誓い…約束
「何故よりもよってここなんですか?アリス」
「えー…綺麗だし、綺麗だし、楽しいし…」
わたしがアルヴァに連れてきてもらったのは、
あの綺麗な湖。ずっと前にシェルに連れてこられたところ
隣を歩くアルヴァなんとなく不機嫌そう。
まぁ無理も無い。何故か渋るアルヴァを説得し何とか来たのだから。
「アルヴァ!とりあえず遊ぼうよ!!」
わたしは湖を指差し言った。
「どうぞアリスは遊んでください。僕はここで見てますから」
アルヴァはそういって岸辺に足を曲げ座った。
わたしはその様子にため息を付き靴を脱いでアルヴァの隣に座って足を伸ばし湖につけた。
「冷たい。」
「それはそうでしょう。水ですから」
「ねぇアルヴァ」
わたしはそう言って、アルヴァの顔を見た。
「なんですか」
「あのね…」
目をそらしアルヴァの向こうをふと見た瞬間わたしは目を見開いた。
「あ…あ…っ!?」
両手で口を隠しただ
ただ驚いた。
「何で…これがここに?!」
「……」
アルヴァは振り返らずにわたしの目を見て少し
悲しそうに
頬を緩め
「ああ…
桜
ですか?」
と言った。
「何で桜がここに?!」
「この世界でたった一本だけの桜です。もう直ぐ芽吹き、一斉に花を咲かせるでしょう」
「そんなこと聞いてないよ!!なんでここに!?」
故郷の花木。
わたしは何故かわからないけど
涙が溢れた。
今まで何の根拠も無く
ただ
「元の世界に帰れる」
といわれ続けて夢のような心地で他人事のように考えていた。
今
桜を見て現実に戻った。
ホントにわたしは家に…世界に…「元の場所」に帰る。
「アリス、アリス。」
アルヴァは優しく諭すによう問いかけるように声を出す。
「キミは元の世界に帰りたい…ですか?」
わたしは涙を拭い、必死にぼやける視界の中アルヴァと桜を見続ける。
わたしは
わたしは…。
腕を伸ばしアルヴァの服の裾を掴みゆっくりと肩口に顔を埋め、小さく言う
「…だ…っ」
「何ですか?」
アルヴァはこういう時に限って優しくする。
ずるい。
ゆっくりとわたしの頭をなでるアルヴァの手の温度が逆に悲しくなった。
「い…だ……ッ…ぃ…ゃ…」
「もっと大きな声で言ってください。」
アルヴァの大きくも無くましてや小さくも無い少し冷たい手がわたしの背中を撫でる。
「いや…だ…っ…いやだ…よ…帰りたくない。
…みんなと一緒に
…笑って…泣いて…怒って…喜んで
…過ごしたい。もっと…みんなと…いたいよっ…」
そこまで言うと、アルヴァは小さく笑って
「やっと…やっとキミの心の声を聞くことができた。」
小さく呟いた。そして
「大丈夫です。…いつでもキミの傍にいます。笑うときも、泣くときも。怒るときも、喜ぶときも…僕の誓い…いいえ。約束です。あの桜の木とキミに約束する。」
そう笑顔で言った。わたしはアルヴァからそっと離れ、小指を出して
「約束…ね?」
そう言った。
するとアルヴァも小指を出しわたしのと絡め頷いた。
誓いがたてられた。
ちいさな
弱い
白兎と
ちいさなちいさな
弱い
女の子
の
誓いが
約束が。
この誓い
破られることなかれ。
小さな
願いを
私たちにのせて
つづく