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「弘也もそれを理解していて、だから、私にいくつかの頼みごとをしてきたのよ。一つは、もし本当にそういうこと(・・・・・・)になったら、加恵ちゃんに渡してほしいって、手紙を託されたの。手紙と言っても、あまり時間がなかったから、弘也が私にメールしてきたものをプリントアウトしたものなんだけどね。いちいち私を経由しなくてもスマホかパソコンに保存してたらいいんじゃない?って思ったけど、弘也は、自分がどういう状況で加恵ちゃんと別れることになるのか分からないから、もし事故に巻き込まれたりした時は携帯がめちゃくちゃに壊れてしまうかもしれないし、確実に加恵ちゃんに届くようにしておきたい…って」


お姉さんの話を、震える手を抑え込みながら聞いていた。

あの日、仕事でメールを送ったと言っていた弘也さん。

実際は、お姉さんに託す、わたしへの手紙を記していたわけだ。

手の震えが、よりいっそう大きくなってくる。



「それからもう一つは、くれぐれも、加恵ちゃんを頼むって………。加恵ちゃんだけでなく、加恵ちゃんのお腹にいる自分達の子供のことも、守ってやってほしい、きつくそう頼まれたの」



「――――っ?!」



わたしは、もう何度目になるかもわからない驚愕と絶句を、お姉さんに無遠慮に不躾に放ってしまった。



そうなのだ。わたしの飲まず食わず眠れずを心配した父に病院に連れていかれたあのとき、わたしは、医師から妊娠していることを教えられたのだ。


婚約者を目の前で……という、あまりにもショックなことがあったばかりで、自分の体調の変化にも気がまわっていなかったのだろうから、気付かなかったとしても無理はない。

ただ、これからは食べられないなら食べられないで、病院を受診するようにと言われ、点滴を打たれている間、わたしはするすると感情が戻ってくるのを感じていたのだ。


一番最初に戻ってきた感情は、”嬉しい” だった。


まだ正式に結婚する前のことなので、わたしはシングルマザーとなるわけだが、そんなのは迷うこともなかった。

わたしと弘也さんの赤ちゃん。

大好きな、大好きな弘也さんの子供。

まだ何一つ実感はなかったのに、そっと触れた自分のお腹は……

たまらなく愛おしくて、今までに感じたことがないほど尊くて、絶対に守りきりたい、今度こそ、大切な人を守らなきゃ、もう、これ以上失いたくない。

強く強く強くそう思った。



ただ、弘也さんのご家族には報告すべきで、でも、弘也さんを失ったばかりのご家族に何と切り出せばいいのかも掴めず、お父様とお会いしてもなかなか言えずにいたのだ。


それなのに、どうしてお姉さんは知っているのだろう………




「どして知ってるのかって顔ね」


お姉さんは、寂しそうだった面持ちを柔らかに崩して、唇には笑みを乗せていた。


「でもわたし、まだ父と会社の上司にしか話してないんですよ………」


狼狽えを誤魔化さずに告げると、お姉さんはすんなりと種明かしをしてくれたのだった。



「私が加恵ちゃんのお腹に赤ちゃんがいるとわかったのはね、それは、加恵ちゃんに()が見えたからよ」









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