10/14
暴動
喧騒、怒鳴り声、悲鳴、嗚咽、わたしが忘大和で出くわした光景は、現実世界で毎日垂れ流されていた映像とは似ても似つかぬ物で、わたしは暫くこの争いを端から見つめる事にした。と言うより、見つめる事しか出来なかった。
争い合ってるのは二つの集団。一方は白、もう一方は黒の衣服に身を包み、各々が手にバットやヘルメットを持ってそれを敵対する相手に見舞っている。
「何……これ」
わたしの口からぽろりと溢れた言葉は喧騒の中に吸い込まれる。アンバーの話では名前を決めるとの事だったが、何処でどの様に決めるのか、わたしには分からない。
「サマンサ?サマンサ?何処なの?」
わたしが彼女の名前を呼んだ時、鈍い音がわたしを襲った。多分石ころか何かの角材。頭に激痛がはしったかと思うと、辺りがぼやけ始めた。喧騒が次第に遠退き始める。意識が、一刻も早くサマンサと合流しないとならないのだが、どうやら立ち上がれそうにない。