勇者初の魔物討伐 絶望の果てに見たもの
王城から馬車で15程走ると冒険者ギルドのマークが見えてきた。
「皆さんあそこが冒険者ギルドですよ」
「あれが冒険者ギルドか」
「はい、あの看板書かれてある剣と盾あれが冒険者ギルドのマークです。他の街でもあのマークのある場所が冒険者ギルドです覚えておいて下さいませ」
「分かりました。教えていただきありがとうございます御者さん」
「滅相もございません」
それから少しすると馬車が止まる。どうやらついたようだ。
颯汰は馬車から降りてギルドの前に立つ。おっきい建物だな〜と眺めていると、他の馬車も到着したようでクラスメイト達が降りてくる。
「ほえー、ここが冒険者ギルドかー、すげえでけえな」
「やっぱ異世界と言えば冒険者だよな」
「俺も冒険者になれるのかー、若干やる気出てきたぜ」
「やっぱ冒険者で大活躍したら、可愛い子とも落ちか好きになれるんだろうなー」
「マジか、女の子のためなら魔物とだってなんだって戦えるぜ」
女性陣が男性陣を見る目が凄いことになっている。まるで虫けらでも見ているような目だ。
そんな事をしているうちに最後の馬車から騎士団の人達が降りてきた。バラルさんがみんなの前に立って冒険者ギルドの扉を開けて入って行く。颯汰達はそれにつずいてギルドの中に入る。
ギルドの中は活気に満ち溢れていた。酒を飲見にきたり依頼を探しにきた冒険者達が大勢いる。そんな中に颯汰達が入ると、さっきまで活気に満ち溢れていたギルドが急にシーンとなる。そして当然の事ながら冒険者達の視線も颯汰達に集まる。
(なんか注目されてる?いやどっちかっていうとバラルさんに視線が集まってる。……あそっか、この人騎士団長か。いつも会ってるから忘れるところだった)
そんな中にバラルさんは気にした様子もなく、受付嬢の前まで歩いて行く。
「ギルドマスターのライガス入るか」
「は、はいギルドマスターなら奥にいます」
「少し呼んできてもらえるか」
「かしこまりました」
受付嬢はライガスを呼びにギルドの奥へ入って行った。
少し待っているとゴツい男が1人奥から歩いてきた。服越しでも鍛え抜かれた肉体がよくわかる。颯汰その男を見ると、素直にこの人は強いと思った。
ギルドにいた冒険者達は、現役騎士団長だけでなくギルドマスターの登場にこれから一体何が起こるのかと興味しんしんに眺めている。
「久しぶりだなバラル。色々聞きたいことがあるんだが、まずそちらの団体様を紹介してくれないか」
「そうだな。まずこちらの方々は魔王討伐のために召喚に応じて下さった勇者の方々だ」
バラルさんのその一言でざわざわしていたギルドの中が、シーンとした。
「えっとご紹介に預かりました。この度は召喚された者です」
「なんと、あなた方が噂の召喚の勇者様方ですか」
「はい、あなたはギルドマスターのライガス・フォーンさんで間違い無いですか?」
「はい、改めまして、ギルドマスターのライガス・フォーンです。お会いできて光栄です勇者様方」
そういうとライガスは1礼した。
そこでようやく我を取り戻した冒険者達が口々に「えっまじで勇者様」「それにあの人って近衛騎士団長のバラル様」「勇者様カッコいい」「ヤベーサインもらわなきゃ」と騒ぎ出した。
「お前たち少し静かにせい話ができんわ」
そして、ライガスさんの一喝で再び黙った。恐るべしギルドマスター。
それからギルド登録の事について話すと快く了承してくれた。
最初受ける依頼は簡単なものの方がいいという事でアルン街道付近の魔物討伐という依頼を受ける事にした。
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ここはアルン街道
「前衛離脱、後衛魔法発射」
ドーンドーンドーン、颯汰の合図で前衛が離脱し後衛の放った魔法で魔物を蹴散らす。そして直ぐに怪我人へ向けて佳奈が治癒魔法を発動する。誰が見ても完璧なコンビネーションだった。
「よし完璧だな」
「やったね颯汰くんl
「うむ、颯汰殿の指揮も見事でしたぞ」
「いえ、僕はまだまだですよ。勝てたのはみんなのお陰ですよ」
「何言ってんのさ颯汰っち、颯汰っちの指揮がなきゃもっと苦戦してるって」
「……颯汰がいないと、多分もっと怪我人が、でる……」
「お前は俺たちの指揮官だ。みんなそう思ってるからお前について来てるだからお前はもっと自分に自信を持て」
「みんな、ありがとう。俺はいい仲間と出会えて幸せだよ」
「私も颯汰くんと出会えて幸せです。みんなもそうですよ。ふふ」
「ありがとうみんな。ふー、それじゃもう一狩り行くか」
そう言って前衛と後衛に別れて前衛を前にしていつでも戦えるように列を組む。それから約10分後。
「索敵に反応ありゴブリン5体、このまま真っ直ぐ行くと約180秒で接敵します」
「よしみんないつも通りの作戦でいくぞまずは前衛ゴブリン五体を足止めする俺につずけ」
このチームで索敵を担当する小野心の索敵は直径5キロの範囲を索敵することができる。
だが、確かに索敵に引っかかっていたゴブリンだが急に反応が消えた。
「皆さん止まってください」
心の急な静止の声に何事だと足を止める勇者達。
「何かあったのかい心さん」
「颯汰さん今急にゴブリンの反応が消えました」
「何?」
「代わりにさっきまでゴブリンがいたと思われる場所に物凄い魔力反応があります。でも、魔物のようで何か少し違うような、もっとおぞましい魔力を感じます」
「いや、そんなまさかこの魔力」
心と同じ様に何かの魔力を感じ取ったのかバラルは何かを呟いている。
「バラルさんこの先に何がいるんですか」
「これは、間違いない。颯汰殿落ち着いて聞いてくだされ。おそらくこの先にいるのは魔族です。それも幹部クラスです」
「なっどうしてそんな魔族が、はっ、そうか生かしておけば脅威になると判断して早々に僕達を殺しに来たってことか」
「恐らくそうでしょう。勇者殿ここは我々騎士団が時間を稼ぎます。その間に王都にお戻りくだ、ぐあぁ」
突然、バラルは口から血を吐き出した。何が起こった颯汰はバラルを見ると、腹から剣が突き出ていた。そのままバラルはばたりと倒れる。
「苦労して見つけた勇者なんでね、勝手に逃げられると困っちゃうんだよねー」
「お前かバラルさんを刺したのは‼︎」
「んふふふ、ふははははは、一体他に誰がいるんだい勇者の少年」
「佳奈、バラルさんに治癒魔法を、後衛は魔法を用意、前衛は僕につずけ」
「颯汰くん無理はしないで」
「分かってるバラルさんを頼んだ」
「颯汰準備はできたいつでも行ける」
「分かった、行くぞ前衛俺につづ「まあまあ待ちたまえ勇者くん」何だと」
「君は少し勘違いをしている様だから言っておくよ戦うのは僕じゃない。君たちが戦うのはこいつだよ」
パチン
魔族が指を鳴らすと魔族の後ろに巨大な魔法陣が現れた。そしてその魔法陣から何かが這い出てくる。巨大な狼の様で全く違う魔物。身体は超巨大な狼だ、だが頭が3つある。そうそれはまるで、
「ケル、べロス」
「おやおや、勇者くんは物知りだねー。その通りこいつはケルベロス魔界の魔物の1匹だよ。そして、君たちの相手でもある」
「勇者、様、お逃げ、ください」
「バラルさん。無事でしたか」
「勇者様、私などは、ハアハア、放っておいて、お逃げ、ください。ケルベロスは、破滅級の、魔物、この世界、で間違い、なく、ハア、トップクラスに、強い、魔物です。ハアハア」
「無理です。僕たちにはバラルさんを置いて逃げることなどできません。みんな、あいつを倒して全員で帰るぞ」
「当たりメーだリーダー。誰1人やらせるなよお前ら」
「みんな、今使える最強の魔法を全力で放つ準備をするよ。前線組が絶対にチャンスを作ってくれるその1瞬のチャンスをものにして勝つわよ‼︎」
「よし、みんな行くぞー!」
「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」
「ふふっ精々足掻くことだな哀れな勇者達よ」
そういうと魔族は姿を消した。
「前衛俺に続けー!」
前衛組は、颯汰、健斗、雅を先頭に斬りかかった。前衛は確実に魔法を当てるためにケルベロスの動きを鈍らせることができればいい、だから狙うのは、
「全員ケルベロスの足を狙え、1本でもいい深手を負わせることができれば十分だ。行くぞー!」
まずは颯汰と雅が右前脚に斬撃を放つ。だがケルベロスの脚には少し擦り傷ができた程度。
(ぐっ堅過ぎるだが健斗の攻撃力なら)
「はあああああああ」
気合いの声とともに脚に斬りかかる。
ケルベロスの脚から血が吹き出る。
「グガぁぁぁああああああ」
「みんな健斗のつけた傷と同じ場所を斬れ」
颯汰の指示どうり後ろから来た仲間達が足を切り裂いて行く。それを何度も繰り返すと遂にケルベロスのバランスが崩れふらつく。するとケルベロスは急に動きを止めた、いや動けなくなったのだ。足に深手を負わされ動けばバランスを崩し地に寝そべることになるのだから。
だが颯汰が待っていたのはこの時だ。これでケルベロスはもう動けない動きさえ止めてしまえば後は最大威力の魔法を100パーセント当てることができる。
「前衛組りだつしろー!」
その合図と共に前衛が離脱、後衛組の射線から完全に外れた。そして更に颯汰の指示が飛ぶ。
「後衛組の、放てー!」
「その言葉を待ってたよ颯汰っち、みんな行くよ全魔力注ぎ混むよー!」
「準備は出来てるよみんな」
「いつでも放てるよ」
「オッケー颯汰っちカウントスタート」
「分かった、5」
「「4」」
佳奈の声が重なった。
「「「3」」」
雅の声も重なった。
「「「「2」」」」
健斗の声も重なった。
「「「「「「「「「「「「「「「「1」」」」」」」」」」」」」」」」
前衛組全員の声が重なった。
「0、放てー!」
「「「「「「「「「「「「「「光属性最上級リンク魔法ホーリーカノン!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「いっけー!」」」」」」」」」」」」」」」
イメージによって魔力を純粋な光して放つひかり属性最上級魔法の1つホーリーカノンは、ケルベロスの頭へと、ズッドーン、鼓膜を破る様な爆発音が鳴り響く。
「やった、のか」
ホーリーカノンはケルベロスに寸分違わず命中した。誰もが勝ったと思った。
煙が腫れて行くそしてそこにあったのは、全くの無傷のケルベロスそしてケルベロスがいまにも放とうとしている、超高密度な魔力の塊だった。
「全員結界を張れー!」
颯汰の声で我に帰る勇者達。残りの魔力で自分たちを覆う様に結界を張って行く。
(間に合った)
颯汰は結界を張ることに間に合い安堵していた。しかし悲劇は終っていなかった。
ケルベロスから魔力の塊が放たれ、結界と衝突する。そして結界が、破られた。
(生きてる。他のみんなは)
地面に這い蹲りながらも顔を持ち上げみんなを確認する。
(大丈夫まだみんな生きてる)
刹那、颯汰は絶望した。何故ならケルベロスがまた同じ攻撃を放とうとしていたからだ。
(くそ、何が勇者だ結局誰も守れなかった。自分のせいで仲間を死なせることになってしまった)
最後の力で聖剣に握る力を強めるそして全力でケルベロスに向かって投げ放つ。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおお」
聖剣を投げ放つと颯汰は背中から倒れた。
(無様だ。無様だ、でもそれでも、最後に一矢報いてやった。ごめん守れなくてごめん俺に力がなくて、ここまで俺についてきてくれてありがとう)
ケルベロスから魔力の塊が再度放たれた。
終わった。誰もがそう思った。だが、まだ終わっていなかった。
「はは、よく頑張ったじゃねーか。勇者くん」
右手に漆黒の剣を持ち銀仮面を付けた少年が立っていた。少年は漆黒の剣を掲げて言い放つ。
「喰らえ、ツクヨミ」
颯汰は逃げろと叫ぼうとしたでももう声すら出すことが出来なかった。自分のせいで犠牲を増やしてしまったそう思った。だが現実は違った。
なんとケルベロスが放った魔力の塊が少年の持つ漆黒の剣に吸い込まれて行くではないか。
みんな一体何が起こったのか理解出来なかった。死んだ、そう思った、でも生きていた。そして、自分たちを守ってくれた少年は言った。
「よく頑張った。後は休んでろ」
輪廻:おいこら
作者:はいはいなんでしょう?
輪廻:なんで俺が最後しか出てない
作者:まーまーこれもシナリオなんですよわかってください。次回は輪廻さん大活躍ですから
輪廻:嘘だったらお前首な
作者:(怖い輪廻さんまじ怖い)という事
次回:最強のSSランカー