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いつか灰になるまで  作者: 和紗
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幾島家4

「へっ!い、今ここで、ですか?!」


幾島はひどく驚いている。

それはそうだ。

常人ならば、客が来ているのに寝るなどという行為を躊躇なくできるはずがない。

しかし、今思い付く限りでは、それしか方法がないのだ。


「悪夢を見るときと、同じ条件であれば現れる可能性があるんです。できませんか?」


「あぁ、なるほど。そうなんですか…」


やはり、気乗りはしないようだ。


「ふぅ」


幾島は目を伏せ、小さく息を吐くと、覚悟したようでこちらに向き直った。


「わかりました。少し待ってください」


そういうと、押し入れの襖を開け布団を出す。


「できれば、いつも寝ている場所でお願いします」


こくり。と、うなずくと押し入れから一番離れた、南の窓際に布団を敷いた。


敷き終わると、布団に入り目を瞑った。

しかし、まだ明るく、人がいる前で寝るのには抵抗があったようで、顔が強張っている。


「幾島さんリラックスしてください。今、原因を調べますから」


幾島の傍に腰を下ろし、布団の上から胸の当たりに手を優しく置くと、なんとか気を落ち着かせてもらうために声をかける。


「はい…」


返事はしたものの、まだ緊張しているようだった。


しかし、日頃よく寝れていないのと霊能者が近くにいて安心したのだろうか。

次第に、顔がリラックスしていき意識が遠のいていくのが見て取れた。


どうやら、眠りに就けそうだ。

その様子を確認しすると夜尋も調査に取り掛かるため立ち上がった。


目を瞑り、霊の気配を探す。


すうすうと幾島の小さな寝息だけがしばらく聞こえていた。

まだ、霊の気配は感じない。


しかし、3分程経ったころだろうか。

じわじわと何かが近づいている気配がしてきた。


(…来たみたいだな)


少しずつ近づいてくる霊の気配に意識を集中する。

ある一定の距離に近づいてきた時、夜尋はハッとした。


この感じは昔、感じたことのある気配だ。


そう、とても近くにいたあの人の―――。


(千尋兄さん!!)


そうだ。この気配は間違いなくあの兄のものだ。


やっと見つけた。


やっと会えた。


やはり兄だったのだ。

幾島についていた霊は。

兄の気配を感じ取り、歓びを感じると同時に、この家に来た時から感じていた懐かしさの正体を思い知らされる。


(そうだ、この感じは千尋兄さんと同じものだ……)


自身が殺された現場でさえ怨念を残さなかった兄が、悪夢を見せる程恨みをかうとは幾島は一体何をしたのだろうか。


知りたい。


一体この男が兄に何をしたのか。


兄の気配を追うため、さらに意識を集中させる。

すると、ぼんやりと人のような輪郭が浮かびはじめる。


(どうしてこんなところにいるの?一体あの人は何をしたんだっ!)


まるで懇願するように兄の気配に問いかける。

少しずつ、兄の輪郭ははっきりしてくるものの、何度問いかけても兄は一向に返事を返してくれない。


(兄さん!)


縋るように、思わず手を伸ばし兄の輪郭を捕まえようとした。

兄の手を掴んだ瞬間、その手をつかんだ感覚があった。

しかし、手に伝わる感覚はまるで生身の人間のもののようで、実体を伴ったそれに驚き、思わず目を開ける。


掴んだ先は幾島の手だった。

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