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第27話 皇女来たる

 茜色が徐々に後退し、辺りは暗くなり始めていた。


「さてと……そこの傍観者出てきいや」


 こちらに鋭い目つきを飛ばし、少女が言い放った。


 あれ!? バレてた!?


 僕とノーファは顔を見合わせ、ドアを開いた。彼女は近くで見ると、髪と同様の青い瞳をしていた。


「あんたら、そこに居るってことはもしかして」


「そうよ! あたしの仲間よ」


 少女の背後から現れたのは、ミランとエルナだった。


「久しぶりね! ルン」

「姐様!」


 ミランの知り合いか、ということは……。

 ルンと呼ばれる少女はミランに抱きつき、頰を重ね、スリスリする。


「姐様、スベスベ、気持ちい、スベスベ」と長い時間のスリスリ攻撃。見てるほうが恥ずかしくなってくる。

 最初は満更でもない様子のミランだったが、徐々に苦笑いから鬱陶しそうな表情に変化していく。


「ええい! しつこい!」


 ミランは彼女の脳天に手刀を落とした。


「いたい〜」


 なんだこのコは!?


「それより、これ、あんたがやったの?」


 モヒカンの散らばる氷と地に伏している二人の黒ずくめに視線を移すミラン。


「せやよ」


 ミランはあきれた様子で溜め息を漏らした。

「あんた、この任務は極秘なのよ。騒ぎや戦闘は目的地に着くまでは、起こさないようにしないと」

「大丈夫やで、せやからここまでおびき出したんやから。国境付近にたむろしとったから排除しといたろおもてな」

「あんたの気持ちもわかるけど、敵の領内に入ったらやめてよね」

「それくらい、うちかてわかってるで、姐様」

「ならいいけど……」


 ミランは怪訝な表情を浮かべた。


「そのコですのね。わたくし達の待ち人は」


 エルナの言葉にミランが答える。


「そうよ。暗くなってきたし、町の中じゃ、誰に聞かれるかわからないから、宿の中で紹介するわ」

「その前にあいつら消しといた方がいいやんね」


 ルンは屍と化した黒ずくめ達を魔法で跡形もなく燃やした。


「これで証拠隠滅っと!」


 僕は明るい声で、なんのためらいもないルンに背筋がゾクりとした。


 僕らはこれからの進行とルンの紹介の為に、ミランとルンが泊まる部屋に集まった。 

 ちなみに当たり前なのだが、僕は一人部屋である。

 ミラン以外のメンバーはベッドに腰を下ろしたのだが、ミランが紹介のためにルンに自分の隣へ来るように手招きする。


「彼女はカメリアの第三皇女、ベルゼ=ルンよ。この作戦に参加してくれるわ」


「皇女!?」


「あっ、アレルは知らなかったのね。カメリアは古の7大悪魔ベルゼ=バブの末裔が代々治めているのよ」

「まっ、お姫様やけど、うちのことはルンと呼んでくれたらええよ」


 王族のわりに、このコさっぱりしてるな……。


「王族なんかよく派遣してくれたね」

「うちが自分からこの作戦に参加したいっておやじに直訴しただけやし。ほら、うちって受けより攻めって感じやん」


 ルンは親指を立てて、なぜかドヤ顔する。

 自己紹介で性癖をさらけ出されても困るのですが……。


「まあ、それだけベルゼ様も本気ってことよ。それにこのコの実力は折り紙つきよ。カメリアでも五指には入るわ」


 ミランが補足した。


「それなら余計にそんなレベルの人材が来て、カメリアは大丈夫なの? レベルレッドは一人もいないんだろ?」


 僕の心配を跳ね除ける為に、エルナが口を開いた。


「それは案じなくていいですの。エイジア同様カメリアにも、四天翼の一人が支援していますから」


 そうなのか。それなら、僕らがバルサロッサを討つ前の防衛戦は持ち堪えれるということか。大戦力であるはずのこのコをここに送り出してきたということは、カメリアもこの作戦に賭けていることがわかる。


「姐様、さっきから質問ばっかするこいつ、大丈夫なん? てんで強そうにはめえへんけど」


 ミランは苦笑いしながら、

「大丈夫よ。これでもレベルグリーンだから」


「ふぅーん」


 なんだよ! 自分から訊いといてその全く興味がない反応は! という言葉は心の内に秘めておこう。


「あんた、姐様にちょっかいかけたりしたらあんたの大事なとこ、使えなくなるように滅殺してやるから」

「えっ……」


 なにこのコ、すごく怖いこと言ってるんですけど。ホントにお姫様なんですか!?


「それはさせない……」


 ノーファはそう呟くと、いつもの生気がない視線をお姫様に浴びせた。

 それに圧倒されてか、若干たじろぐお姫様。


「な、なんやねん! お前、こいつのなんやねん!」

「アレルは大事な友であり、仲間」

「ああ、そうなんやぁ……ってちゃうわ! 」


 ルンは一人ノリツッコミを炸裂させる。こいつはお姫様というより芸人か!?


「そうやなくて、あんた、このひ弱そうな優男が好きなんやろ?」


 ルンは意地悪そうな笑みを口元に浮かべた。

全員がノーファに注目した。彼女は表情を変えずにひとこと、「好き」と告白した。


えっ!?


「やっぱりなあ〜、それならそうとあんたら二人、この作戦から外れなあかんやろ。これからうちらが成し遂げなあかんことは国家プロジェクトやで。恋愛ごっこは帰ってしてや〜。せやろ? 姐様」


「…………」

 ノーファの告白にはびっくりしたが、なぜかミランまで惚けまなこになっている。


「姐様?」

「えっ、あっ、う、うん……」

「違うよ! ノーファのそれは友達として好きっていう意味だよ。ねぇ、ノーファ」


 僕は否定した。なぜなら、どんな意味でも好かれるのは嬉しいけど、この作戦から下りることなんてできない。


「好きは好き、それ以上の意味でもなくそれ以下の意味でもない」

「このウオノメはなんかようわからんことを言うやっちゃなあ」

「ウオノメ?」


 誰のことを言ってるんだ。僕の? に答えるルン。


「こいつの目が死んだ魚の目みたいやから、ウオノメ」


 ルンはノーファを指差した。なかなか、悪どいネーミングセンスだな。


 エルナがあきれたように大きな溜息を吐き、

「なんか収拾がつかなくなってきましたわ……ミランさん、まとめてくださいまし」

「そ、そうね。みんな明日からクラシカル本国から遠いとはいえ、領内に入るから気を引き締めるように!」


ミランの言葉にそれぞれ頷いた。


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