1話 退屈な日々
はじめまして!らびぃです!!
初投稿なので、うまく書けているか分かりませんが、頑張ります!
読んで、楽しんでいただければ、幸いです。
※この小説に出てくる人物、団体、地名などは現実には一切関係ありません。
そこはまるで地獄だった。
建物は崩れ、龍や魔物の亡骸が辺り一面に転がっている。さっきまでそこにあった世界が崩壊しているのだ。
そんな荒廃した世界に立ち尽くす少女がひとり。
その身体は血にまみれ、右手は無くなっている。それでも最後の力を振り絞り、懸命に左手でパネルを操作する。
「これで……よし。後は………」
壊れていく世界の中、少女は最後の操作を終え、誰にも聞こえないような声で何かをつぶやいた。
「へへ……、笑顔の………だよ…」
そう言った少女は笑みを浮かべた。パネルが別の何かを形作り、どこかに消えたのだ。
少女はそれを確認すると、満足げな顔でその場に倒れていく。もう、動く力すら残っていないだろう。それと同時に、世界の崩壊が加速していく。
(じゃ…後は任せたからね………)
その刹那、世界が消えた……。
「刺激が欲しい…」
仁野拓哉はいつもそう思っていた。
いつもとはちがう非日常的な暮らしをしたい、そう思っていた。
中学校だってそうだ。こんなに退屈で反吐がでるような集団にいることにうんざりしていのだ。
ここは、三重県茅島市にある大橋第一中学校の一階、3年1組の教室だ。
素直に言ってしまえば、バカの集まりだ。
9月が始まり、他のクラスは受験に向けて頑張っているというのに、このクラスはいっこうにそんな様子を見せない。
それどころか、授業中には、教師がただ淡々と黒板に文字を書き、生徒はお菓子を食べたり、スマホをいじったり。
三年の始めは、拓哉はクラス替えなど、どうでもいいと思っていたが、まさかここまで酷いとは想定しておらず、早々に嫌気がさしていた。
ほとんどの人間が授業などしていない。そんな集団の中に自分か混じっていることさえおかしい、と拓哉は常々思っていた。
その拓哉はといえば、授業中は一人まじめに授業を聞いている。
授業をサボることもしなければ、まず話す人間もいない拓哉は、さぞ優秀と思われていることであろう。
何もすることが無いから、授業を受けている。
ほかの人間から見れば、拓哉自身が退屈な奴に見えるのだろうが。
4時を過ぎ、学校の終わりを告げるチャイムが鳴ると、足早に学校を出て行く。こんなところにいる時間が惜しいからだ。
3分程で家に着くと、家にある車を確認した。
普段は、黒の軽自動車と白のプリウスが止まっているのだが、今はプリウスが止まっていなかった。
(よし……)
内心そう思い、家の扉を開ける。
「ただいまー」
「あ!お帰り、おにいちゃん!」
そう言って元気に拓哉を迎えたのは、拓哉の妹の渚だ。
渚は、小学4年生、ショートヘアーで身長はそれほど高くない。
天真爛漫で前向き、精神年齢が実年齢よりも少し幼い気もするが、拓哉からも、母からも、"あいつ"からも愛されている、いわば仁野家のアイドルだ。
そんな彼女が拓哉を毎日出迎えに来てくれるのだから、拓哉としても嬉しい限りだ。
「いつも出迎えありがとな、渚」
「ううん!渚、おにいちゃん帰ってきてくれてうれしいもん!」
妹と話すこの時間が、拓哉にとってかけがえのない時間であることは、言うまでもない。
「拓哉、おかえり」
「ただいま、母さん」
妹の次に拓哉を迎えたのは、母の沙織だ。
沙織は、拓哉に対し、とても優しい人だ。
常に拓哉の意思を尊重してくれる心の広い人物であり、そんな沙織を拓哉は妹と同じくらい好意的に思っていた。
そんな沙織の趣味はヘアサロンに行き、髪型を変えてくる事。余談だが、今の髪型はロングである。
拓哉と渚と沙織。この3人でいる時間は、拓哉が安らぎを得られる数少ない時間なのだ。
荷物を降ろした拓哉は居間に入り、家族三人みんな仲良く話をしていた。
妹の学校のことや、母の仕事のことなど、話題が無くなることはなく、とてもいい時間なのだ。
クラスの女子連中とかなら、こんな生活がずっと続けばいいなぁ、なんて言うんだろうな。
だが、最近になり拓哉は以前までとは打って変わった感想を抱くようになった。
拓哉はもっと刺激が欲っしていたのだ。
思春期になってか、これまでの日常を変えたい、退屈な日々を終わらせたい、そういった思いが強くなっていた。
毎日が驚きの連続のような…まるで、今までの日常を茶番だと思わせるくらいの刺激が欲しかったのだ。
ある程度リビングで談笑した後、拓哉は自分の部屋に転がりこんだ。
部屋はさほど広くなく、机と椅子、パソコン以外には、いたるところに本や参考書、部屋の隅にタンスが置かれ、いかにもガリ勉の部屋……のようになっている。
だが、実際のところは違う。
置いてある参考書などには手もつけておらず、本はほとんどラノベ。タンスの中には、ゲームソフトやその本体などがしまってある。
まあ言うなれば、ここはガリ勉の部屋ではなく、オタクの部屋に近いのである。
「さてさて、さっそくはじめるかなぁ」
部屋に鍵をかけ、パソコンのスイッチを入れる。
これからは、拓哉の数少ない楽しみの時間だ。
パソコンが立ち上がると、検索ページへ移動し、文字をうち始める。
検索した文字は、"ゲームソフト"。
そう、拓哉の楽しみとは、自分でゲームを購入してプレイすることだった。
そもそもこれは、中1の時に始めたことだった。
このパソコンは中学校の入学祝いとして、部屋に置かれたもので、最初は学習用として使っていた。
だが、使い方を覚え始めてから、このパソコンで動画が見れること、買い物が出来ることを知った。そこからは、勉強ソフトなどには一切手をつけずに、ゲームを購入し、遊ぶようになったのだった。
財布に貯めていたお金には割と余裕があったようで、1ヶ月に4、5本購入する程度なら、難なくこれを続けることができるのだ。
そんなわけで、ゲームソフトを探す。
「お、これ新作でたのかぁ」
「これは面白そうだけど、評価2つ半か…」
「これは、CVがいいなぁ」
特に誰かと話すわけでもなく、ただ独り言を言っているだけだ。他の人からすれば気が狂ったのかと疑いたくなる絵面だが、拓哉からすればいつものことであり、誰も見ていないのだから、気にも留めない。
しばらくの間、マウスを移動させていたが、気に入ったものが見つからない。
(…ま、さすがにこの短時間では見つけられなくても無理はないか…)
仕方がないので、先週買ったRPGの続きをやろうと思っていた時、玄関の扉が開いた音がした。
「あ!おとーさん!おかえりー!」
「ただいま渚。拓哉はいるか?」
「う〜ん、おにいちゃんなら、二階でべんきょーしてるんじゃないかな?」
「ありがとう」
そう言い、やつは階段を上がってきた。
(チッ‥‥)
拓哉は内心舌打ちをした。
すぐさまページを保存し、パソコンの電源を落とす。そして、机に教科書とノートを開き、シャーペンを持つ。
これは、部屋にやつが近づいてきた時用の、いつも通りの動きだ。これにもし熟練度がついたならば、間違いなくMAXになっていることだろう。
「拓哉、開けろ」
「うん」
扉がノックされたので、扉を開けてやる。
そこに来たのは拓哉の父、仁野晃正だった。
歳は40を過ぎていて、白髪頭に厳しそうな目。見るのも嫌になる、頑固親父の顔だ。
そして、こいつこそが僕の退屈の原因だ。
僕の進路を勝手に決め、したくもないことをさせてくる。拓哉に反論の余地はなく、淡々と従ってきていた。結果、大学に行ってもそうなっていくのだろう、という諦めまでついてしまっていた。
拓哉だって、いい高校や大学に行くことが悪い事とは思わないが、それだけで全てが決まるというような思想を持つ人間は好きになれなかった。
そのような親の人形みたいな生き方は楽しいのだろうか。いや、そんなはずはないだろう。自分には自分の人生があるのだから。
それなのにこいつは、拓哉の考えなど理解しようとせず、自分の道理を押し通そうとするのだ。
子供を自分の道具かなにかだと思ってるような人間、それこそが、拓哉から見た仁野晃正だった。