちろん大和は、その主砲にふさわしい鋼鉄の鎧を、身にまとってはいる。

 しかしその主目的は、空母に随伴し、敵攻撃機を振り払う護衛だというのだ。


 その話を平賀大将から聞かされた時は、唖然としたものである。

 ならばその主砲は、何のためにあるかと訊けば、主に敵拠点の攻撃になるだろうと言われた。

 そんな馬鹿な。


 いくら航空機の発展が目覚ましいとはいえ、戦艦が撃沈されるとは思えない。

 戦艦を撃退するのは、やはり戦艦の主砲だと思うのだが。


 しかし艤装委員長として、軍令部の戦術を学んでいくと、やがてその考えも変わった。

 航空機の発展は想像以上であり、数十もの攻撃機に囲まれた場合、その破壊力は凄まじいものとなるのだ。

 しかもせいぜい40kmの射程しかない戦艦に対し、航空機の行動範囲は千km以上にも及ぶ。


 これでは戦艦同士で殴り合う前に、甚大な被害を受けるのも道理であろう。

 平賀大将は言う。

 ”大和の主砲こそは、騎馬武者や城を討つ槍。そして高角砲と機銃は、無数の雑兵を打ち払う刀なのだ”、と。


 う~む、槍と刀か。

 そして大和の最大の使命は、弓兵たる空母を守る、皇国の盾なのだ。

 これはこれで、やりがいがありそうだな。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 就役して完熟訓練を終えた大和に、とうとう出番が回ってきた。

 空母と共にハワイ近海へ進出し、敵基地を破壊するのだ。

 場合によっては、敵の戦艦部隊との決戦も、あり得るかもしれん。


 しかも我が艦には、三川司令長官が座乗されるのだ。

 うむ、腕が鳴るな。


「鳳翔から連絡。”ワレ、コウゲキタイヲ、ハッカンス”」

「うむ、いよいよだな。警戒を厳にしつつ、敵の来襲に備えよと、各艦に伝達せよ」

「はっ、了解です」


 いよいよ空母から、攻撃隊が発進すると聞いて、三川長官から命令が飛ぶ。

 そしてハワイの攻撃後には、おそらく敵の攻撃機が飛来するだろう。

 ここはすでにハワイに近く、敵の攻撃力も侮れん。


 その時こそ、この大和は盾となって、空母たちを守り抜くのだ。

 大和の乗員たちよ。

 皇国の興廃が、この戦に懸かっているのだ。

 全力を尽くしてくれよ。



 やがて攻撃成功の連絡が入り、攻撃隊が帰還してきた。

 傷ついた機体は他の艦隊に避難させ、まだ戦える機体を優先的に着艦させている。

 同時に直掩機が次々と空に上がり、迎撃態勢を整えていた。

 さて、我らもここが正念場だな。



「電探に感あり! 敵攻撃隊と思われます」

「うむ、全艦、迎撃準備。艦長も頼むぞ」

「はっ、全力を尽くします」


 とうとう来おったか。

 盛大に歓迎してやるぞ。


 なにしろこの大和には、高性能な電探と、そのデータに基づく射撃装置があるのだ。

 それによって12.7センチ高角砲が、敵の予測位置を指向し、砲弾を発射する。

 しかも砲弾には近接信管が組み込まれているので、敵機を感知した時点で爆発する。


 その命中率は破格のもので、マリアナ沖でも猛威を振るったという。

 たとえ撃ち漏らしたとしても、多数の25ミリ機銃がそれを補うという寸法だ。

 覚悟しろよ、アメリカ兵ども。


「敵機、迫ります!」

「各個に全力射撃。空母を守るのだ!」


 とうとう敵機が、味方の迎撃をすり抜けて、迫ってきた。

 射程内に入った高角砲が、次々に火を噴いている。

 12.7センチとはいえ、なんとも凄まじい光景だな。


 しかもその攻撃は、しっかりと敵機を捉えている。

 どうやら近接信管は、有効に機能しておるようだな。

 なんとも凄い技術ではないか。



 その後も我が艦は、獅子奮迅の働きをした。

 しかし敵の数は想像以上に多く、しかも五月雨式に飛来するため、取りこぼしが出るようになった。

 そして恐るべきは、ヤンキーどもの敢闘精神よ。


 日本人にはとうてい及ばぬものと思っていたが、決して引けを取らぬ。

 連中もハワイ基地の命運が懸かっているので、必死なのであろうな。

 おかげで我らは、空母を守りきることが叶わなかった。


 1隻、また1隻と、敵の攻撃を受けた空母が、煙を上げていく。

 くっ、すまん。

 我らがふがいないばかりに。


 しかし悲嘆に暮れている暇はなかった。

 なんとハワイに引きこもっていたアメリカ戦艦部隊が、討って出たというではないか。

 そして我ら戦艦と水雷部隊がそれを迎え撃つと、三川長官から命令が下ったのだ。


 我らは生き残った鳳翔に護衛を付けて避難させると、勇んで南下した。

 その間に第2艦隊と第3艦隊からも艦艇が合流し、大規模な打撃部隊に膨れ上がっていく。


 そして翌日になると、とうとう敵艦隊を電探に捉えたのだ。

 しかもそれに先だって、航空機による攻撃も加えられており、敵は混乱しているようだ。


「敵、間もなく射程に入ります」

「距離3万に入り次第、主砲を発射する」

「はっ、了解であります」


 やがて敵が有効射程に入ると、我が艦隊の主砲が吼えはじめる。

 まずは先頭に立っている我が艦と、武蔵の41センチ砲が、火を噴いた。

 さらに後続の金剛型、長門型戦艦も、主砲を発射する。


 戦艦の主砲は50口径41センチ砲で統一されており、さらに電探で射撃を補助している。

 目標との距離を測るだけでなく、目標と水柱のズレを把握することで、迅速に照準補正ができるのだ。

 うむ、そろそろ命中弾が出はじめたな。


 もちろん、敵艦隊からも砲弾が飛んでくるが、一向に当たる気配がない。

 砲弾は14インチ、16インチ、18インチとバラバラだし、航空攻撃で被害を受けたのか、照準も甘い。

 この勝負、勝ったな。


 三川長官も、ご満悦のようだ。


「よしよし、どんどん撃てよう」

「もちろんです。この日のために、腕を磨いてきたのですからな」

「うむ、そうだな……しかしこのような海戦は、もうほとんど起こらんのだろうな」

「ええ、そうですね。すでに戦艦同士が、全力で殴り合う時代ではないようです」

「少し寂しくはあるが、これも時代か。しかし最後まで、気を抜くでないぞ」

「もちろんです。改めて艦内に、発破をかけましょう」

「うむ、頼むぞ」


 そんなことを話すうちも次々と響く主砲音は、まるで戦艦を送る鎮魂歌レクイエムのようだった。

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三国志モノの新作を始めました。

逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~

孫権の兄 孫策が逆行転生して、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[一言] 現代で戦艦を持つのは割に合わないけど戦艦の防御力はなんとか残せないものか。
[一言]  この問題でも是本氏は堤氏に叩かれてるけど、主人公たちがどんなFCSを作ってるかは分からないからなぁ。  当時の対水上砲術には奇妙な前提があって、双方が自艦の射撃精度の為に直進を続ける事に…
[一言] 14インチ、16インチ、18インチ、別に撃ってる船が違うんだからそこは命中とかに関係ないと思うけどなぁ、砲弾費用に拘ってるのかね。
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