第4話 カラフル
「魔気の取り込める量、つまり魔力の量は尻尾の色で大体決まっているの。さっきあんたがお城でやったでしょ」
尻尾が黄色くなったことか。
「尻尾の色が変わらない人をレベルクリア、そこから
ホワイト
ブルー
イエロー
グリーン
レッド
の順で魔力が増していくわ。レベルクリアでも日常生活レベルの魔法は使えるわ。戦闘レベルの魔力が必要なのは最低ホワイト以上じゃないとダメだけど……他にはレッドの上もあるみたいなんだけど、あたしは見たことないわね。伝説とか幻レベルの眉唾ものね」
「なるほど……」
僕は納得するように頷いてみせた。だが、まだまだわからないことはたくさんある。
「あと、一番気になっているんだけど、僕はどうやって悪魔になったの。人間は死んだら悪魔に生まれ変わるの?」
ミランは首を横に振る。
「違うわよ。悪魔も人間も命は同じよ。寿命も変わらないわ。人間だけは生まれ変わりがあるけど、あんたはあたしが刺したから悪魔になったの?」
「なっ……!」
僕は彼女のさも平然と言ってのけた爆弾発言に言葉をつまらせた。
「さ、刺したって……」
「……あんた首を吊って死のうとしてたの覚えてる?」
もちろん、覚えている。あんなに覚悟を決めた事など人の一生においてそうそうあるはずはない。僕は強く肯定するように数度頷いた。
「あのとき、死にかかっていたあんたを尻尾で刺したの。レベルレッド以上が全魔力を注ぎ込んだ尻尾で刺された人間は悪魔に転生できるのよ」
なるほど、合点がいく説明……だが自然と次の疑問をぶつける。
「なんで僕だったの!?」
「えっ!」
ミランは言葉に詰まり、目を泳がせた。
「えっと……たまたまよ」
たまたまで僕は悪魔にされたのか……僕は苦笑いするしかなかった。
「たっ、たまたまって言っても、あのタイミングで絶望したあんたを見つけたからよ」
僕の表情を読み取ったミランは焦り顔で取り繕った。確かに人生で絶望の絶頂期だったけれど……。
「どうして、僕が絶望してるなんてわかったの?」
「そ、それは自ら命を絶とうとしてる人間なんて絶望してるに決まってるでしょ!」
まあ、言われてみればそうだな。
「悪魔になるのと絶望がなにか関係しているの?」
彼女は頷き、
「あの日は満月の夜で、満月は人間界に微量ではあるけれど、魔気が注ぎ込むの。それであたし達、悪魔は人間界に少しの時間くらいは入れるの。あの日、あんたは絶望していた。絶望している人間ほど悪魔になった時、魔力がすごいっていう言い伝えがあるから、あたしはあんたを悪魔にしようと思ったの。あたし達にはすぐに戦力になるほどの悪魔が必要だったから」
理屈と理由は通っているが、なんかもやもやする。
「どっちにしろあのままだったら死んでたんだから良かったでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
ちょっと腑に落ちないが、確かに自殺したんだから……まあ良しとするか、というよりか今さらだよな。
「あたし達はクラシカルとの戦いに向けて、戦力になる悪魔が必要なのよ。バルサロッサは魔界を征服したあと、人間界も征服するっていう情報もあるし、なんとしてでも阻止しないと」
僕はこの話の流れでおそらく当たり前の選択になっていることを口にする。
「僕も戦わないとダメなんだよね?」
何を馬鹿なこと言ってるの? と言わんばかりに大きく目を見開くミラン。
「もちろんよ! その為にわざわざあんたを悪魔にしたんだから。戦わないと奴らに屈服して死ぬだけよ」
「ミランさんはレベルレッドなんだよね?
それなら僕だけじゃなく、人間の悪魔を量産できるんじゃ……そうすれば……」
しかし、彼女は僕の考えをあっさりと覆した。
「それは無理よ。レッドでも人間を悪魔にできるのは全魔力を使い果たして、ようやく悪魔にできるかどうかだし。確率的に10パーセントにも満たないわ。失敗したらその人間を殺しちゃうことになるし。魔力の回復にも相当な時間を要するし。それにタイミング良く絶望している人間に会えるわけないじゃない」
確率10パーって……なかなかシビアな条件だな。
「それにレベルレッドは少ないのよ。あたしは希少中の希少なのよ!」
最後の一言を言い放つと共に彼女は胸に手を当てて、少し得意げに口角を上げた。
いわゆるドヤ顔だ。
「あんたレベルイエローなんだから少しは期待してるのよ」
「イエローってそんなにいい方なの?」
聞いた話だと真ん中くらいの強さだが……。
「尻尾に色がある悪魔はカラフルって呼ばれていて、ブルー以上でもなかなか希少なんだから。今、魔界全土の悪魔で、確認されているレッドなんて10人にも満たないのよ。グリーンもそれに次ぐ少なさよ。イエローだって国の部隊長を任されるくらいの魔力の持ち主なのよ」
そうなのか……。
「でも、僕に戦いなんかできないと思うんだけど……今まで格闘技なんかやったことないし、スポーツもカラダが弱かったから得意じゃないし」
僕はあえて弱々しい口調で言った。
「もうネガティヴ思考ね! いつからそうなったんだか」
少しあきれ顔になるミラン。
「まあ無理もないか……」
彼女はぼそっと呟いた。
無理もない?
なんか僕のことを知っていた風な物言いをするミラン。
「ミランさんは僕の人間だった時のことを知ってたの? さっきたまたま見つけたって……」
「えっ!?……い、いや、そそそうよ。たまたまよ。なんか自殺までしようとした人間だから無理もないかってことよ」
なんか動揺しているように見えるんですけど……。
「とにかく、あんたは戦力になれるように学園で訓練するの」
……僕はとんでもない世界にやってきてしまったようだ。異世界が本当に存在するなら、こんな戦いがある世界に来たくなかったよ。それかどうせならよくあるチート設定で自分が最強とかにしといてほしかった。
イエローとか中途半端なんだよ……。商店街のくじ引きをして三等が当たったくらいの微妙さだ。
そうやってネガティヴ思考を働かせていると、ブーンブーンとバイブ音みたいな音がした。
ミランがスマホを取り出して、液晶をタッチした。ここは魔界だからスマホのようなものという方が正しいのかもしれないが。
「許可が下りたから行くわよ」
「許可?」
「そう、学園の生徒になる許可」




