第九話 深めあう仲
今週はぎりぎりの更新でした。危なかった……。
来週も更新できるように頑張りますので評価や感想、よろしくお願いします。
「和紗も来たのか」
「うん……有馬くん大丈夫なの?」
「大丈夫だと思いたいな俺は。有馬は俺が五歳の頃からずっと一緒なんだ。今更俺に何も言わず逝かすことはできない」
「そっか」
和紗は何も言わず彰斗の隣に正座した。穏やかに呼吸をする有馬をじっと見つめているとそっと瞼が開いた。彰斗はそれを見逃すことなく有馬に声をかけた。有馬は寝起きかつ、疲れた頭に響く大声にうんざりしていた。そんな二人の様子は普段と変わることなく続く。和紗は二人の邪魔にならないように立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
「なあ」
「……」
「おい。おい! 和紗!」
「え。私のこと?」
「ったく。彰斗、お前ちゃんと教育してるのか? 父上の教育だけじゃ僕みたいな捻くれが誕生するよ」
「お前自分が捻くれているって自覚していたんだな!」
「バカ! 今そんな空気じゃないだろ! お前は引っ込んでいろよ。彰斗」
「んだと⁉」
「えっと」
口喧嘩から始まり、次第に手が出だした二人に和紗はどうすることもできず、巻き込まれないために隅に避難した。すると障子が開き華子が部屋の中へ入った。
二人の様子に呆れたような表情を浮かべ、二人の首根っこを掴んだ。
「有馬様、彰斗様。何をしているのですか?」
「「すいません」」
「ご理解が早くて助かります。和紗様がお二人のことを怖がっていますよ」
「か、和紗……悪かったな! ほらこっちへ来いよ」
「ったく。これぐらいで怖がるなよ」
和紗は喧嘩をやめた二人へそっと近づく。彰斗は満面の笑みで和紗へ抱き着くが、有馬はまだ不機嫌なまま。和紗は彰斗から離れ、一歩下がった。その行動に彰斗は勿論のこと有馬も首を傾げた。
「どうしたんだ?」
「……有馬くん不機嫌になってる。私がいるから……」
「がははは! 有馬。お前の見栄もここまで来ると笑いに代わるな!」
「煩い! これでも僕は……」
顔を真っ赤にし、和紗から目を逸らした有馬。そんな有馬の行動を和紗は理解できず首を傾げるが彰斗と華子はどうしてか分かっているようだ。にやにやが止まらない。微妙な空気が続く中、有利が部屋に入って来たことにより空気は穏やかなものへと変わった。有利は有馬の額に触れ、霊力が穏やかなものかどうか確認した。何も異常がないことを確認し終えると顔を真っ赤にしている有馬とにやにやしている二人によりこの状況を理解し、楽しみ始めた。
有利までも楽しみ出したこの状況に有馬は耐えられなくなり、逃げるように部屋を出た。
「あらあら」
「有馬くんどうしたの?」
「和紗は気にしなくていいからな! それと有馬はもう和紗のことを嫌っていないさ」
「そうですね。有馬様のあのご様子、満更でもなさそうでした」
「三人の仲が良さそうでよかったよ。そうだ和紗。式術や霊神術のことは有馬に教えてもらうといい。あの子はすでに見習い制度を卒業し立派な陰陽師をやっているからね」
「げ。俺への当てつけかよ。俺もそろそろ卒業します~」
「はは、分かっているさ。あとは私が認めるだけだね」
「さっさと俺のこと認めてくれよ。師匠」
「分かったよ。最終試験内容を考えておこう。それを突破できれば認めてあげるよ」
「っしゃ! 早くしてくれよな!」
彰斗はガッツポーズを決め、有馬を追いかけるために部屋を出て行った。
陰陽師機関には見習い制度があった。正式に陰陽師機関所属の陰陽師になるのはその見習い制度を突破しなければならない。見習い制度四原則はこうだ。
陰陽師機関見習い制度四原則
・妖怪を規定数(五十体)倒すこと
・霊符を書けるようになること
・結界術ができるようになること
・師匠がいる場合、師匠に認められること
この四原則を突破したことが認められると正式に陰陽師となれる。見習い制度中の陰陽師は通称〝見習い陰陽師〟と呼ばれる。
彰斗は現在見習い陰陽師で四原則中、三原則までを突破している。つまりあと一原則、師匠である有利に認められれば正式に陰陽師となれるのだ。それにより有利から認められるために行われる最終試験のことを聞くとうきうきしたのだ。
ちなみに見習い陰陽師を一番早く突破したものの年齢はわずか六つだという。その者の名は土御門蒼蓬。現在の陰陽頭だ。幼少の頃から才能に溢れている人だった。
「和紗ちゃんはゆっくり確実に育って行こうね。有馬はそうではないが、彰斗は教えを急ぎすぎた。和紗ちゃんは女の子で、まだまだ幼い。ゆっくりでいいからね?」
「うん分かった。確実に見習い陰陽師を卒業できるように頑張るね」
「うんうん。その意気だよ」
和紗は有馬に教えを乞うために、急いで探し始めた。和紗の陰陽師としての物語はここから始まる。
「有馬くん!」
「わ、なんで⁉」
「私に色々教えて! 有馬くんや彰斗兄さんみたいに強くなりたいの!」
「お、お……」
「彰斗兄さん⁉ お兄ちゃんもよかったがうん、それも……」
「僕の言葉を遮るな!」
彰斗兄さんと呼ばれたことに感動した彰斗に言葉を遮られ怒る有馬。有馬は彰斗に怒る以前は和紗に頼られることを喜んでいた。全て彰斗に壊されたのだと彰斗に責任を擦り付けた。そんな二人の様子に和紗は笑いながら楽しんだ。