066
捕らえられている身にしては、随分と贅沢な生活を送っているなとジャンヌは思っていた。物凄く暇であることと、自由に外に出られないことを除けば、快適だと言える。
外では今どんなことが起こっているのか、自分が監察所へ連行されてから世界はどのように変化したのか、ESOのメンバーは今頃どうしているのか。
ジャンヌは毎日そんなことに思考を巡らせる日々を送っていた。今日も例外ではなかった。
昨日と同じように、たまにストレッチをして体を動かしたり、ぼんやりと考え事をしたりしていた。だが、時間はそう同じようなことばかりを繰り返させるわけではないようだ。
ノック音もせず、扉がカチャリと動いた。そのままギィーとゆっくり開く。
隙間から素早く部屋の中に入り込み、静かに扉を閉めた男。彼はジャンヌを見るなりニッと歯を見せて笑った。
「やあジャンヌ、元気だった?」
「キルス! どうしてここに!?」
思わず大声を上げたジャンヌに対し、キルスは慌てて口元に人差し指を立てる。ジャンヌも急いで両手で口を覆った。
「どうして俺がここにいるかって? そんなの決まってんだろ。お姫様を助けに来たのさ」
「そんなわけないでしょ。ふざけた話はいらないわ。で、どうしてここにいるのよ」
少しだけ頬を染めながら言うジャンヌに、キルスは先ほどまでの表情とは一転、真顔で彼女を見つめた。
「街が崩壊してる。あんな大物、俺たちだけじゃ無理だ。アリスペルのスペシャリストであり〝神速の魔女〟の異名を持つジャンヌもいないと」
その話にジャンヌは眉を顰める。
「どういうこと……?」
ジャンヌは詳しい説明を要求しながら、キルスと一緒に部屋から抜け出した。