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第6話 魔装

 闘魔館はさっき目にしたコロシアムみたいな建物の事だった。

 ここへの道中、ミランから闘魔館についての説明を受けた。闘魔館は魔力を競い合う為の実戦場。いうなれば、闘技場だ。バルサロッサが現れるまでは、七つの国の魔力養成学園の生徒たちが闘魔館で凌ぎを削り、年に一度、各国学園の代表者を選び、個人戦、団体戦を行う大会も闘魔館で開いていたらしい。


 最後の大会でミランは、個人戦で圧倒的な力で優勝したらしい。その年はこのイドゥナシーロの闘魔館が会場だったとのことだ。

 今では、そういった交流などないので授業でたまに使うくらいらしいが……ってそんな説明より、どうやって今から戦いを回避するか、僕の頭の中は一杯になっている。そんな僕の心配をよそに闘魔館に辿り着いたのだった。


「アレル、いきなり実戦だけど大丈夫?」


 ミランが心配そうな顔つきになる。


「大丈夫……じゃないよ! ケンカだって皆無に等しいのに。君のせいだろ! この状況!」

「まあまあ、そんなに怒らなくても。別に殺されるわけじゃないんだから」

「だけど……どうしたら……」

「尻尾に魔力を込めたら、とりあえず全身に魔力が行き渡るようにイメージして。それでおもいっきりあいつにパンチを当てたらいいのよ。あっ、靴は脱いで。さっきみたいになったら困るし。ほら行って、頑張ってね!」


 ほんとにそんなので大丈夫なのか!?


 武舞台は円形になっており、殺風景に石のタイルが敷き詰めらている。僕が武舞台に足を踏み入れると、武舞台を囲むようにドーム状の青白い透けた膜が張られた。おそらく、外部に被害出ないような結界のようなものだろう。

 僕にとっては牢獄にさえ感じられる……。

 僕はミランの言葉に疑心暗鬼になりながら、先生とローマンが待つ、武舞台の中央に歩んだ。足枷をつけられたように足取りは重い。ローマンは近くで見ると、さらに大きくいかつく見える。


「大怪我しても恨むなよ」


 彼はすでにやる気満々モードだ。ああ、死亡フラグが立っている……。


「では、二人ともぉ、私の前に来てぇ」


 先生が審判をするようだ。それにしても先生とは思えない口調だな。しかしながら、そのおかげで少しばかり緊張が解けた。


「ルールはぁ、魔力が尽きるかぁ、気絶するかぁ、ギブアップしたほうが負けねぇ~」

「わかったぜ!」


 両拳をガツンっと合わせるローマン。


「あ~ローマン! 空飛ぶのなしねー! そのコ靴履いてないから」


 ミランが武舞台サイドから叫んだ。

 ローマンがちらりとミランに目を向けたあと、少し不機嫌な顔をして、「ふん、わかったぜ!」と豪気を込め言った。


 ここまできたら覚悟を決めるしかない。


「では、いくよぉ~はじめぇ~!!!」


 先生のおっとりとした掛け声と共に、僕は距離を取るために後ろにダッシュした。


「なんだお前、魔力も使わずに逃げやがって!」


 えっ、なんでそこにいるの? 


 ローマンが隣にいたと思った瞬間、左肩口に重い衝撃と痛みが走る。吹っ飛ばされ、タイルの上をゴロゴロと転がる。まったく何をされたのかわからない。


「アレルー! 早く魔力を集中させてー!」


 ミランの声だ。僕はよろよろと立ち上がった。立ち上がったものの痛みと恐怖からか、足が容赦なく震える。


「おいおい、軽く蹴っただけだぜ。早いところ魔装しろよ。まさかクリアじゃないよなあ」

 彼の尻尾は青く光っている。そうだ、尻尾だ! 尻尾に念じるように気を集中させた。尻尾が熱を帯び始めた。


「なに!? イエローだと!?」


 ローマンは驚きの表情を露わにした。観戦している生徒からも、どよめきが聞こえる。

 えっと、ここから全身に魔力が行くようにイメージだよな。黄色のオーラみたいなものが僕のカラダから発せられる。


「それがお前の魔力レベルか!」


 ローマンはニヤリとして、


「面白い! これでもくらいやがれ!!」


 ローマンは手のひらを僕に向けて、火の玉を放ってきた。感覚的に避けれると思った。僕は右にジャンプして躱す。思った以上に跳んだ。なんだこれ!? 人間では絶対にありえない高さと距離を跳んでいる。

 ローマンはこちらに走り跳んできていたのだが、僕にはそれが見えていた。さっきはまったく彼の動きが見えなかったのに。

 空中で顔に向けて右回し蹴りを放たれたが、僕はかがんでなんなく躱す。これもスローモーションとまではいかないが見えたのだ。そのまま二人共、着地した。


「さすがはレベルイエローだな。魔装した途端、簡単にかわしやがって」

「マソウってなんですか?」

「そんなことも知らないのか!? 今、お前が魔力を身にまとわしてることだよ」


 なるほど、これをマソウっていうのか……。


「お前、いつまでそんな全開で魔装してんだよ。わざとやってんのか? イエローといっても魔力がすぐ尽きるぞ」

「わざとっていわれてもわかんないし」

「はあ!?」


 ローマンは面喰らったような顔をした。


「おい、待て待て……。ミラン! こいつ魔力の制御もできないのか?」


 ミランはコクンと頷き、テヘペロした。


「あいつ~! 俺を噛ませ犬にしやがったな! あ~もうやめだやめだ! 結界を解いてくれ!」


 ローマンはそう叫ぶと、踵を返し武舞台のへりに足を向けた。僕は気が抜けてへたりこんだ。その途端左肩に激痛が再来した。目をやると、不自然に伸びている。


「大丈夫!? アレル!」


 ミランが駆けつける。先生も走り寄ってくる。


「これは脱臼してるわねぇ」


 先生は左腕を触りながら言った。


「ごめん、早く魔力の使い方を覚えてもらおうと思って受けたけど、荒療治すぎた。ほんとにごめんね!」


 ミランは心配した表情で、うるうると涙目になる。


「別にもういいよ」


 女の子にそんなに泣いて謝られたら許すしかない。


「ミランちゃん、背後からアレルくんを抑えてぇ。先に入れてあげないとぉ」


 ミランは僕の背後に回った。


「待って! 入れるってなにを」


 僕の言葉にキョトンとする先生。


「なにって外れてる肩に決まってるわよぉ」

「ま、魔法で治せないんですか?」


 先生がフフッと鼻で笑った。


「アレルくん、そんな人間界のゲームや漫画に出てくるような魔法はないのよぉ。病気や怪我は悪魔も人間も一緒なのよぉ」

「火の玉飛ばすとか、身体能力が向上するとかも十分ゲームとかに出てくる魔法ですが!!」

「あらそうかしらぁ~。だけど、ほらぁ早くしないと筋肉が硬くなって整復しにくくなるわよぉ~」

「い、痛いですか?」


「一瞬だけねぇ。大丈夫! 私、元衛生兵だからぁ、安心して任してぇ~」と豊満な胸を叩いて、したり顔をする先生。


「……でも痛いんですよね」


 僕は不安そうな表情を惜しみもなく出した。


「仕方ないわねぇ~」


 そう言うと、先生は着ているシャツの胸元のボタンを外した。たわわな胸の谷間が姿を現した。自ずと目が惹きつけられる。

「私の胸の谷間を見てて、じゃあ怖くないでしょぉ~?」


 返答に困るが、恥ずかしながら目が釘付けになる。思春期の僕にとっては、先生の胸の谷間が織り成す引力には逆らえない。


「先生!? そんなことしなくても!」とミランが慌てて抗議する。


「いいからいいからぁ、それよりミランちゃん、しっかり抑えててねぇ~」


 なぜかミランに脳天をはたかれた。


「なにするんだよ!」


 振り向いてミランに目をやると、恐ろしく冷たい視線。その直後、先生が整復を施した。


「よいしょ!」

「ぎゃあ!!!」


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