表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・フラグメント  作者:
第七章 計画実行
60/111

060

 何人かの情報屋仲間にリントの外見を説明して回る。シュタルクがこの場にいないからこそ自由に動ける。彼がいなくて良かったと、仲間に協力要請を仰ぎながらセフュは思った。


 リントはまだ見つかっていない。安否は不明。


 セフュは東区を中央区方面へ移動しながら考える。


 リントは明らかに料理の仕掛け中だった。彼は食事を作る際、献立を考えてから必要な食材をメモして買いに行っている。シュタルクからお金が出ているから無駄なものを買わないようにするためだろう。そのため、リントが料理中に足りない食材を出すということは考えづらく、自分から外へ出て行くことはないと予想できる。それにも拘らず、彼は部屋にいなかった。


 部屋が荒らされた形跡もなく、金銭も取られていなかったことから、空き巣や強盗の類ではないだろう。


 リントはシュタルクから、インターホンが鳴ったときは覗き窓から人物の確認をするように念を押されている。知らない人物が訪ねて来た場合、扉を開けなくていいと言われていた。宅配業者を装った詐欺などもあるからという理由で、究極居留守を使うようにまで刷り込まれていた。その徹底ぶりは監察であるシュタルクならではだろう。


 今までの考察を繋げると、リントは自ら扉を開けたということになる。それはつまり、彼の知る人物が訪ねて来た可能性が高いということを意味する。


 フロンテリアにいるリントの知り合いといえば、自分たちくらいしか思い当たらない。勿論セフュは違うし、シュタルクから聞いた話に依るとジャンヌはまだ監察所にいるらしいから白。まあ彼女は〝神速の魔女〟であるのだから脱出くらいできそうなものだが。


 残るはシュタルクとルカ。シュタルクが自作自演でリントをどこかへ拉致、もしくは殺害した可能性もある。だが目的が分からないし、どうせ行動するなら昨日でなくても、いくらでも機会はあったはずだ。


 ルカはまだフロンテリアでリントに会っていないはずだし、彼の居場所も知らないはずだ。だがもし彼女がリントの居場所を突き止めて連れ去ったとして、こちらも同様、目的が分からない。彼女は第一研究所に勤めている。今そこはシュタルクたち監察に乗り込まれているはずだ。ルカの元にリントがいるなら、そこで見つかるだろう。


 可能性はかなり低いが、リントが自ら姿を消したという線も捨て去ることはできない。折角フロンテリアに来たのに、まだ街をあまり見て回れていないのだ。料理をしている最中、突然嫌気が差して街へ繰り出し、観光したら戻って来るということもないわけではないと思う。


「これじゃ、なんでリントがいなくなったのか分かんないなぁ……」


 溜息交じりに独白すると、頭上でパサッパサッと空気が掻き回されているような音がした。不思議に思い、セフュは首を上へ動かし、目を瞠った。


 セフュが視界に捉えたのは、太陽の光を受けて輝く白銀のドラゴン。背中の羽を必死に上下させ浮遊しながら、真紅の円らな瞳をセフュの顔に近づける。


「シルファ!?」


 その声にシルファは頷くようにキャッキャッと喉を鳴らした。


 人通りは多くないとはいえ、誰かに見られては厄介だ。セフュは家の間の隙間に入り込み、シルファを見やる。


「リントは?」


 するとシルファは何かを訴えるように、キィキィと鳴いた。それから東へゆっくりと飛んで行き、そこで一度セフュに振り返った。ついて来いと言わんばかりだ。


 リントがシルファと一緒にいないのは相当おかしい。やはり彼は何らかの事件に巻き込まれたと見て間違いない。


 そしておそらく、リントがいなくなってからシルファがセフュたちに知らせるまでにタイムラグがあったのは、シルファも実は捕らえられていて脱出したとか、自力でリントを助け出そうとして自分ではどうにもならないと判断したからとか、そんなところだろうか。


 でもシルファが吐き出す炎なら、捕まってるリントを助け出すくらいできそうだけどなーと思いながら、セフュは首を捻る。


 炎を出せない状況にいた? シルファが攻撃できないような相手だったとか? リントがシルファに命令できないような状態だったとか?


 しかし今ここで考えても仕方がない。状況的に見て、事態は緊急を要する。


「シルファ、案内して。君について行くよ!」


 了解とでもいうように羽を二回素早く上下させ、それからシルファはセフュの速度を考慮しながら進み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ