077
「今すぐこの状況を説明して!」
アリアは第一研究所を出てすぐ、遠くで何か白いものが蠢くのを視界に捉えた。見たこともない形をしている。だが、ここからでは遠くて正確に把握できない。
横でシュタルクが苦々しい表情のまま固まっている。アリアは苛立ちながら、腕を伸ばして彼の胸座を掴む。
「シュタルク、何か知ってんでしょ!? いいから洗いざらい吐いて!」
「……実は――」
渋々シュタルクは口を開いた。
おそらくあの白い生物はドラゴンで、友人のものかもしれない。もしそうなら、友人の身に何か起こったのかもしれない。
「チッ」
アリアは不服そうに舌打ちを鳴らす。中央区へ向かおうとしてシュタルクに背を向けた彼女は、だがすぐに足を止めた。左の道からバタバタと乱雑な音を響かせ、必死に走ってくる人物に眉を顰める。
「セフュ!? あんた、どうしてこんなところにいるの!?」
アリアの台詞に、なぜ彼女がセフュを知っているのかとシュタルクは問いたかったが、そんなことは後回しだ。シュタルクは苦しそうに空気を吸い込むセフュの両肩を掴む。
「リントだな!? 何があった!?」
「それが――」
アリアとシュタルクは瞳孔を拡張させ、セフュの話に息を呑んだ。
〝人体蘇生術式〟。そんなものがこの世にあるわけがない。
アリアが背後にいた監察官の一人を睨みつけ、声を荒げる。
「すぐに鉄道会社へ連絡。あたしたちが乗る第一研究所前駅からクリスタル自然公園駅までの線をストップさせて! それであたしたちが乗る電車だけ、直行運転にするように言って! 急がないとクビだからねクビ!!」
「は、はい!!」
命を受けた監察官は慌てて第一研究所内に入って行った。
アリアは先ほどより大きな舌打ちを残し、シュタルクは、くそっ! と毒づいて、セフュを含めた三人はクリスタルリングへと急行した。