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第33話 VS 音速のジェルク

 僕はフードマントを脱ぎ捨て、全開に魔装した。オーラであたりが明るくなる。


「なっ!」


 ジェルクが驚きの声をあげた。


「……あとは追わせはしない」

「どこからその自信が来るかと思えば、よもや、レベルグリーンだとは……エイジアかカメリアの者ならグリーン以上は把握しているつもりでしたが、あなたの顔は知らないですね。これは洗いざらい吐いてもらいましょうか!」


 ジェルクの飛び出しとともに、僕も地面を蹴った。

 地面と空中を行き交いながら打ち合う。緑光の火花が散る。打ち合い続ける中で、徐々に奴のスピードが僕を凌駕し始める。


「ほらほらもっと速くなりますよ~!」

「くっ!」


 奴の攻撃が顔面を掠める。いつのまにか防戦一方状態。反撃できずにガードするだけで手一杯だ。音速は伊達じゃない。


 だけど……。


「ほらほらほらぁ!」


 ジェルクの加速する連続攻撃に、僕の防御していた腕が弾けとんだ。


「死になさい! 風圧砲クードキャノン!」

「ぐはっ!」


 魔法で生み出された風の塊をもろに腹に受け、僕は木造の建物に激突した。


 つっ~!


 魔装していなければ、腹に風穴が空いていたかもしれない。それ相応なダメージはもらったが、これで確信できた事がある。

 僕は半壊した建物の中で腹部に手を当てながら、よろよろと立ち上がった。


「ほう、まだ立てるのですか」

「……そんなヘナチョコな攻撃、効くもんか!」


 挑発にジェルクは怒りを露わにした。


「なら、さらに強力な攻撃で、次こそ息の根を止めてさしあげましょう!」


 ジェルクが向かってくる。僕は右手に魔力を込め続けながら後方に飛ぶ。案の定すぐに追いつかれ、さっきと同じように半端ないスピードで攻撃を繰り出すジェルク。

 数撃、ガードした所で僕の右腕が弾かれた。

 いや、弾かれたように見せたのだ……。


「次こそ、死にーーー!?」


 僕の弾かれた右腕が自分を狙い撃とうとしていることに目を見開くジェルク。大きく両手を挙げた奴が、魔力を溜め込む瞬間、タイムラグが発生するこの瞬間を待っていた。強力な魔法ほど、魔力を溜めなければならない。


 僕は奴の懐に潜り込み、鳩尾を突き上げるように、


雷気発勁ライキハッケイ!」


 ありったけの雷の魔力を込めたオリジナル魔法の一撃。


「がはっ!」


 ジェルクはそのまま地面に墜落していった。手応えありの一撃。


 僕は奴の墜落した付近に降り立った。

 仰向けでジェルクは倒れている。かなりのダメージを負ったようだ。


「うぐ……あ、あなた、わざとガードを……外し……ましたね? 」

「一回目の時にあんたの攻撃は軽いと感じたからね。完全に加速する前ならガードを自分から崩せると思ったんだ。あんたの隙を作るために」

「まんまとハメられたということですか……」

「挑発にのってくれたおかげだよ。もし、長期戦に持ち込まれたらわからなかった」

「私の敗因はスピードに特化したせいで他の魔装が疎かになっていたということですか……」

「どうしてあんた達はあんな酷いこと……あんたは元々、この国の重鎮だったんだろ?」

「……バルサロッサ様は至高の存在……圧倒的な強者なのです。私を強くして下さったのもあのお方です。あなたもバルサロッサ様に仕えてごらんなさい。グリーンのあなたならレッドになれるかもしれないですよ」


「それはどういうことですの?」


 僕が発しようとした言葉が背後からかけられた。振り向くと、よく知る顔がそこにあった。


「エルナ!」

「遅くなり、申し訳ありませんですわ。沸き出てくる雑兵の始末に時間がかかりましたの」

「ごめん! アレル! 大丈夫だった?」


 ミランが上空から降りたった。フードを目深に被っている。


「うん、大丈夫」

「良かった」


 彼女はフードを外し、安堵の笑みを浮かべる。


「あなたは……ブラックパピヨン!?  なぜここに?」


 ミランが人差し指を立てて、唇に当てる。


「ひ……み……つ」


 ついでにウインクも付け加える。


「悪いけどあんたの部下は一人残らず始末させてもらったわ」 と今度は冷たく続けた。


「50はいたはずですが……あの数のレベルブルーが……こんな短時間で全滅……はは」


 ジェルクは月明かりの中で、ありえないといった様子で引き笑いをする。


「それより、さっきの話を詳しくお聞かせいただきたいですの。グリーンがレッドになるとはどういうことですの?」

「それはできない……言えば、私の命が消されるようになっていますからね!」


 ジェルクがそう語尾を強めた瞬間、爆破音と共に土煙りが舞った。

 しまった! まだ、動けたのか!


「逃がしませんの!」


 土煙で見えないが、エルナの声が聞こえた。どうやら見失わず追ったようだ。

 気持ちが流行る。奴のスピードで逃げられたら、僕では到底追いつけない。エルナは追いつけるのだろうか。

 そう思った矢先、青白い炎のようなものが少し離れた夜空で立ち昇った。


「あたし達の情報漏洩は大丈夫そうね」

「えっ!?」


 僕はミランに振り返った。

 ミランは「ほら、帰ってきたわ」とさっきの青白く光った方角を指差した。

 エルナはこちらに滑空してくる。いつもと違うのはエルナの頭の上に赤いリングが浮いていた。


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