プロローグ
続編、始めます。
昭和42年(1967年) 東京
現代でしがないサラリーマンをやっていた俺たち5人は、なぜか明治にタイムスリップしていた。
俺たちはそこで皇族と出会い、やがて太平洋戦争の悲劇を回避しようと動きだしたのだ。
幸いにも周囲の協力と、俺たちの未来知識によって、日本を強靭な国にすることができた。
そしてやはりアメリカと戦争になったものの、日本を勝利に導くことができたのだ。
そんな俺も、とうとう80歳になり、どうやらお迎えが来たようだ。
「うう、後のことは、頼むぞ」
「はい、あなた。ご苦労さまでした」
「こちらこそ。今まで、世話に、なった……」
「あなた……」
俺は徐々に意識が遠のくのに、身を任せる。
今まで本当に苦労してきたが、明治にタイムスリップさせられた目的は、果たすことができたのだ。
それなりに満足感を抱きながら、逝くことができる。
一緒にタイムスリップした後島、中島、佐島、川島も、今年に入ってバタバタと鬼籍に入っている。
ひょっとしたら、あの世であいつらに会えるんじゃないかと思いながら、俺の意識は闇に落ちた。
しかしその後、俺は真っ白な世界で目を覚ました。
なぜか体は動かないが、意識ははっきりしている。
そんな、予想外の状況に戸惑っていると、やがて話しかける声があった。
「やあ、君が大島くんだね?」
「ッ! だ、誰ですか?」
「私かい? 私はそうだねえ……君を明治に呼んだ者だよ」
「ええっ、ということは、神様ですか?」
まじめにそう問えば、相手が苦笑する雰囲気が伝わってくる。
「いやいや、全知全能の神なんてものじゃないさ。そうだねえ、分かりやすい呼び方をすれば、”高位存在”、になるかな」
「高位、存在?」
「そうそう。人間に比べれば、はるかにいろいろなことができるけど、万能でもないって感じ」
「なるほど……ていうか、俺を明治に呼んだって言いましたよね?」
「ああ、君たち5人を、明治に送ったのは私さ」
「なんでそんなことを?」
そう問うと、相手はあっけらかんと答える。
「う~ん、はっきり言っちゃうと、日本が勝つところを見たかったからだね」
「見たかったって、それだけですか?」
「うん、それだけ。アメリカが世界中を戦争に巻きこんだくせに、偉そうにしているのが気に食わないってのもある。君たちのおかげで、楽しいものが見れたよ」
「楽しいものが見れたよって、ほとんど娯楽気分じゃないですか?」
「うん、そうだよ。私にとっては娯楽みたいなもんさ」
「そこまで開き直るなんて……」
全く悪びれない相手に、逆に毒気を抜かれる。
少し黙っていると、相手がまた口を開いた。
「それでさ、せっかくだから、またやって欲しいんだ」
「ええっ、もう一度、明治に行けって言うんですか? それじゃあ、同じ結果になるだけだと思うけど」
「うん、それじゃあ面白くないから、今度は軍人になってもらう。それも明治に生きる人間に、転生する形だ」
「うえっ、今度は赤ん坊からやれっていうこと?」
「いや、それは辛いだろうから、18歳で記憶を取り戻す形にするよ」
「18歳で取り戻すって、どうやって?」
「行ってみれば分かるよ。それから向こうでは、協力者も準備しておくから。それじゃあ、今度は軍人でよろしく」
「おい、コラ。ちょっと待てやあぁぁぁ~」
しかし抵抗も虚しく、俺の意識はまた闇に落ちたのだ。
以上、”未来から吹いた風2”の始まりです。
前作の”未来から吹いた風”は、”俺はこんな太平洋戦争モノが読みたいんじゃ”、という想いを書きなぐったような小説です。
幸いにも望外の好評を得ることができましたが、終わった時点では続編を書くつもりはありませんでした。
ところが、いまだにそれなりのPVと評価ポイントをいただいており、”思った以上に同好の士は多いんだな”、との思いを強くしたわけです。
”それだったら続編を書いても、たくさんの人が読んでくれるよね?”、という期待が湧いてきて、本作の執筆に至りました。
基本的に自分のために書く小説ですが、多くの人に楽しんでもらえればとも思っています。
ちなみに前作の歴史改変ネタをそれなりに使い回すので、所々に既視感があるかもしれません。
その辺はなるべく簡潔にして、戦争部分を多めに書きたいなと思っております。
それから感想欄は開けておきますが、前作の経験から、少し距離を置こうと思ってます。
特に必要を感じない限り返信はしませんし、閲覧もほどほどにしようかな、と。
筆者の精神衛生を優先させてもらいますので、あしからず。
でも応援コメントは大歓迎で~す。\(^o^)/