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第43話 銀氷(シルバーズアイス)

「あたし達は敵じゃないわ! 言葉わかる?」

「ぐぎゅるるるるるー!」


 ドラゴンの血走った眼は変わらない。

 ミランの叫びは通じていないようだ。

 やはり、奴はスルーして先に急ぐべきだろう。


「かわいそう……」


 ポツリとノーファがこぼした。


 その言葉の真意が僕にはわからない。このまま階段を駆け上がれば、もう地上のはずだ。

 ドラゴンとわざわざ戦う理由は見当たらないと思うのだけど。


「そうね」


 ミランは意外にもノーファに同調した。


 僕はたまらず尋ねる。


「どういうこと?」

「あのドラゴンはおそらくここを通る者を屠る為だけにここに連れて来られたのよ。自らの意志とは無関係にね」

「それにまだ子供。ドラゴンは高潔ですごく賢い生き物。成竜は私達の言葉くらい理解できるし、話す事もできる。大きさも成竜の比ではない」


 あの大きさで子供なのか。


「ノーファの言う通りね。しかも、赤い鱗からして炎竜王の血筋のドラゴンね。血族のドラゴンは血眼になって探していると思うわ。かわいそうに。こんな所に閉じ込めるなんて」


 なるほど、そういうことか。どこかで捕らえられて、このフロアで意味もわからずに門番として放たれたのか。

 よく見ると、確かに脱出しようとして暴れた痕なのか、あのドラゴンの額や身体には傷があちらこちらにある。こんな地下にはあのドラゴンが通れるような道はない。

 ミランの決断には従うが助けてあげたくなってきた。


「ミラン、助ける」


 ノーファは力強く言った。


「……そうね。このまま放っておいて死なれても寝覚めが悪いしね」


 ミランとノーファの決断にルンが口を挟む。


「でも、姐様、どないして助けるつもりなん?」

「うん、それなんだけど……エルナ、銀氷シルバーズアイスは扱える?」


 黒炎と並ぶ四大究極魔法の一つだ。一つだけでも、レッドクラスでさえ、絶え間ない練魔で扱えるようになる代物だ。


 エルナが頷く。


「ええ、唯一使用できる四大究極魔法ですわ」

「よかった。あたしは黒炎しかまだ扱えないし、普通の氷系魔法なら炎竜のあの赤い皮膚によってたちまち溶けてしまうから」

「でも、さすがにあのサイズを凍結させる銀氷となると、それ相応の魔力を溜める時間が必要ですの」

「なら、エルナ以外は時間稼ぎといきましょうか」


「了解!」と僕、ノーファ、ルンが答えた。



 撹乱戦を実行に移し、エルナを除く4人でドラゴンに的を絞らせないようにその界隈を走ったり、飛び回り、ダメージにならない程の魔法で撹乱する。

 もちろん、エルナは後方で魔力を溜める。

ドラゴンも高速で動く、僕らの動きに戸惑いをみせている。


 数十秒後、


「皆さん、いいですわよ!」


 エルナの準備が整ったようだ。各人が彼女の方に向かう。


 ドラゴンが導かれるように集まった僕らに突進してくる。


「皆さんわたくしの後ろに」


 エルナがそう言った瞬間、ドラゴンが大きく顎門を開く。


「エルナ! ちょっと待って!」


 すかさず、ミランはエルナの前に躍り出た。


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