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ニュークエストST

 ギルド『ナナム』の活動範囲はコソカナの街近辺に限られていた。

 彼女達の操るキャラクターは低レベルなうえ、毎日のようにどっぷりとイロモをやり込んでいた俺とは違い、一度あたりのプレイ時間もそう多くはない。

 現実世界でやりたい事、やらなくてはならない事も多いのだろう。全くイロモ世界を訪れてこない日すらもあった。


 レベル、プレイ時間の問題から遠出をしようにもなかなかできない現状ではやれる事も自然と限られてしまう。 

 コボルト、オークなどの亜人系から、蛇だ蜘蛛だ暴れ猪だの雑魚モンスターを狩る毎日。


 俺としては少々冒険感に欠けていて物足りないものがあると感じていたのだが、プレイヤーである三人の少女の方はこんな活動でも楽しんでいるらしい。


 三人とももとからゲーマーというわけではない。

 自分と同じ感性なはずもないのだろう。


 効率などはあまり深く考えずにプレイする彼女らに、俺は邪魔にならない程度のアドバイスを送りながら、ナナムのギルドガーディアンとして冒険に付き従った。


 そんな冒険の中でも、もと上級者とそうでない者の活躍の差は出てしまうものだ。

 最初のコボルト戦でこそ大失態を犯した俺だったが、一度このイージスという体に慣れてしまえば、あとはこっちのものだった。

 知識と経験を活かして低レベルとは思えぬ活躍を続ける俺。

 経験値を等しく分け与えあう旧来のゲームとは違い、イロモでは活躍の差は成長の差となり、俺のレベルは面白いように上昇した。

 そしてあっと言う間に宝条のPCライナのレベルに追いついてしまう。


 今のライナのレベルは4から5に上昇しており、初心者レベルの最上限になったばかりであった。

 そのレベルに俺はわずかな期間で追いついていたのだ。


「そろそろこの辺のクエ以外も受けないとなぁ」


 酒場『赤い宝石亭』の掲示板に貼られた報酬の少ない低難度クエストを眺めながら宝条が言った。


「私達も強くなったもんね」


 姫岸さんのこの言葉に宝条の反応はやや鈍い。


「ん、まぁそれもあるけど……、あたしがレベル5になっちゃったじゃん。だからさぁ、この辺のクエ受けてもレベル上がんないみたいなんだよねぇ」


 イロモの少々特殊なレベル関係のシステム。


 初心者レベルである5に達するまでは、効率さえ考えないのなら魔物の強弱問わず狩り続けていればよく、その上昇速度もその後のものと比べれば非常に速いと言える。

 旧時代のRPGゲームと同じ感覚で上げていけるレベル帯になっているのだ。


 だが5より先、6以上のいわゆる中級者レベルに入ろうとするならちょっとした制限が加わってきてしまう。

 イロモプレイヤーの多くが属する6から10のレベル帯では、基本、適正以上のクエストなりである程度の強さの魔物を狩って活躍しないと経験値が入ってこないようになっており、いくら低難度のクエストをこなしながら初心者用の雑魚モンスターを狩ろうと取得できる経験値は0。

 百年、千年繰り返そうがレベルが1たりともあがらなくなってしまうのだ。


 ぬるく遊びたいだけの人間にとってはなかなかに厳しい制限であったが、これでもレベル11以上になる為の、そしてそれより先に上げていく辛さに比べれば、天国のようなレベル帯であった。


「じゃあいつもとは違うクエストを選ばないとね」

「そのつもりだけど、どれにすっかなぁ。あんま難しいの選んでも失敗するだけだし」


 悩める宝条にポム嬢が助言する。


「ドルボ山のクエストがいいかも……」

「ドルボ山? ええっと……、ああ、これか」


 掲示板に貼られた数々のクエストからドルボ山の文字を見つけ出す宝条。


「ドルボ山に生えてるロプラスの花を摘んできて欲しい、か。ドルボ山ってどんなモンスターが出るんだ?」

「大食い蛇に、まだら暴れ犬、花の生息地にはハイオークが出たりするらしい……」

「ハイオークかぁ。結構強かった記憶があるけど、今のあたしらなら大丈夫かな」

「たぶん……」


 そう言って宝条とポム嬢の二人が俺の方を見る。


 レベル1でコボルトに惨敗していた頃とは違い、冒険で活躍を重ね、ライナのレベルに追いつくまで成長した今では、俺は彼女らからイロモ世界を知る者としてある程度の信頼を得ていた。

 とはいっても、前世ではカナイ国で活動していた俺にドルボ山の詳しい知識などありはしない。

 だがしかし、ポム嬢の口から出てきた魔物達『大食い蛇』『まだら暴れ犬』『ハイオーク』、これらの魔物についての知識ならば持っている。


 俺は今のパーティーの強さと、予想される魔物の手強さを冷静に判断したうえで答える。


「ハイオーク程度なら大丈夫だと思うよ」

「んじゃあ、このクエにすっか」


 ドルボ山のクエストが書かれた羊皮紙を掲示板から剥ぎ取る宝条。

 そして店主からクエスト委任のサインを貰い、酒場の出口へと向かうのだが、その途中で足が止まる。


 羊皮紙に描かれたドルボ山までの地図を見ながら、彼女は言う。


「結構、距離あるな。山のふもとに着くまででも最短で四十分くらいか? モンスター出る事考えれば、もっと時間掛かるだろうし、どうする?」

「休みだし問題ない……」

「私も今日は大丈夫だよ」


 休み。休日。

 少女達の現実世界での話。


 食事に睡眠、削れる時間を削るだけ削っていた前世の俺とは違い、彼女達が平日にイロモ世界で遠出となる冒険をする事などまず不可能。

 それに平日だけでなく休日だろうと、何かしら用事があれば、それだけでプレイ時間は限られてしまう。


 今日については運が良いと言うのは大袈裟だろうが、三人とも十分に時間を取れるらしい。


「よし、久々の新クエストだ。気合入れていくぞ」


 宝条の言葉に頷き、俺達は酒場を後にした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



◇◇◇イージス◇◇◇

レベル5:ギルドガーディアン:人間

MAXHP55:MAXSP15:MAXMP5:信仰なし

赤0:青0:緑0:黒0:白0


力:60

知力:54

頑強:60

俊敏:62

器用:54

魔力:56

精神力:60


◇スキル◇

必殺の一撃

防御態勢(我慢):防御にボーナス、攻撃、移動にペナルティ


など


◇装備◇

『因果の剣』『戦士の鎧』『クイックブーツ』


◇◇◇リリナ◇◇◇(前回から変化なし)

レベル2:僧侶:人間

MAXHP14:MAXSP0:MAXMP20:ププ神

赤0:青0:緑0:黒-5:白5


力:35

知力:58

頑強:35

俊敏:35

器用:50

魔力:58

精神力:58


◇スキル◇

ヒールLv1:基本的な回復魔法

キュアLv1:基本的な状態異常を回復

聖なる力:アンデット系に特殊ダメージ


◇装備◇

『見習い僧侶の白杖+1』『クルル族のローブ+2』『精神力の指輪』『魔力のネックレス』


◇◇◇ライナ◇◇◇

レベル5:ウォリアー:人間

MAXHP50:MAXSP10:MAXMP0:ロロ神

赤1:青1:緑0:黒1:白-1


力:62

知力:40

頑強:53

俊敏:52

器用:53

魔力:36

精神力:36


◇スキル◇

必殺の一撃

開錠・罠解除Lv1

二連斬:二回攻撃、ダメージにペナルティ


◇装備◇

『鉄の剣+2』『戦士の鎧+1』『バックラー+2』『猟師の指輪』『盗賊のお守り』


◇◇◇ポム◇◇◇

レベル4:青魔術師:人間

MAXHP28:MAXSP0:MAXMP20:信仰なし

赤1:青5:緑1:黒1:白-5


力:36

知力:62

頑強:36

俊敏:36

器用:51

魔力:58

精神力:57


◇スキル◇

イファ:炎の攻撃魔法

イアス:氷の攻撃魔法

トイトイ:冷たい粘着性の魔法の糸放つ

ルベラ:対象のステータスを調べる。鑑定

クルカ:暗闇を照らす照明魔法


◇装備◇

『魔術師の杖』『魔術の帽子+2』『魔術師のローブ+1』『よく見える眼鏡』

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