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一緒に過ごす日曜日(1)





お姉さんの付き添いから弘也さんが帰ってきたのは、日曜の早朝になってからだった。

弘也さんは玄関に入るなり、出迎えたわたしをきつくきつく抱きしめた。

それはまるで、昨日の朝わたしが見送ったときにしたのと似たようなシチュエーションで、わたしは弘也さんの背中に手をまわして、彼を力いっぱいに抱きしめ返した。


昨夜はあまり眠れてないと言うので、「今日はゆっくり休んでて」と労わったけれど、弘也さんはわたしの勤務先のカフェに行ってもいいかと訊いてきた。

なんでも、今日中に仕上げたい仕事があるのに、家に一人でいたら眠ってしまいそうだからと、切実さが滲む頼みに、わたしは了承するしかなかった。


別に弘也さんがうちのカフェに来たとしても、何ら不都合はない。

自分の家族や恋人を店に招待するスタッフも多いし、待ち合わせに利用する人もいるくらいだから。

ただ、弘也さんに関しては、スタッフのほとんどが知ってる人だし、わたしもちょっと気恥ずかしいので、今まではあまりそういったことはしてこなかったのだ。


けれど今の弘也さんの状態を見ると、部屋で一人残すより、わたしの目の届くところにいてもらった方がわたしも安心できるように思えた。

()に変化があれば、すぐに対処できるからだ。

どうやら弘也さんの心配性な性格がいつの間にかわたしにも伝染していたようで、それが嬉しかったりして。


だがそんなことを思っていると、突然、胃の中のものが逆流してきそうな不快感に襲われた。


「―――っ」


「加恵?」


急いでトイレに駆け込んだわたしを、弘也さんは心配そうに呼びながら後を追ってきて、背中をさすってくれる。

風邪でもひいたのだろうか……とにかく気分が悪い。


「待ってて、今水持ってくる」


そう言い残しキッチンに飛んで行った弘也さんを横目で見ながら、お姉さんの看病で疲れてる弘也さんにわたしまで心配かけちゃうなんて……と、不甲斐ない思いでいっぱいになっていた。


「気分は?」


吐き気がおさまってグラスの水を受け取ると、弘也さんが屈んでわたしの顔を覗き込んでくる。

その虹色(・・)が、見たことないほどに大きく歪んでいた。

それほど心配してくれてるのだと気付き、わたしはかすかに笑顔をつくってみせた。


「……大丈夫。ちょっと風邪っぽいみたい」


「やっぱり…」


「やっぱり?」


「あ、いや………さっき抱きしめたとき、ちょっと体が熱いように感じたから。今日はお休みさせてもらったら?」


確かに、店にいるときに今みたいに具合が悪くなっては店にもお客さまにも迷惑をかけてしまうだろう。



「でも、急にシフト交代できるかな……」


「俺が代わりに連絡しようか?」


「ううん、それは大丈夫だけど……」


迷ったものの、もし風邪だった場合、他の人にうつしてしまうのは絶対避けたい。

そう思ったわたしは、急なことに申し訳ない気持ちになりながらも店長に連絡してみたところ、すんなり休みをもらうことができた。

店長の話では、どうやら、昨日のわたしの様子が少し元気なく見えていたらしい。

それはきっと、弘也さんと連絡がつかないことへの心配からきたものだと思うけれど、そうと知らないスタッフの間では、”雪村さんが具合悪そうだ” と囁かれていたようだ。

知らないところでみんなに心配をかけていたことに恐縮してしまうが、実際に今日は体調を崩してしまったので、彼らの親切に素直に甘えることにしたのだった。



こうして、思いがけず、日曜日を二人で過ごすことになったのである。








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