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第34話 温かな陽射し

「彼は燃え尽きましたの。これで一件落着ですわね」

「ええ、助かったわ。奴の本気のスピードだったら、あたしも追いつけるかわからなかったから」

「わたくしもスピードには自信がありますから」

「流石ね」


 エルナの魔力はどうやらレベルレッドの域に達しているみたいだ。


「そういえばさっきのグリーンからレッドってどういう事?」


ミランの質問に僕が答える。


「ジェルクはレベルグリーンだった。どうやら作為的にテイルチェンジができるみたいなんだ」

「なんてこと……じゃあ、以前、ローマンが施された魔薬みたいなものが……まだ……」

「おそらくそれですの。バルサロッサの天界での通り名はマッドサイエンティストでしたのよ」


 なんだよ、そのおぞましい通り名。

 僕は背中に冷たいものが走るのを感じた。


「自我を保ちながらテイルチェンジができる代物を完成させたってこと!?」

「そうなりますわね」

「なるほど、クラシカル軍にブルー以上が多いのはそれのせいかもしれないわね」


 このことが事実なら、やはり圧倒的に僕らの国は不利だ。攻められたら、そう長い時間持ちこたえられないだろう。奴らが僕らの国に攻撃を仕掛ける前に目的地には到着しておかなければならない。

 想定外ともいうべき状況に静まり返る。その深刻な静けさを打破する声が届いた。


「姐さま~!」


 村の外へ続く道の外灯に照らされてやって来たのはルンだ。心配して様子を見に来たのだろう。ルン達も事なきを得て、パルラ親子を保護できたようだ。僕はとりあえずの安堵感に包まれ、胸を撫でおろした。


 夜明け前の木々に囲まれたこの場所は空気がひんやりとしている。朝の訪れを予感させる青闇はどこか心を平穏に導いてくれる。

 僕らはパルラと出会った林に戻ってきたのだ。ここまで追っ手らしき者もいなかったし、もう大丈夫だろう。


「この度は本当になんてお礼を申し上げればよろしいのか、ありがとうございました!」


 深々と頭を下げるパルラの母。

 僕らはみんな少し恥ずかしそうに顔を見合わせた。

 隣にいたミランが僕の背中をポンと押した。振り返ると、ミランは微笑んでウインクした。

 自然と言葉が流れる。


「パルラがあなたを助けたいと一心に願ったからですよ。僕らはその手助けをしたまでにすぎません」

「ありがとうございます」


 そう言って、パルラの母はわが娘を力一杯抱きしめた。その目には涙が溢れ出している。


「パルラ、ありがとう」


 緊張が切れたのか、ホッとしたのかパルラもこらえきれず泣き顔になった。


「えぐっ、うっ、おかぁさ~ん、うっ、くうひぐっ」


 良かった。本当に良かった。微笑ましいこの光景を眺めている中でそう思ったとき、なぜか過去の自分をほんの僅かだが救えたような気がした。


「おにいちゃん、おねえちゃんありがとう!」

「ああ、気をつけて行くんだぞ」


 パルラ親子にユニコーンを一頭預けて、エイジアで保護してもらえるように手を回している。

 パルラ親子はユニコーンに乗り、エイジアに向けて駆けだした。僕らは手を振り彼女達を見送った。パルラも名残惜しそうに大きく手を振っている。パルラ親子を乗せたユニコーンはまだ薄暗さが残る林の中へと消えていった。


 ルンが僕の肩を小突く。


「今回はうまくいったけど、毎回こういう訳にはいかへんからな。肝に命じときや」

「うん、そうだね。僕のわがままに付き合ってくれてありがとう」

「うぐ……」


 ルンは決まりが悪そうに唇を歪めた。


「ふふっ、さてと、あたし達もいくわよ!」


 ミランの号令にみんなが頷いた。

 クラシカル軍がエイジアに攻め入る前に、バルサロッサの居城まで辿りつかなければならない。

 ノーファのユニコーンはパルラ親子に貸したので、ノーファはエルナの後ろに乗る。

 僕らを乗せた三頭のユニコーンは、昇り始めた太陽の温かな陽射しを受けて駆けだした。

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