表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか灰になるまで  作者: 和紗
2/25

幾島家1

幾島家(イツシマケ)へ訪問することになったのは、それから3日後の金曜日であった。


予定を聞いてみたのだが、いつでも空いていると言われこちらの都合に合わせた形となった。


最初に相談に来た時にも気になっていたが、どうやら憑かれたせいで会社を辞めなくてはいけなくなってしまったようだった。それを知ったときには思わずニヤけ顔が我慢できず、事務所所属の霊能者である梧桐(ゴトウ)に不審な目で見られてしまった。


幾島から教えてもらった住所は、古和町(フルワチョウ)という隣町だった。

兄の事件があった布施山(フセヤマ)までは車を使って1時間近くかかる。


(わざわざこんな遠くから肝試しかよ)


さらに幾島に対して嫌悪感を抱いていく。

これでは、訪問するときに顔に出さぬよう、注意しなくてはいけない。



今回の訪問ではどのような霊が憑いているのかの具体的な調査を行う。


と言うのも、先日相談された際には幾島自身からは霊が憑いているようにはあまり感じ取れなかったからだ。


霊障に悩まされている場合には、主に2つのパターンがある。

1つは実際に本人に憑いている場合。これは、言葉のまま本人が憑りつかれているパターン。

そしてもう1つは家に憑いている、つまり着いてきた後、家に居座っている場合だ。

実際本人に憑いてきて、家に居座られた結果霊障に悩まされてしまっている場合は多々ある。

幾島からあまり霊の気配を感じ取れなかったということは後者の可能性が高い。というわけで、幾島家を訪れる運びとなったのだ。


そして夜尋(ヤヒロ)には、個人的に幾島家に訪れなければならない2つの目的があった。


1つは、霊が誰なのかを確かめるということ。


幾島の霊を祓うにしても、霊障を悪化させるにしても、夜尋は幾島に憑いている霊がどんな人物なのか知りたかったのだ。あの事件の場所で憑いた、『アツイ』と悲鳴を上げる霊。その存在に心当たりがあったから。


(もしかしたら、憑いているのが本当に千尋(チヒロ)兄さんかもしれない……)


確立は高いが、まだ兄だと確定したわけではない。

だから、どうしてもその霊と会って確かめる必要があった。


今まであの事件以来、時折現場に行っては兄の霊に会えるのではないかと期待していた。

いるかもしれないと、兄の通っていた学校やよく訪れていた場所へ行き、隈無く探した。


しかし、どこを探しても兄の気配を感じられる場所は見つからなかった。


だからてっきり兄はもう成仏していて、この世にはいないのではないかと最近では思うようになっていたのだ。

それならそれでいいと夜尋は思っていた。

あの世で幸せにしているのなら、それで構わないと。


しかし、そこへ幾島が現れた。

やっとあの事件に対して前向きに向き合えるようになってきたというのに。


だから、幾島に憑いている霊が兄かどうか確かめるのだ。

そして、本当に兄であったなら、聞きたいことがある。


今までどこにいたのか。


そして、どうして幾島に憑いているのか。


理由によっては、幾島をどうにかしてしまわないといけないから。



そしてもう1つの目的は、幾島の家族へ被害を出さないように霊へ説得することだ。

幾島に対し、いくら憎らしい感情があるとは言え、その家族が巻き込まれるのはどうしても気がかりだった。


幾島以外の家族にはまだ被害が出てはいないと聞いているが、家に居座っているのならいつ家族に被害が出てもおかしくない。流石に馬鹿一人のせいでその親まで被害にあってしまうのは心が痛む。


(他人の親を心配するなんてな)


もし自分の親が霊に憑りつかれたと言われても夜尋は何も思わなかっただろう。それ程、夜尋と両親との仲は冷え切っている。しかしなぜか、幾島の家族に対してはどうしてもそうあってほしくないと思っていた。


だから、説得するのだ。

幾島だけを呪えと。


苦しむなら、一人で苦しめばいい。

そうして、後悔すればいい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ