表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・フラグメント  作者:
第十章 複製
107/111

107

 リントはエルクリフの部屋で蹲っていた。


 頭痛が治まらない。脳の奥で木霊する鳴き声は、徐々に大きくなっていく。それに加え、脳内に不思議な映像が流れてくる。


 どこか見たこともない島で、見たこともない生物とともに暮らしている。だが穏やかな日々は失われ、仲間が殺されていく。白い生物の上に乗って上空を翔けながら、空に浮かぶ光のゲートに手を伸ばすが届かなかった。


 断片的な映像が流れくる。頭痛と相まって、リントはそれが何かを考えることができない。


 だが確かなことが一つあった。それはその白い生物がシルファという名前だということだ。


 続けて違う映像が流れてくる。


 今度は随分と高くから街を見下ろしている。シュタルクたちは自分を心配そうに見つめているが、他の人たちは自分に攻撃を放ってきている。最終的に自らその攻撃を受けに行っている。


 そこで映像は途切れた。併せて頭痛も瞬時に消え失せる。


「なんだったんだ今の……」


 起き上がったリント。その直後。


 背後から鳴り響いたバリンという騒音と、突風に身を屈めた。


 次いで鳴り響く咆哮。


 それを聞いたリントは、俯いていた頭を上げて振り返った。


 涙が出るほど懐かしいと感じる。


「シルファ……?」


 白銀のドラゴンは、肯定するようにギヤアーと鳴いた。SGF本部の天井と窓ガラスを突き破り、リントの眼前に大人しく佇む。


 リントは近づき、シルファの顔に抱きついた。するとシルファに触れた瞬間、リントは血液が沸騰するような感覚に襲われた。


 さっきまでの映像はオレの記憶だ。オレはシルドラ族で、シルファと一緒に暮らしていたんだ。


 そう確信すると同時に、シルファと意思疎通ができるようになった。言葉では言い表せないが、なんとなくシルファの思っていることが分かるのだ。


「リントくん!」


 ドアが乱暴に開けられ、エルクリフが慌ただしく入って来る。


「無事だったかい!?」


「はい!」


 エルクリフはシルファをじっと見つめていた。それからリントに近づく。


「リントくん、君は〝時空移動〟という言葉の意味を知っているかい?」


 勿論知っている。


 リントは首肯する。


「やはりそうか。ドラゴンと一緒にいてこそシルドラ族だ」


 更にエルクリフがリントに近づく。そして彼はリントの両手を取った。


「お願いがあるんだ。〝時空移動〟のゲートを開いて、私を前回と同じ時空へ転送してくれないかい?」


 リントは息を呑んだ。とても冗談を言っているようには見えない。


「〝時空移動〟は膨大な魔力を使います。オレだけの力で開けるかどうか……。それに、転送先は選べないし、失敗したら時空の狭間に閉じ込められるリスクだってあります。あと、これは世界改編が行われるので、そう簡単にやっていいことじゃありません」


「それは百も承知だ。だが、どうしても開いてほしんだよ」


 リントは黙ってシルファを見つめる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ