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ワールド・フラグメント  作者:
第十章 複製
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「遅い! 監察官長を待たせるなんて、随分と偉くなったじゃん。十分の遅刻なんだけど」


「いや、八分……」


「何か言った?」


「いえなんにも……」


「八分も十分も一緒でしょ」


「聞こえてんじゃねーか!」


「口の利き方!」


「……すんません」


「それに八分でも遅刻は遅刻! 言い訳してるところを見ると、あまり悪いと思ってないみたいだね」


 アリアは腕を組んだまま、遅刻してきたシュタルクを睨みつける。


「で、用ってなんですか?」


 シュタルクが監察官長の部屋のソファに腰を下ろす。


 彼の目の前にはローテーブルがあり、その上には紅茶の入ったティーカップが置かれていた。


「冷めちゃったじゃん……」


「え?」


 ぽつりと呟いたアリアの台詞に、シュタルクは聞こえなかったのか聞き返す。


 シュタルクの前に置いてある紅茶は、時間通りに来ると思ってアリアが用意したものだ。だが、もうぬるくなってしまっていた。


 アリアはティーカップを一瞥する。


「……で、どうなの? SGFの方は」


「ああ、そっちなら大丈夫ですよ。いつも通り、うまくやってます」


「リントくん、元気?」


「元気です。毎日一緒になって訓練受けてて。まだアリスペルの扱いには苦労しているみたいですけど」


「クローンの製造って、まだやってるんだよね?」


「そうですね。世界中から希望者殺到なんで。ただ、まだ一年間で作成できる個体数に限界があるので、スピード自体は進歩してないような気がしますね」


「そう……」


 アリアはそこで一度区切り、目を伏せた。


「リントくんは自分がクローンだってこと、まだ知らないの?」


 暫し沈黙が流れる。それが答えだった。


「まあ、知らなくてもいいことですからね。……用っていうのは、そのことですか?」


「うん……。それと最近あんまり監察省に顔出さないから」


「ちょうど今SGFの方が忙しいんで、落ち着いたらちゃんと監察官としての仕事もしますよ。それじゃ次の予定が詰まってるんで、ここで失礼します」


 シュタルクは用意された紅茶に口をつけることもせず、監察官長の部屋から出て行った。


「はあ……」


 大きく溜息をつくアリア。ソファから席に戻り、電話を手に取る。


「監察官長のアリア=リズリードです。研究官長のノエル様はいらしゃいますか?」

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