44話 飛び立つドラゴン
ミランがエルナに待ったをかけたのはこちらに向かってドラゴンが吐き出した炎の塊はなんと黒炎だったのだ。
ミランはそれを相殺するように自らも黒炎を放った。
「まさか黒炎を放つなんて……やっぱり炎竜王の血族ね。はああ!」
ミランは魔力を注ぐ。ミランの黒炎も大きな塊になった。
つんざくような爆発音と共にフロア全体が灼熱地獄になる。凄まじい威力だな。氷魔法を付加して、魔装していなければ、僕らも塵と化すとこだろう。
「今よ!エルナ!!」
ミランはドラゴンの黒炎を打ち消した所で叫んだ。
それに呼応するかのように、エルナは前方に飛び上がり、ドラゴンの眼前で温存していた魔法を放つ。
「銀世界!!!」
たちまち赤き鱗の怪物は銀色を帯び、氷漬けになった。
「これでよし!」
ミランは空間魔法で凍結されたドラゴンを収納した。レッドクラスでないと、この大きさは収納しきれない。
故にこのドラゴンの子供がここに連れて来られた時もクラシカルのレッドクラスの仕業だと容易に考えられる。
僕らはドラゴンのいたフロアの奥の階段からさらに進み、ようやく蟻の巣回廊の出口に辿り着いた。
回廊から出ると空は鮮やかな夕焼けに覆われていた。
「よっと!」
拓けた高原でミランは空間魔法から氷漬けのドラゴンを解き放つ。続けてエルナの銀氷を溶かすために黒炎を放つ。
ドラゴンは長い眠りから覚めるようにゆっくりと瞼を開く。
僕は暴れやしないか少し緊張の面持ちで赤き巨獣の様子を見守る。
「ぎゅる」と小さく漏らし、辺りを見回す。
「もうこれであんたは自由よ!」
そう言った、ミランを不思議そうに見つめると、理解したのかもう一度「ぎゅる」と声をだし、大きな羽を広げた。
「あたしはエイジアのミラン! この恩は返してねー!」
「ミ、ラン、グアアアー」と叫び、その翼を大きく広げ、風を舞い上がらせ、オレンジから朱に染まりつつ空にその翼を羽ばたかせて行った。
「名前っぽいこと口にしてたけど、あのドラゴンの子供、ミランの言葉わかったのかな?」
その問いにノーファが口元を綻ばせて答える。
「アレル、ドラゴンは利口。私たちが助けたのは理解しているはず」
「言っとくのは損じゃないわよ!あの子が本物の炎竜王の血族ならなんかいいことあるかもしれないしね!」
抜け目がないな。




