第46話 白夜の中の迎撃
テント内に響くジリリという音が心地良く感じるくらいのスッキリとした目覚めだった。
みんなもそんな様子だ。
奇襲をかけるつもりで、夜中に出撃することにして早く眠ったつもりだったのだが、外が妙に明るい。
「白夜ね。うっかりしていたわ。ここは最北端に位置して、暗闇は訪れないわ」
ミランが悔しさを滲ませる。
「でも、もう時間はないわ。少しでも敵に察知されないように城に近づくつもりだったけど、仕方ないわね」
各々身支度を整え、僕らは白夜の光を浴びながら飛び立った。
僕たちは敵に察知される前に少しでも城に接近する為に高速で飛行する。
白夜で黄金に輝く平原を半分ほど飛行したところで、前方から炎の矢が数本飛んできた。ミランがそれを軽々といなすように手刀で弾く。
「やっぱりおいでなすったわね」
金色の空の中に、無数の人影。それは次第に数を増していく。
「さあ、どれくらい、いるのかしらね」
ミランの言葉と拡がっていく黒いローブの数に僕は身震いする。これが武者震いというやつだろうか。
「さすがに敵の本拠地ですから、出兵で減っているとはいえ、それなりの迎撃はありますわね」
エルナが前方を見据えて言った。
「ミラン、空中戦より地上戦に持っていく方がいい」
ノーファが戦況を見て提案する。
「そうね。確かに数が多いから地上の方が戦いやすいわね、みんな下りるわよ」
僕らは平原に降り立つ。
「さあ、ここからが本番よ! この日のために、あたし達はここまでやってきたのよ!」
ミランの言う通りだ。この日の為に……もう誰も理不尽な力で屈しない世界に変えるために、僕らはやってきたんだ。
僕は強く頷いた。
「ええ、そうですわ。みなさんの気持ちに応えましょう!」
「御意」
「死ぬ気でやってやる」
ミランは碧眼の皇女に鋭い視線を飛ばす。
「……ルン、死ぬ気はダメよ。あたし達は必ず生きて帰るの。だから、生きるために戦うの。新しい未来を……明るい未来を誰もが描くことができるようにする為に戦うのよ。その中にはあんたも、もちろん入るんだから」
ルンは唇を固く結び、首を短く縦に振る。
その時、刹那の時間だったが、なぜか僕に少し哀しげな視線をミランは飛ばした。
「みんなも絶対に生きるために戦うことを約束して」
ミランの言葉に僕、ノーファ、エルナが頷く。
「まずはあたしがその為の道を切り拓く!」
ミランは真紅のオーラを発し、パピヨンモードになる。そして、右手を頭上に掲げた。
「はあああああっ!」
掲げた先で漆黒の炎が渦を巻きながら、ひとつのおおきな丸い塊となる。その燃え盛る黒炎の玉はさしずめ黒い太陽といったところだ。
「黒き業火よ、最果てまで焼き尽くせ! 炎皇爆裂蝶!!!」
城までの道程にまっすぐに放たれた黒き太陽は、破裂を繰り返す度に黒蝶が舞う。立ち塞がっていた前方の敵が廃塵と化し、まるでモーゼの十戒で海が割れたように、城までの道が拓けた。凄まじい威力だ。
「行くわよ!」
ミランの号令と共に、僕らは駆け出した。
「でやっ!」
襲い来るレベルブルーの兵士を蹴り倒した。僕だけで蹴散らした数は50に近いだろう。それにしても思っていた以上の兵士がいるな。
ミランとエルナが先頭に並び、その後方、右に僕、左にルン。そして、殿にノーファ。このような逆五芒星の陣形をコンパクトに保ちながら、城を目指している。
この陣形はミランの誰も死なせたくないという思いから、バラバラにならないように彼女が即座に考案したのだ。四方八方から敵は迫ってくるが、僕ら一人一人の力量が奴らより勝るのと、この陣形が背後を気にせず、相互フォローできるため、僕らは向かってくる兵士を圧倒しつつ、一心不乱に突き進む。ちなみに上空から向かって来る敵は、エルナが前方をケアしながら担当している。
順調に進み、もうすぐ城門前の吊り橋というところで、突然、目の前の無数の敵の攻撃が止む。
なんだ!?
前方に目を移すと、白夜の中、奴が待ち構えていた。おぞましい聞き覚えのあるオカマ口調の言葉が耳に届く。
「お勤めご苦労さまぁ~。やっぱりあなた達だったのねぇ」




