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ポーシル草

 俺達がポーシル草の発見地点に戻ってみると懸念していたスパイクブル達の姿はなかった。

 けれども代わりに人の姿があった。

 その場に生えていたはずの薬草をちょうど手にする女PCの姿が……。


「げっ」

「どうしたんだよ」

「いや、あれ……」

「あっ!! それあたしらの!!」


 予想外の光景にとっさに大きな声をあげる宝条。

 その声でこちらに気づいたらしく女PCが振り返る。


 そんな彼女に対して宝条は開幕早々直球で食ってかかっていった。


「おい、あんた。その薬草あたしらが先に見つけてたんだけど?」


 当然の相手の方は何だこの女はという怪訝な表情を浮かべている。


 喧嘩腰な態度は相手の反感を煽るだけだ。

 宝条と違って俺はできるだけ丁寧に事情を説明するよう試みた。


「すいません、俺達ポーシル草を探すクエストを受けてトーマ山に来ていて……、実はそのポーシル草は二十分ぐらい前に俺達が先に見つけてたものなんです。けど周囲にスパイクブルの群れがいて、その処理が先だってことで場所を移して戦っていたら思ったより時間がかかちゃって……」


 俺の話に摘み取ったばかりの薬草を一瞥しながら女は言う。


「つまり、その話を信じてこのポーシル草を譲れとあなた達は言っているの?」


「そうだよ」

「他の場所も探し回ってたんですけど全然見つからなくて、やっと見つけたポーシル草がそれなんです」


 精一杯訴えるが、やはりまだ彼女が向ける視線には疑いの色があからさまに混じっていた。


「何だよ、あたしらが嘘ついてるとでも言いたいのかよ。見ろよ、ほら、足跡があるだろ、足跡が」


 宝条が大地を指差す。

 あれからまだ時間がそれほど経っていないこともあって、その場所にはスパイクブル達が踏み荒らした跡がくっきりと残っている。


「これがあたしらの話が真実だって証拠だよ」


 報酬金の多さもそうだが、何より時間をかけてようやく見つけたポーシル草というだけあって宝条も必死だった。

 その必死さに押されるわけでもなく相手の方はというと淡々と応じる。


「たしかに、スパイクブルの足跡だわ」

「なっ。これであんたも先にあたしらがそいつを見つけてたって理解できたろ?」

「ええ」

「だったら……」

「けどごめんなさい。悪いけれどこのポーシル草を譲るわけにはいかない」

「なんでだよ!!」

「先に見つけたのはあなた達かもしれない。でも先に手に取ったのは私だから」

「おいっ!! 横取りしようってのかよ!!」

「これも仕事だから、ごめんなさい」


 静かに謝罪の言葉を述べながらも彼女は手にした薬草を譲る気は全くなさそうであった。

 もちろん宝条が素直に引き下がるわけもなく、再び噛み付いていこうとしたその時だった。


「お~い、何をモメているんだぁ?」


 どこかで聞いた覚えのあるような男の声がする。


「あっ!!」


 声の主を見てびっくり、そこには先日会ったばかりのあの男が立っていた。


「トミタロウ!!」

「あぁ!! お前ら!!」


 思わぬ再会に俺達だけでなくトミタロウの方も驚いていた。

 彼の傍らには先日とは異なる女性陣の姿が見える。


 当然彼女らもトミタロウに仕えるメイドさん達なのだろう。

 みんな綺麗な人ばかりだが、そのうちのひとりがこちらを一瞥しながら己の主に尋ねる。


「坊ちゃまお知り合いの方ですか?」

「昨日話してた奴らだよ!! クソ生意気な奴らだったって話したろ」


 どうやらトミタロウの奴は昨日のことを好き勝手自分達のメイドに話していたらしいが、そんなことよりも気になるのは……。


「なんでお前がこんなところにいるんだよ」


 宝条の問いにトミタロウは言う。


「それはこっちのセリフだ!!」

「あたしらはクエストで来てんだよ」

「クエスト?」

「ポーシル草を探してこいって酒場のクエスト」

「むむっ、ポーシル草とな!!」

「ああ。苦労して探して、やっと見つけたっつうのに横取りくらいそうで……、てかこっちのもお前のメイドだろ? だったらお前から言ってあたしらに返すよう話つけてよ」


 と、宝条がトミタロウに頼むが返答は案の定というか予想の内というか、俺達にプラスになるようなものではなかった。


「……やだね」

「は?」


 唖然とする宝条を無視してトミタロウは言う。


「おいっ、ミサキ。ポーシル草入手できたってホントか?」

「はい、この通り」


 主であるトミタロウの問いに女PCミサキさんはポーシル草をよく見せるようにして返答した。


「この通りじゃねぇよ。それはあたしらが先に見つけたんだって!!」

「……うむ、でかした」

「でかした、じゃねぇ!!」


「次の給金には色をつけるよう、僕が言っておいてやろう」

「ありがとうございます」

「ありがとう、じゃねぇ!!」


 自分を無視して進められる主人と従者のやり取りに抗議の声をあげつづける宝条。

 かなり必死だ。


「うるさい奴だなぁ」

「うるさくねぇ!!」

「これはミサキが手に入れたものだろ。お前達がケチつけるなよ」

「だから!! それは邪魔なモンスター追い払うのに、場所移して戦ってたからで。この女だってそれは認めてんだって!!」

「関係ないね。先に見つけようが後に見つけようが、入手したのはミサキなんだ。つまり僕のものってことだ」

「てめぇ……」

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