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第57話 レベルゴールド

 端で傍観していたバルサロッサがなぜか恍惚の笑みを浮かべる。


「これが絶望に絶望が重なった力か。金色の尻尾。いわばレベルゴールド、まさか実在するとは……美しい」

「レベルゴールド!? バルサ様、それはレッド以上ということですか?」

「そうだよ。おそらく我々より魔力は遥かに上だろう」

「……そんな……あいつが俺より上……!? 」


 バルサロッサの言葉に御堂は一瞬、怯えた目をしたが、すぐに恨みと憎しみを込めた鋭い目つきに変えた。


「そんなことが……そんなことがあってたまるかぁー!」


 御堂はそう叫ぶと、紅のオーラを纏い魔剣で切りかかってきた。

 だが、以前の僕とは違い、御堂への恐怖は感じない。

奴の幾度の斬撃を紙一重で躱す。


「はあはあ、くそ!」


 このままでは拉致があかないと思ったのか、奴は後方宙返りで僕から距離を取った。


「これで終わらせてやる。お前如きが俺より上なんてありえない!」


 大きく上段に構えた魔剣を振り下ろす。


「死ねぇ! 永久凍奴刃エターナル・アイスレイブ


 殺意を帯びた巨大な刃が周りを凍てつかせて、迫りくる。


 なに!?


 躱そうとした刹那、足が動かないことに気づいた。この技は対象者に対し、足元を凍らせる付加価値効果もあるらしい。

 ならば……僕は両手を刃を受け止めるように前に出した。


「はああああああ!」


 僕の手の先から黒炎が迸る。

 御堂が荒ぶった声で吼える。


「うおおおおおー!!! 負けるかぁ!」


 炎と氷の凄まじいせめぎあいが続いたあと、つん裂くような音が鳴り響いた。

 それは奴の斬撃が終息を告げたことを意味していた。


「うそ……だろ……黒炎も扱えるのか……」


 目を見開き、驚きの表情を隠せない御堂。

 僕はすかさず、リンの近くに転がっていた、魔刀イフリートを拾い、テシマに向かって、斬撃を放つ。


「地獄の火炎斬ヘル・スパーダ!」

「ぐっ! こんなもの! ぐっ、ぐああああああ~!」


 奴は氷の魔剣で防ごうとしたが、防ぎきれず業火と共に吹き飛んだ。

 焼け野原に仰向けになってのさばる御堂に僕は歩み寄る。

 そういえば、バルサロッサの姿が見えなくなっている。どこかに行方をくらましたのか!?  

 辺りを注意しながら、歩を進め、御堂を眼下に捉える位置までやってきた。傷を負った彼はよろよろと膝をつくのがやっとのようだ。


 手の平を僕に向けて、


「ま、待ってくれ! 悪かったよ! 許してくれ!」

「……なにを?」


 僕は冷たい視線を奴に浴びせた。


「いや、そのお前に色々悪いことしたことをさ。なっ!」

「なぜミランを殺した?」

「そ、それは俺がやりたくてやったんじゃないというか……バルサ様に命令されて……」


 此の期に及んで、人のせいにするのか……。


「あっ! そうだ! バルサ様に口きいてやるからよ! お前も俺たちの仲間になれよ! これからこの世界は俺たちの思うがままにできるぜ! なっ! 俺も人間の時から酷いことしてきたことは謝るからさ!」

「酷いことをしたっていう自覚はあったのか?」


 奴は目を泳がせ、


「ま、まあ、そりゃそうだぜ」


 奴は手を合わせて、


「ごめんって! 悪かったって! そのかわりあの時、俺を刺し殺そうしたことも水に流すからさ! 」


 なんていう軽々しい口調。こいつはすべて自分が蒔いた種が今の現状に繋がっているとはひとつも思わないのか。

 正真正銘のクズだと再認識する。


「なっ! 元人間同士仲良くやろうぜ!」


 僕が「わかった」とでも言うと思っているのか。こんな……こんな奴にリンは殺され、僕の人生は狂わされたのか。許せない……到底許すことなどできない。

僕は魔刀を振り上げた。


「お前のせいで、リンもエヴァもたくさんの人が犠牲に!」


 まさに振り下ろそうと力を込めたその刹那、


「がっ!」


 御堂は急に口から血を垂れ流した。

 彼はゆっくりと振り返り、「なんで」と声を絞り出し、顔を歪めて前に突っ伏すように倒れていく。

 その言葉の意味は、背後に現れたバルサロッサに投げかけたものだった。バルサロッサの尾は紫に輝いており、その先端は御堂の胸を背後から穿っていた。

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