078
ジャンヌは監察所を出て、目の前で炎や氷を吐き散らし暴れる白いドラゴンを見上げた。瞠目し、息が止まりそうになる。口元を両手で押さえ、喉を震わす。
「そんな、まさか……」
子供の頃リントが見せてくれたシルファよりも更に大きい。およそ二倍はある。濁った紫色の双眸が、狂気を宿しているように見える。火炎を吹き、吹雪を吐く様は、ジャンヌの知るドラゴンとは似ても似つかなかった。
ESOの夜部隊のメンバーが勢揃いし、ジャンヌが来るのを待っていた。メンバーは十人ほどだが、皆腕の立つアリスペル使いである。
本来であれば再会を喜ぶところだが、白銀の飛龍を前にそんなことはできない。
「な、言ったろ? 俺たちだけじゃどうにもならないって」
「………………」
破壊活動を続けるドラゴンを目で追いながら、ジャンヌは右手首に嵌っていた髪ゴムを外した。それで長く揺らめく金髪を高い位置で一つに束ねる。
「みんな、お願いがあるの」
メンバーたちは皆、ジャンヌを真剣な表情で見据えている。
「私をアシストしてくれる?」
ニッと笑って、キルスがジャンヌの肩に手を乗せる。
「我らが〝神速の魔女〟様の頼みとあらば。なあ、みんな!」
オォ――!! と勢いのいい反応が返ってきて、キルスがジャンヌに微笑みかける。
「頼むぜ、隊長さん」
その言葉にジャンヌはふっと笑って、巨大なドラゴンに標準を合わせた。
「行くわよ!」
ジャンヌは声を張り上げ、ドラゴンに向かって走りながら、具体的指示をメンバーたちに与え始めた。