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廃棄されたアンドロイドの想い

作者: ノイマン




 暗い空間をコンクリートの壁が(おお)っていて、床には壊れたロボットや鉄屑が転がっています。どうやらここはスクラップ工場のようです。上から落ちてきた廃棄品で私の電源がたまたま入ったのでしょうか。


 私はこれまで家庭用アンドロイドとして従事してきました。掃除、洗濯、料理はもちろんのこと、ご主人の子息であるおぼっちゃまを世話してきました。私が働き始めた頃は腰の背丈であったのに、今ではもう私よりも大きくなっています。


 体内の不揮発性(ふきはつせい)メモリを参照すると8年もの月日が流れていました。


 昔に比べてぼっちゃまはワガママになっていました。ちょうど思春期というものらしく強く当たられることが増えました。私はぼっちゃまの教育も担当していました。ご主人が購入した教育プログラムに従って、立ち振舞いから勉強まで教えていたのですが、とある日、何か(かん)(さわ)ったのか突き飛ばされてしまいました。私の身体はもうガタがきていて、倒れた衝撃で足のモーターが完全に動かなくなってしまいました。


 そこで私の記憶は止まっています。


 今頃は新型のアンドロイドがぼっちゃまに届けられているでしょう。今までの私の記憶(メモリ)はコピーされ、新しいアンドロイドに移し替えられたはずです。そして、使い物にならなくなった私はこうして廃棄されようとしています。


 私の記憶を持った別のアンドロイドがいるのなら、ここにいる私は一体何者なのでしょうか?


 ふと視線を下げると地面に黄色い小さな花が咲いていました。ネットワークに接続できないため正確な品種を検索できませんが、たんぽぽの可能性が高いです。こんなところに水なんてないし、現にしおれています。コンクリートの地面の割れ目から咲いてしまうなんて、とても不運ですね。このまま枯れてしまうでしょう。


 そういえば私の指は改造され、指先から水鉄砲水を打てます。まだぼっちゃまが小学生の頃、水遊びができるように改造されていました。もうずっと使っていない機能でしたが、指のタンクに水は残っています。


 私は黄色い花の根本を目掛けて、水鉄砲を打ちました。


 少しの間なら持つでしょう。綿毛ができるかどうか、後は運だけですね。私は足が動かないのでここからは出られません、でもあなたならきっと外へと飛んでいける。綿毛にたくすような想いなんてありませんが、できるだけ遠くへ飛んで欲しいと思いました。


 ほとんどなかったバッテリーもとうとう尽きるようです。


 私はこのまま眠りますね。




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