31.海軍を強化しよう
昭和11年(1936年)4月 海軍艦政本部
アメリカによる軍縮条約の破棄を受け、日本も海軍力の増強に動いていた。
まず空母については、1920年代に鳳翔、蒼龍、飛龍を建造していた。
蒼龍は80機を運用可能だし、鳳翔も改装により50機搭載と、なかなかの戦力を持つ。
そして33年にはエセックス級に相当する空母 翔鶴も誕生していた。
【翔鶴】
全長x全幅:265.2x28.4m
基準排水量:2.7万トン
出力 :15万馬力
最大速力 :33ノット
機関 :ロ号艦本式ボイラーx8基
艦本式ギヤードタービンx4基、4軸
搭載機数 :95機
主要兵装 :38口径12.7センチ連装高角砲x4基
38口径12.7センチ両用砲x8基
25ミリ3連装機銃x20基
25ミリ単装機銃x20基
それは艦内構造に直線部分を多用し、構造部材を規格化することなどで、量産性を高めた艦だ。
もちろん格納庫は開放式で、機関をシフト配置にするなど、生存性にも多大な配慮をはらっていた。
ちなみに空母を実用化していた日米英のうち、史実で開放式格納庫を採用したのはアメリカしかなかった。
これは最初に空母を生み出したイギリスに、日本も習っていたからだろう。
初期の飛行機は布張りや木造の貧弱なものだったから、密閉式になるのも当然だ。
実際にアメリカのレキシントンやサラトガも、密閉式を採用していた。
しかしレンジャー(34年就役)以降、アメリカは開放式に切り替えたのだ。
開放式というのは強度甲板の上に、屋根のように飛行甲板を設けた構造で、外壁の一部は開閉可能なシャッターになっている。
これなら気化ガソリンが籠もったりしないし、火災になってもじゃんじゃん水を使えて、可燃物も外に捨てやすい。
さらに甲板に爆弾を落とされても、爆発圧力は外に逃げるので、船体へのダメージが少なくて済む。
欠点は機体が風雨にさらされるため、損傷したり劣化が早まる点であろう。
しかしこの頃の航空機は金属製になりつつあるし、ある程度は運用でカバーできる。
それにいざ戦争となれば、航空機はほとんど消耗品みたいな存在になるのだ。
機体を惜しむあまり、艦を失うのは愚の骨頂だと言って、日本でも開放式の採用にこぎつけた。
また、空母最大の弱点とも言えるガソリンタンクは、船首側、船尾側の中央部に1ヶ所ずつ設けてある。
そしてその周りを4重の隔壁と海水で囲い、戦闘時には二酸化炭素を充填するという、念の入れようだ。
さらに減ったガソリンは海水に置き換えて、気化ガソリンが極力発生しないようにも配慮している。
これはアメリカ式を参考にした手法で、その徹底ぶりには感心するほかない。
ガソリンってのは、それほどに危険な燃料なのだが、史実の日本では諦められていた感がある。
もっと突き詰めていれば、救えた艦もあったと思うと残念でならない。
そして航空機の搭載は露天繋止で95機を実現し、舷側エレベーターも採用している。
もちろん油圧式のカタパルトも採用しており、その発進能力には高いものがある。
武装は12.7センチ両用砲と25ミリ機銃で、対空戦闘能力もそれなりだ。
さらにレーダーに連動した射撃装置と、近接信管も開発中である。
レーダーについてはイギリスに共同研究を申し込み、八木・宇田アンテナとマグネトロンを用いたシステムを開発中だ。
さすが、イギリスの技術力は優れたもので、史実よりも開発が早まっている。
ちなみにこの辺の技術がアメリカに渡らないよう、釘を差してあるのは言うまでもない。
そして空母機動部隊の守護神として、金剛型と長門型戦艦の強化にも取り組んでいる。
改装後の諸元は、こんな感じになる予定だ。
【金剛 改装後】
全長x全幅:219.4 x 31m
基準排水量:32000トン
出力 :14万馬力
最大速力 :30ノット
機関 :川崎重工製 重油専焼缶x8基
三菱重工製 ギヤードタービンx4基、4軸
主要兵装 :50口径41センチ連装砲x4基
38口径12.7センチ連装両用砲x8基
25ミリ連装機銃x30基
25ミリ単装機銃x40基
まず金剛型は、ほとんど新造に近いほどの大改造だ。
全長を5メートル伸ばして、バルジも増設することで、排水量が5千トン以上も増えた。
しかし機関も強化してあるので、30ノットを発揮可能だ。
ちなみに機関は民生化を進めており、川崎と三菱の製品を搭載する。
そして今世では主砲を14インチから41センチ砲に換装し、砲弾を他艦と共通化している。
また12.7センチ両用砲と25ミリ機銃で、対空性能も大幅増だ。
【長門 改装後】
全長・全幅:224.9 x 34.6m
基準排水量:39000トン
出力 :16万馬力
最大速力 :30ノット
機関 :川崎重工製 重油専焼缶x8基
三菱重工製 ギヤードタービンx4基、4軸
主要兵装 :50口径41センチ3連装砲x3基
38口径12.7センチ連装両用砲x10基
25ミリ連装機銃x30基
25ミリ単装機銃x40基
長門も同様にバルジを設け、機関の増強で30ノットを叩き出す。
武装は主砲を50口径とし(金剛も同じ)、25ミリ機銃を追加している。
レーダー連動の射撃システムが揃えば、まさに世界最強クラスの戦艦になるだろう。
そんな艦艇の建造状況について、平賀大将(兵制改革で昇進できるようになった)と俺、後島が話していた。
「フハハ、とうとう金剛たちも41センチ艦になるか」
「ええ、これで砲弾も共通化できるし、対空性能も格段に上がりますね」
「だよな。でもそれだったら、大和は46センチにしてもいいんじゃねえ?」
「お前はまだ、そんなことを言ってるのかよ」
「いや、だってさ……」
またぞろ、大和の46センチ主砲化を言いだした後島に、俺は呆れの目を向ける。
実は今までにもさんざん、この議論を繰り返してきたからだ。
基本的に航空戦力の優位性が高まるこの時代に、そんな巨砲戦艦を造っても、あまり意味がない。
なぜならどんなに強力な戦艦を造っても、航空攻撃で沈められる世の中になりつつあるからだ。
しかも航空機の航続距離は、主砲の射程距離の何十倍もある。
つまりよほど特殊な状況でない限り、戦艦同士の殴り合いは起こるはずもなく、わざわざ46センチ砲艦を作る意味は薄い。
それぐらいなら主砲を全て41センチに統一して、砲弾を共用した方が、補給上も有利になる。
そのうえで全ての戦艦に30ノットの速力を持たせ、空母機動艦隊に随伴させる。
そしてヤマアラシのような対空装備によって、空母を守るのだ。
そんな議論の結果、大和型戦艦の仕様はこんな感じに決定した。
【大和】
全長・全幅:245 x 34.6m
基準排水量:45000トン
出力 :18万馬力
最大速力 :30ノット
機関 :川崎重工製 重油専焼缶x8基
三菱重工製 ギヤードタービンx4基、4軸
主要兵装 :50口径41センチ3連装砲x3基
38口径12.7センチ連装両用砲x12基
25ミリ連装機銃x40基
25ミリ単装機銃x40基
そのモデルは、やはりアメリカのアイオワ級である。
あれほど全長は長くないし、速力も30ノットに抑えているが、その戦闘力は決してひけを取らないだろう。
しかし空母と戦艦だけでは戦えない。
帝国海軍は、強力な補助艦艇の開発も進めていた。
前作よりも、機銃の数を増やしてます。
大戦後期の軍艦って、まるでヤマアラシのようです。
ただし最初から全載せだと不自然なので、段階的に増やしていくという想定。