傍観者
アリスとアルヴァが赤の城から出て行くのを俺は目の端っこで捕らえた。
「ビル隊長!しっかり前を…」
兵士の一人が階段を踏み外しそうになった俺に声をかける。
俺はバランスを直ぐ整え、何事もなかったかのように
笑った。
「何?どうかしたの?」
兵士は少しの間、目を見開き頭を下げ
「流石ビル隊長。鮮やかな身のこなし…無礼をおゆる「いいから。早くこの書類アリアに届けちまおう」
俺は横目でその兵士を見ながら階段を上がった。兵士は急いで、俺の後についてくる。
何となく可愛い部下だななんて頭の端で考えた。
「ご苦労だったな。ビル」
アリアは玉座に座り足を組みながら、俺の渡した書類を掲げた。
「恐れ入ります。女王サマ」
にやりと笑い跪き、頭を下げる。
そして立ち上がり部屋を出ようと扉に向かう。
「オイ。」
するとマリアが俺に声をかける。
「なんですか?」
ニコリとわらい振り向くとアリアは
「ちょっと遊んでかないか?」
そういって笑いチェス盤を目で示した。
俺はわざとらしく、深々と頭を下げ
「大変申し訳ありませんが、少々急いでおりますゆえ…」
言うと、アリアは少し不機嫌な顔をして
「そうかよ。早く帰れ」
そう言ってそっぽを向いた。俺はその様子を見て内心笑い小さく会釈し部屋を出た。
「悪いけど、お前」
俺は一人の…さっきの兵士を呼び
「俺、今から行かなきゃいけねぇとこあるからお前マリア様に報告頼む」
早口でそういった後直ぐに走って行った。
何となく
アリスとアルヴァの様子を見ておきたかった。
ただそれだけ。
何とか追いつき俺は木の陰に隠れた。するとアルヴァに抱きつき…いや泣きつき
帰りたくないといっているアリスを見た。
あんな様子のアリスを見たことが無い。
きっとアルヴァだけに見せる彼女の弱さ。きっと彼を信頼し…そして好きだから。
「アリスもちゃんとした女の子だな。」
そう呟いた後、ふっと上を見ると木の上に座りアリスたちを眺める、チェシャ猫がいた。
俺はどうするのかなと思って見ていると
以外にもチェシャ猫は二人をただ見ているだけだった
動かずにだだ、二人を。
「大人になったな…」
内心穏やかじゃないはずだ。
「でも、どうするんだ…アリス。」
お前の気持ち。ホントにそれでいいのか?
なんて
他人の事だし何も俺が考える事じゃねぇし。
「しっかし…問題が多すぎるなー。」
どう解決するのか。
俺は夕焼けの空を見上げながら小さく呟いた。
つづく
ビルから視点。彼は敵でもなく、味方でもない。
どうしようもない役回り。