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和紗は見習い陰陽師  作者: 田中ソラ
第一章 陰陽師になる決意
3/12

第三話 解除師あずりとあよりによる封印解除

来週の週末も更新できるかも……?

評価や感想、お願いします!

――数日後。


 和紗は有利に連れられ有利の屋敷のような日本家屋ではなく最先端を行く、洋風の建物を訪れた。手を引かれ、建物の中へ入っていくと中にいた人物たちの注目を浴びた。和紗は体を縮こませ、共に来ていた雪代の影に体を隠すが有利や雪代は気にしていないように奥へと進んでいった。中を歩く道中、雪代よりこの建物のことが説明された。


 この建物は〝陰陽師機関〟で妖怪と戦う陰陽師が拠点としている場所。すれ違う袴を着た人や、ゴスロリのような恰好をしている少女たちは陰陽師だということ。和紗にはただ普通に生活する〝一般人〟にしか見えなかった。廊下を歩いていると、とある一室の前で止まった。有利は部屋をノックし、中から入室許可が出たのを確認し慎重に扉を開けた。和紗は有利の畏まった態度に和紗はこの部屋の中に偉い人がいることをすぐに察した。緊張し、いつまで経っても部屋の中に入らない和紗に雪代はそっと背中を押し、半ば強制的に中へ入れた。


 中には白髪の男性がソファに座り足を組んでいる。和紗のことを視界に入れると少し顎を釣り上げた。


「おやおや。この少女が例の報告の?」

「はい。これから解除師により見妖の才と霊力の封印を解除してもらう予定です。説明はそこからしようかと」

「君の事後報告癖はいつまで経っても治らないね~有利くん。ボク達はよくても本人への事後報告はよくないよ」

「はいはい。肝に銘じておきます」

「その言葉を聞くのはすでに五回目だよ。まあ、その癖はある種君の個性でもあるからいいのだけれどね」


 和紗は二人の会話に着いて行けず、立ち尽くしていると男性がソファから立ち上がり、和紗の前に膝をついた。


「初めまして和紗くん。ボクはここ、陰陽師機関のトップをしている土御門蒼蓬つちみかどそうほうだよ。有利くんとは……友人かね?」

「上司です」

「あはは、彼にとって今のボクはそうらしい。和紗くんのことは有利くんからの報告で聞いているよ。いきなりこんな場所に連れて来られて不安だろう。世話係がいるとはいえ大変だったね」

「別に……」

「あ~あ。こんなに小さな女の子に気を遣わせて。有利くん、まさかこの子も誘拐まがいに連れてきたってわけじゃないだろうね?」

「二度はしない」

「それは安心したよ。和紗くん」

「な、なに」

「君が誰から何を言われようと、ボクは君の味方だよ。和紗くんは何も悪くないからね」

「うん……?」


 蒼蓬が何を言っているのか和紗は理解できず首を傾げたが蒼蓬が腰を上げ、ソファに座り話の続きを始めたので和紗は聞くタイミングを失った。仕方なく有利の隣に座り、蒼蓬の話を聞こうとしたが話はすぐに終わってしまった。


「さて! では三人をここから解放しよう。解除師のところへ行っていいよ」

「……蒼蓬。昔のよしみで聞く。和紗ちゃんのことどう思う?」

「さあ、どうだろうね。だけど陰陽師機関にとって彼女の存在に〝損〟はないよ」

「そうか。そうであればいい」

「だけど時には〝脅威〟になるかもね。でもそれは全て和紗くん次第」


 最後に何かを有利に呟き、三人は半強制的に蒼蓬の部屋から追い出された。有利が何を言われたのか分からないが雪代がくすくすと笑っているので嫌なことではないのだろう。和紗はそう思ったが何を言われたかまでは和紗は分からなかった。


 蒼蓬の部屋を出て三人が次に向かったのは地下。中央にある螺旋に連なった階段で下りていると一つの扉の前に立つ。その扉を開けるとそこには中央にぽつんと椅子が一つあるだけで他には何もない部屋だった。和紗は有利に椅子に座るように言われたので椅子に座り辺りを見渡すと部屋には先ほどまでいたはずの雪代がいなかった。


「あれ……? 雪代ちゃんは?」

「雪代には外で待ってもらっているよ。少し待っていてね」

「うん」


 有利が先ほどまで待っていなかったはずの人の形をした小さな紙を持っているのが気になったが聞かないことにした。


 椅子に座り待っていると一人の女性が部屋の中へ入ってきた。背丈ほどある大きな杖を持っており、顔には狐の仮面をしている。真っ直ぐに和紗の方へ歩き、顔を近づけた。


「貴方が倉橋和紗?」

「う、うん」

「年齢は?」

「七歳」

「賀茂有利様に出会ったきっかけは?」

「え、えっと……」


 質問攻めにしてくる女性に和紗が戸惑っているともう一人、狐面をした次は男性が入ってきた。男性も女性と同じように背丈ほどの杖を持っている。和紗に迫る女性のことを見ると呆れたように項垂れた。


「あより。その質問攻めの癖やめろよ。和紗ちゃんが困っているぞ」

「あら。気づかなくてごめんなさいね」


 あより、と呼ばれた女性は悪びれる様子もなく平謝りした。面で顔を隠されているからどんな表情をしているのか分からないため声色で判断をしなければならない。和紗はこの日、初めて表情に有難さを覚えた。


「初めまして和紗ちゃん。俺は相宮あいみやあずり。こっちはあより。俺達は双子なんだ」

「双子……初めてみた。それにその杖は何?」

「これは錫杖しゃくじょう。封印やら諸々を解除するのに必要なトリガーってわけ。って分かるか?」

「分からない」

「だろうな。このあたりも有利様に教えてもらえよ」

「あずり。早く始めましょう。この複雑さじゃどれだけ時間がかかるか分からないわ」

「よし。なら始めるか。辛かったら叫び声をあげてもいい。だけど絶対に〝生きることを諦めるな〟。これが解除師の俺達との約束だ。いいな? 和紗ちゃん」

「……分かった」

「では始める」


〝相宮あずりとあよりの名のもとに倉橋和紗の封印を解除致すことをここに誓う〟



 あずりとあよりが言葉を唱え、錫杖をしゃんしゃんと鳴らし始めた時。和紗の体の力が抜け始めた。何かと混乱していると二人は更に錫杖を鳴らし、部屋の温度を下げてゆく。何が始まるのか分からない恐怖に和紗は体を震わせる。すると何かに体を包まれるような感覚がしたので目を開けた。そこには透明の何かが浮かんでいる。それが何かは分からない。だけど暖かい。


「ねえあずり。これって」

「有利様の言った通りだ。この封印は相当高度な封印術ふういんじゅつが使われている。並大抵の術じゃ解除できねえ!」

「本気、出さなきゃいけないね。これを解除できたら名前に箔がつくよ」

「たしかになッ!」


 体の力が抜けるどころではなくなった。心臓付近を中心に体に痛みが走る。先ほどあずりが言っていたのはこれだったのかと幼いながらに理解していた。そして生きるのを諦めるな、というのはこの痛みに耐えられず自分から死を望むということ。


 和紗は歯を食いしばり、己の体を己の腕で抱きしめ痛みに耐えた。涙が零れ、椅子に座っていられず暖かさのない冷たい床に這いつくばるように倒れ込む。


「いやぁあぁあああああ!」


 次第に歯を食いしばることが難しくなり、叫び声をあげた。そんな和紗の様子にあずりとあよりは見慣れているはずなのに見慣れない光景を見ているような気がして嫌になった。この封印の解除を十とするのならば現在は二。まだ半分にも満たない。これからもっと痛みが強くなる。それに和紗が耐えられるのか、耐えられないのか。数も踏んでいるはずなのに二人にはこの封印が解けるのか、解けないのかさえも分からなくなった。



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