終章 黄金の煌めき
目を覚ますと、真っ暗な部屋の中にいた。ここはどこだろう?
起き上がろうと、試みたが力が入らない……というよりか、力の入れ方すら忘れてしまった感覚に捉われる。
あたしは視線を左右に飛ばすと、機械のモニターのようなものが目に入った。モニターの画面には数字と規則的に波打つ線が表示されている。
ようやくここで病院だと気づいた。そうか、あたしはバルサロッサ達にやられたけど、どうにか助かったんだ。
どれくらい意識を失っていたんだろう。
暗闇に目が慣れてきて、自分の状況を見ると、いくつか管がつながれていた。ダメージが酷くて、まだ身体が動かせる状況ではないんだ。
アレルは助かったのだろうか?
世界はどうなったのだろうか?
色んな事が頭を駆け巡るがやはり力は入らなかった。夜が明ければ、誰かが来てくれるだろうか、やがてあたしは再び眠りに誘われた。
こうして数日前、あたしは長い眠りから醒めた。病院の先生からすると、奇跡だったらしい。両親も泣いて喜んでくれた。そのことは嬉しかったけど、心がなにかを失った喪失感で埋め尽くされている。
あれは夢だったのだろうか。長い夢を見ていただけだったのだろうか。
夢の中のあたしは強く、たくましかった。そして、何より夢の中のあたしは彼と共に時を過ごしていた。この病室によく通ってくれた大好きな男の子と……。
窓から射し込む月光の中、自分の細く、か細い腕を見て、げんなりする。やはりあれは夢だったんだ、と。
明日、あたしは手術する。すぐにしないと延命すら危ういらしい。失敗の恐れもある。目覚める前となんら変わらない状況に絶望する。
酷く怖い……。死ぬことよりも、死ぬことによって彼との再会が叶わなくなることが……。
6年前、病気が治る可能性が低いことを知り、彼の枷にならないように、自分から手紙を途絶えさせ、自分のことを忘れてもらおうとしていたのに、今すごく彼に会いたい。
現実のような夢の中で彼に会えていたからよけいにそう思ってしまうのだろうか。
あたしはやり場のない気持ちから解放されたくて、ベッドから這い出て、まだままならない足取りで窓に近づく。
窓から見える満月は美しい黄金色をしていて、あたしを魅了する。
窓を開けると、冬の冷気が辺りを包む。手を伸ばし、月をその手の中に入れるように握りしめた。
なにかが起こりそうな予感がしたが、なにも起こらない。
あたしは自虐的な笑みを浮かべた。
当たり前よね、あれは夢なのだから……。
諦めて、手を下ろした時、そこにあるはずの月が消えていた。いや、夜空に浮かぶ、人影が月を遮っていたのだ。
月よりも眩い光を放つ金色の尾を携えた人影は、ゆっくりとこちらに浮遊する。
その姿にあたしの心は激しく揺さぶられる。
「……アレル!」
彼は優しい笑みを浮かべる。あたしは自ずと涙を流していた。
「迎えにきたよ。一緒に来るかい?」
あたしはできる限り力強く頷いた。
次の瞬間、黄金に煌めく尾があたしの胸を貫いた。




