表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来から吹いた風2 《軍人転生編》  作者: 青雲あゆむ
第3章 昭和編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/68

28.帝国軍の状況

昭和6年(1931年)5月 日本


 アメリカでは刻々と不況が悪化する中、日本経済はすでに上昇基調に戻っていた。

 ここでちょっと、現在の帝国軍の状況を見てみよう。


 まず陸軍だが、日露戦争後に軍縮を実施し、平時は13個師団体制を維持している。

 さらなる軍縮も検討されたのだが、第1次大戦で列強の一角として認知された以上、さすがにこれ以上減らすのはまずいとなった。

 これでも史実の21個(1915~1925年)よりはだいぶ少ないし、大きく成長した日本経済にとってはさほど負担でもない。


 そんな陸軍の主要仮想敵は、やはりソ連軍である。

 幸いにも清国と正統ロシア大公国が間に入ってるので、直に国境を接することはないが、やはり脅威であるのには違いない。

 それに清国と正統ロシアは国力が低いので、人口が1億を超えるソ連の侵攻を受ければ、ひとたまりもないであろう。


 そこで日本は清国、正統ロシア、そして韓国と同盟を結び、防衛体制を整えている。

 一般に”極東同盟”と呼ばれる関係だ。

 そんな同盟各国の人口規模は、だいたいこんな感じである。


清国      :3000万人

正統ロシア大公国:1000万人

大韓帝国    :1700万人

大日本帝国   :6500万人


 人口規模や経済力、そして工業化度からして、最も頼りにされるのは日本だ。

 今世でも宥和ゆうわ政策を取っているおかげで、その関係も良好だ。

 それでも油断は禁物なのだが、共通の敵を持っているというのは大きい。


 そのため陸軍は、主に清と正統ロシアへの技術供与や物資援助により、大陸側の守りを強化している。

 さらにいざという時、いかに迅速に戦力を大陸へ輸送するかを研究し、その装備やインフラ整備にも熱心だ。


 もちろんそれだけでなく、太平洋側の島嶼防衛にも、心を砕いていた。

 ただしあいにくとワシントン条約で、南洋諸島の要塞化は禁止されている。

 そのためあくまで計画のみだが、統治下にある島を調査・測量し、いざという時に迅速に要塞化できるよう手配していた。

 そのために工兵隊を訓練し、多数の建機を導入することも、怠っていない。


 当然、陸軍全体の機械化も、徐々に進めている。

 今世ではあまり自動車産業にテコ入れできていないが、それでも史実よりは格段に性能や信頼性は高い。

 そんなトラックやバイクなどを、徐々に馬と入れ替えている状況だ。

 おかげで各師団の機械化率は、着実に上昇しており、今後はジープのような高機動車も開発予定である。


 その他に銃砲についても、佐島が新規装備の開発を主導し、更新を進めている。

 おかげで今世の陸軍も、確実に強くなっているのは間違いない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 次に海軍の状況を見てみよう。

 海軍は日露戦争後、大胆な戦艦の建造キャンセルを実施した。

 その対象は1905年以降に造られる予定だった8隻に加え、扶桑、山城、伊勢、日向、天城、赤城、高雄、愛宕という、8隻の超弩級戦艦である。


 それでも日本は、金剛型を4隻、長門型を4隻(長門、陸奥、土佐、加賀)造っているので、列強もその戦力を侮れない。

 ていうか、今世の長門型は41センチ砲を採用したせいで、明らかに米英から警戒されているだろう。


 その後、ワシントン軍縮条約が結ばれて、主力艦と空母の建造に枷が掛けられた。

 およそ15年にもおよぶ、ネイバル・ホリデイ(海軍休日)の始まりである。


 しかしそうなったらなったで、条約に縛られない巡洋艦や駆逐艦の開発・建造に、各国は邁進した。

 当然、日本もいろいろ造った。

 史実における、1930年時点の就役艦艇数を見てみよう。


戦艦  :10隻

空母  :3隻(2隻)

重巡洋艦:8隻(8隻)

軽巡洋艦:22隻(1隻)

駆逐艦 :54隻(43隻)

潜水艦 :23隻(22隻)


合計  :120隻(76隻)


 カッコ内は、ワシントン条約後に建造された艦である。

 重巡や駆逐艦、潜水艦の多くが、条約後に造られているのが分かるだろう。


 それがこの世界ではこうなった。


戦艦  :10隻

空母  :2隻(1隻)

重巡洋艦:4隻(4隻)

軽巡洋艦:20隻(4隻)

駆逐艦 :50隻(40隻)

潜水艦 :15隻(14隻)

護衛艦 :20隻(20隻)


合計  :121隻(83隻)


 合計は似たようなものだが、正規の軍艦は少なめで、護衛艦艇を増やしている。

 これは前世でもやったように、海軍内に海上護衛総司令部を設置した影響である。

 第1次大戦の戦訓から、いざという時に海上輸送路を守る部隊が必要だと説いたのが、実を結んだ形だ。


 その道は決して楽ではなかったが、東郷元帥や伏見宮殿下の後押しで、1920年に実現した。

 それから同司令部は、海上護衛に有効な装備を研究し、その強化に努めてきた。

 今はまだ少ないが、いざという時には一気に増強できるよう、準備を重ねている。


 その他の艦艇もボチボチ建造してきたが、史実より控えめにしている。

 本当に必要になるのはまだまだ先なのだから、試験的な艦を造って、ノウハウ蓄積を優先してるからだ。

 しかも攻撃力や速度など、分かりやすい性能だけでなく、量産性や生存性、居住性の向上にも努めている。

 日本もずいぶんと、変わったものである。


 そんな中、日本が特に力を入れて開発しているのは、やはり空母である。

 まず1922年に就役した鳳翔は、史実よりも排水量を5千トンほど増し、搭載機数を20機も増やした。

 おかげで前世よりも戦力として頼りになりそうなので、今後も改装で性能を高めたいと思っている。


 さらに1928年に就役した空母が、”蒼龍”である。


【蒼龍】

全長x全幅:251.4x33.4m

基準排水量:2万トン

出力   :12万馬力

最大速力 :32.5ノット

機関   :ロ号艦本式ボイラーx8基

      艦本式タービンx4基、4軸

搭載機数 :80機

主要兵装 :38口径12.7センチ高角砲x8基

      25ミリ連装機銃x14基


 こちらの排水量はほぼ史実どおりだが、搭載機数は80機もある。

 これは前世でもやったように、アメリカのヨークタウン級空母を参考にしたおかげだ。


 それはアメリカ空母らしく、生産性に配慮しており、格納庫は開放型だ。

 開放型の格納庫ってのは、航空機には優しくないが、火災にめっぽう強い。

 危険なガソリンを扱う空母にとっては、有効な構造だと思う。

 ただし機体が荒天で壊れたりするので、なんとか運用でカバーできるよう、試行錯誤は必要だが。


 機関についてはシフト配置を採用し、生存性を高めている。

 さらには舷側エレベーターも採用していて、航空機の入れ替えも容易だ。

 そして機体を露天繋止ろてんけいしすることによって、搭載機数を多めに保つ。


 この蒼龍の使い勝手を検証してから、準同型艦の”飛龍”も建造中だ。

 さらには拡大発展型の、エセックス級に相当する空母の建造にも、取り掛かっている。

 これが量産できるようになれば、アメリカにも十分に対抗できるだろう。


 本当はアメリカと戦争なんて、したくないのだ。

 しかし前世の経験から見ても、おそらくそれは避けられないだろう。

 ならば俺たちは、粛々と準備を進めるのみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志モノの新作を始めました。

逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~

孫権の兄 孫策が逆行転生して、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[気になる点] 戦時中に第四艦隊事件並の台風で米軍は多数の艦載機を破壊されている。 米国並みの生産力と兵站能力がなければ、海戦前に戦力喪失レベルの大惨事。 夜間作業の困難さもそこには加わる。灯火管…
[一言] 前の周では、技術者として技術発展、生産増強に邁進したのだけど、 今周では1軍人に過ぎないから、なかなか技術発展も中途半端になりますね。。。 アメリカにどうやって勝つのか、いまいち勝ち筋が見え…
[良い点] この当時の韓国との同盟が致命傷を招きそうでワクワクしますな(日本に併合されてないのに増えた国力と人口の出処は何処から来たのかで大分変わりそう)。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ