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協力要請

 美味しい話には裏がある。

 わかりきっていたことだけど既にアイテムを受け取ったてまえ、ハセ達の話を無視するわけにもいかない。


「なんでございましょう……」

「たいしたことじゃないんだけどさ、ちょっと頼みたいことがあって」


――やはり、きたか……。


 世の友情はギブあんどテイクが基本。

 一方的に自分だけが得をしようだなんて、そんな都合がいい話あるわけがない。


「頼みたいこと……」

「まぁまぁそう構えなくても大丈夫、何も無理難題を押し付けようってわけじゃないんだ」


 そんな事言われても、数万ゴールド分の見返りを要求されるとあっては、自然と表情も硬くなろうというものですよ。

 

「で、具体的には俺に何をしろと」

「う~ん、そこなんだけど、これはイージス個人につうか、ギルド『ナナム』に頼みたいことなんだよなぁ」

「ギルド『無明に宿る赤き黄金の月団』からギルド『ナナム』に対する協力要請にゃ!!」


「『ナナム』に協力要請?」

「俺達と一緒にダンジョン潜ってくれる人を探しててさ」

「それもただのダンジョンじゃないにゃ。アイル達が見つけた新ダンジョンにゃ!!」

「新ダンジョン!? マジで?」

「マジにゃ」


 イロモ世界では数えきれないほどのダンジョンが存在している。


 クエストの指定先になっているダンジョンもあれば、定期的に湧くモンスターの狩場として美味しいダンジョンもある。

 だが中には、苦労するだけで何のうまみもないクズダンジョンも存在しており、辺境でプレイヤー達が見つける新ダンジョンの多くはそれに当たる。

 アイル達が見つけたという新ダンジョンとやらも、十中八九はクズダンジョンというオチだろう。


 とはいえ、誰も足を踏み入れた事のないダンジョンというのはやはりロマンがある。

 罠をかいくぐって辿り着く財宝部屋や、ダンジョンの奥深くに潜むボスを倒してゲットするレアアイテム。

 新ダンジョン攻略で一発当てたプレイヤー達が、ゴールドの山や誰も手にした事ない新アイテムをゲットしたなんてことも聞く話ではある。


「ギントが偶然見つけてさ、試しに何回か俺達だけで潜ったんだけど、全然駄目。敵が強くてなかなか奥まで進めないのよ」

「それで俺達に協力しろと?」

「そういうこと」


 手強いモンスター達が巣くうダンジョンの攻略に参加する。

 死からの復活があるイロモ世界ではあるが、ダンジョン奥深くで全滅しようものなら所持アイテムのロストぐらいは覚悟しておかなくちゃならない。


 数万ゴールド分の装備の見返りとはいえ、下手すりゃ赤字だ。

 アイテムロストを警戒してわざと安物装備で揃えるという手もなくはないが、それじゃあ余計に攻略難度もあがってしまう。


 それに何より気にかかるのは……。


「けどハセ達が潜って無理ってなると、そこに『ナナム』が加わっても戦力的にはそこまでの強化にはならないと思うんだけど……」


 暇があれば毎日のようにイロモを遊び続けてきた『無明に宿る赤き黄金の月団』のメンバー達と違い、『ナナム』に所属するのはレベル10にもなっていないエンジョイプレイヤー達とその御守りNPCである俺だけだ。

 そんなのを四人ばかし追加したところで、ハセ達が苦戦する新ダンジョンの攻略とやらがはかどるとは俺には思えない。


「そこなんだけどさ」


 その疑問の解答を示すようにハセは言う。


「できれば『ナナム』からも戦力になりそうな人に声をかけて欲しいんだよ」


――なるほど、そういうことか。


 オグさんやアイルと挑んだ宝探しには、レティリアさんも参加していた。

 当然彼女がイーゴスでも有数のギルド出身の超上級プレイヤーだというのはアイル達の知るところである。

『ナナム』とレティリアさんとの関係が非常に友好的なものであることも理解しているだろう。


 つまりは最初から『ナナム』をダンジョン攻略の戦力として期待していたわけではなく、その人脈にこそハセ達は期待していたのだ。


 数万ゴールドでトッププレイヤー達の協力得られるってのなら、たしかに悪くない話なのかもしれない。


「そういうことなら当てがないわけじゃないし、声はかけてみるけど相手の都合もあるから確約はできないよ」

「わかってる。こっちもこっちで助っ人の誘いはかける予定だけど、なにぶん当てが少なくてさ……」


 カナイの田舎街で活動していてもできあがる人脈なんてのはたかが知れている。

 すでに俺の頭の中にはハセ達が頼るであろう他のギルドの面々の顔が思い浮かんでいた。


「それにしてもいろんな人に声をかけないといけないほど、やばいダンジョンなの?」

「難度だけでいったら悪名高い『ヒロスの地下迷宮』並かも」


 カナイやイーゴスの酒場にあるクエスト掲示板に定期的に張り出される事のある『ティトの娘救出依頼』。


 このクエストは一見、他のクエストよりも頭一つ、二つ抜けた報酬金や報酬アイテムの美味さから、プレイヤーとしては是が非でも受けたい依頼に見えるのだが……。

 ティトの娘の救出の為に向かうことになるダンジョン『ヒロスの地下迷宮』の難度が非常に極悪で、何も知らないでクエストを受けたPC達が地獄を見ることになる罠クエストとして有名だった。


 その地獄っぷりを知るプレイヤー達の多くはこのクエストが張り出されていても『ま~た、ティトおじ娘さらわれてるよ……』と、呟くだけで基本無視している。


「えぇ……、そんなにキツいの?」

「大キツだよ、マジでさ。入り口付近は雑魚モンスターが多いだけなんだけど、ちょっと進んだら『ホーンデビル』や『オキュルス』がうじゃうじゃ湧いてんのよ。そこから先はもう全然進めずじまい。完全にお手上げだった」


 ホーンデビルとオキュルスは、いずれもレベル10程度の一般的なPCなら四、五人がかりでも一体倒すのに苦労するであろう厄介なモンスターだった。

 そんなのが跋扈してると言うのだから、新ダンジョンの攻略とやらが『無明に宿る赤き黄金の月団』の面々だけではなかなか進まないというのも頷ける話である。


「そりゃキツそうだ。奥までいけばもっと強いモンスターが出る可能性もあるし……」

「そうそう、浅層でこのキツさだもん。ボスモンスターとかいても俺達だけじゃ絶対倒すの無理」


 ハセ曰く、『ヒロスの地下迷宮』並の難度という新ダンジョン。

 前世でイロモにどはまりしていた人間としては『大変そうだ』という思いはあるけども、それとは別に攻略のしがいがありそうなダンジョンで単純にワクワクしたりもする。


 それにどのみち装備の代価として断れない依頼なのだ。

 どうせやる事になるなら、楽しみながらやった方が得だ。


「事情はよくわかったよ。たしかにそれだけヤバそうなダンジョンなら、レティリアさん達の協力がないと攻略無理かもね。しっかりと頼んでおくよ」

「おおっ!! よろしく!!」

「よろなのにゃ!!」


 それから俺はハセ達とダンジョンのお宝の分配に関する取り決めなどを軽く交わした後、『ナナム』のギルドハウスへと帰還した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 翌日。

 ひとりで時間を潰しながら俺は姫岸さん達のログインを待つ。

『無明に宿る赤き黄金の月団』から受けたダンジョン攻略の協力要請、それを彼女達に伝える為だ。


 装備の引き換えとはいえ他ギルドからの要請を、雇われNPCにすぎない俺が独断で受けた事を『ナナム』のメンバーはよく思わないかもしれないが、正直そこについてはあまり心配していない。

 姫岸さんやポム嬢の二人は優しいし、宝条にしたって新ダンジョン探索なんて面白そうな事に興味がひかれないはずがない。

 まぁ小っちゃな器の野蛮娘は二、三嫌味を言ってくるかもしれないが、それぐらいは想定内のことだった。


 肝心なのはレティリアさん達の協力を引き出せるかどうかである。

 さすがにこればっかりは姫岸さん達に無断で行うわけにはいかない。


 しばらくして、ギルドハウスへポム嬢がログインしてくる。

 基本的に『ナナム』に所属する三人娘の生活サイクルは似ているから、そう時間が経たないうちに残りの二人もログインしてくる可能性は高い。


――まずはポム嬢を味方につけておくか……。


 口うるさそうな宝条に話をする前にポム嬢に話を通しておこうと、俺は彼女の為にゲットしていたアイテムを取り出して言う。


「お待ちしておりました、ポム様。どうかコレをお納め下さい」

「なに……、これ……?」

「昨日、ギルド『無明に宿る赤き黄金の月団』から我が交渉術にて入手してきた品でございます」

「ああ……、ありがとう……」

「いえ、ポム様には日頃からお世話になっている身分でございますから、これしきのこと当然でございます」


 平身低頭に接する俺を見て怪訝そうにポム嬢は言う。


「イージス、さっきからなに……、その変な喋り方……」

「礼儀をつくそうかなと思いまして」

「気持ち悪いからやめて……」

「はい」


 茶番はこの辺にしておいて、さっさと本題を切り出すとしよう。


「実は相談したい事があって」

「相談……?」

「昨日アイル達と装備品の取引した際、その代金を実はタダにしてもらっててさ。はっきりと額を決めたわけじゃないけど、最低でも数万ゴールド分にはなると思う」

「数万ゴールド……」


 額の大きさに驚くポム嬢。


「それで、その見返りにダンジョン攻略を『ナナム』にも手伝って欲しいって頼まれたんだ。で、その頼みをもう承諾しちゃったというか……」

「ああ……、私は別にそれぐらい構わないけど……」


 予想していた通りポム嬢の反応は悪いものではなかった。


「でもライナはどうだろ……、勝手に話進められるのは怒りそう……」

「うん。まぁその辺は覚悟しています。何だったら彼女は今回の件には無理に参加しなくても大丈夫だから」

「そうなの……? でも『ナナム』に手伝って欲しいって話だったんじゃ……」

「いやぁ、実は向こうサイドも我々を純粋な戦力として欲しているというよりは、別の期待をしてるみたいで」

「別の期待……?」

「是非戦力になりそう人を助っ人で呼んできて欲しいと、それでポム嬢からシラハさん達にお願いしてもらえないかなと思って」

「ああ、そういこと……、それでさっき辺な喋り方してたのか……」


 俺が直接協力を頼みにいくより、シラハさんの実の妹であるポム嬢から頼んでもらった方が効果的だ。

 彼女さえ味方につければ、宝条の一人や二人怒らしたところで計画に支障はないのだ。


「う~ん」


 少し考えるような仕草をしてからポム嬢は言う。


「まぁお兄ちゃんなら……、ダンジョンの攻略ぐらい、時間さえあれば手伝ってくれるとは思うけど……。いつそのダンジョンにいくかはもう決まってるの……?」

「オグさん達は明後日までには一度アタックかけたいとは言ってたけど細かい日時はまだ決まってないよ。向こうは向こうで助っ人呼ぶつもりらしくてその人たちの都合もあるからって」

「そっか……。じゃあいけそうな時間帯だけ聞いておく……」

「おお、ありがとうございます!! ポム様!!」


――かわいい妹からの頼み。兄上殿も断れまいよ。ふふふ。


「あっ、あと。戦果の分配はダンジョン発見者である『無明に宿る赤き黄金の月団』優先って事になってるからその辺も説明しておいてくれると助かりますです」

「うん、わかった……。お兄ちゃんはあんまりそういうの気にするタイプじゃないから問題ないと思う……」


――兄妹共に広い心をお持ちで助かるわ。


 ポム嬢の約束を取り付け一安心する俺。

 そこへ……。


「二人とも何の話してんだ?」


 宝条の奴がやってくる。

 当然彼女にも話は通しておく必要があるわけで……。


「ああ、実はさぁ……」


 俺はあらためて昨日の出来事についての説明をすることに……。

 そして話の途中に姫岸さんもログインしてきたので彼女も加えての説明タイムとなった。


 ああだこうだと俺が話をして説明をし終えると、宝条が不服そうに言う。


「おもしろくねぇな。ダンジョン攻略はいいけどさ、あたしらをおまけ扱いってのが何かムカつく」


 俺が勝手に動いたことよりも、ダンジョン攻略の助っ人として自分達がおまけ扱いされたのが彼女には気に食わないらしかった。


「気が乗らないならライナは無理に参加しなくてもいいよ」

「はぁ? あたしをハブろうってのかよ」

「そうじゃなくて……。俺が勝手に受けてきた話だし、無理に付き合わせるのは悪いしさ」

「いや、参加するね。猫娘におまけ扱いされたままは癪だかんな」


 そういや宝来祭や宝探しの時もアイルと宝条は何かと対抗意識燃やしていた。

 そしてその対抗意識からか、宝条はとんでもないことを言い出す。


「そんでだポム。シラハさんへの話はナシだ。ダンジョン攻略の助っ人はあたしらだけでやってやろう」

「いやいや、それはさすがに無理だから!!」

「なんでだよ。あたしらだって強くなってんだ。いけるって」


――お嬢さん、その自信はいったい何を根拠にしてお持ちになられているのでしょうか……。


 宝条の謎の自信に呆れながら俺は言う。


「目的のダンジョンのこともよく知らないで、そう言い切れるのがいろんな意味ですごいよ、ライナは」

「猫娘達がどうにかしようってダンジョンなんだろ? だったら言うほどたいしたことねぇって」

「たいしたことあるから彼女達は助けを求めてるんだよ……」


「そんなに難しいダンジョンなんですか?」


 姫岸さんが俺に尋ねる。


「最低でもヒロスの地下迷宮以上だって言ってたよ」


「ヒロスの地下迷宮? あ~、なんだっけそれ。どっかで聞いた覚えはあるな」

「あの難しいので有名な女の子を助けるクエストのやつじゃないですか?」


 あまりイロモ界の情報に精通しているといえない姫岸さん達ですら、ヒロスの地下迷宮の名を耳にしたことぐらいはあるらしい。


「そうだよ。その難しいので有名なクエストのダンジョン。最低でもそのレベルの難度ってんだから俺達だけが助っ人に入ったところで、どうにかなるもんじゃないよ」


 俺がそう言うと姫岸さんが心配そうに聞いてくる。


「それぐらい難しいとなると、私なんかが参加したら、かえって足手まといになりませんか?」

「う~ん、単純に数は武器になるのもたしかだからね。レベルも上がってそこそこ装備も整ってきた。立ち回りだって上達してるし、補助戦力としてなら俺達でも十分力になれるとは思うよ」


 戦力として、支払う報酬に見合うだけの働きができるかというと微妙なところだが……。

 さすがに『そうですね。足手まといになるだけかもですね』とはこの場面では言えない。


 相手のことを常に気遣う優しい姫岸さんは高難度ダンジョンの攻略の助っ人と聞いて不安げだったが、宝条は違う。


「そうそう、姫は気にしすぎなんだって。参加したらした分だけ、分け前だって増えるんだから、パスするなんてもったいないって」

「まぁね。ろくな宝もないクズダンジョンじゃなければの話だけどね。それにオグさん達は他人の事を足手まといだとか、そういう扱いをするような奴らじゃないよ、マスターだってそう思うでしょ?」


「そうですね……。それじゃあ、私なんかでも少しでもお役に立てるよう精一杯頑張りますね!!」


 それから俺達は新装備の試しも兼ねながらクエストをこなして一日を終える。

 翌日にはポム嬢からシラハさんからOKを貰ったとの返事が入った。

 しかもレティリアさんも含め都合の合う人達を何人か連れてきてくれるらしい。


 そしてさらに一日経って、ギントが発見したというダンジョンの攻略を挑む当日。

『ナナム』のギルドハウスにシラハさんがレティリアさん、それにマリーさんとレモンさんを連れてやってくる。


 種族ハルフマンのマリーさんと赤い衣装に身を包む炎の魔法が得意なレモン嬢。

 二人とも、あの姫岸さん救出作戦の時に一緒に戦い頑張ってくれた人達だ。


「みなさんお久しぶりです~」

「今日もウルトラ・アルティメット・レモン・ザ・ファイアーが火を吹きますよ!!」


 マリーさんの補助魔法の有用さと、無駄に大袈裟な名前がついてるレモン嬢の必殺魔法の威力は先の戦いで証明済み。

 ダンジョン攻略に当たり心強い助っ人となるのは間違いなかった。


 もちろん、シラハさんやレティリアさんは言わずもがな、これ以上とないレベルの助っ人である。


 今回、新ダンジョンの攻略に当たっての集合場所は、当たり前といえば当たり前であるが『無明に宿る赤き黄金の月団』のギルドハウスとなっていた。

 だから、まずはこの場を移動し、全員がコソカナからラーベンまで移動する必要があった。


 しかもレティリアさんはゲートの魔法を使えるが、彼女が出せるのはラーベンの隣り街であるコスジャの街までである。

 そこからはどうしても徒歩の移動が必要で、魔法の詠唱時間も入れれば結構な時間が食われてしまう。

 あまりのんびりとお話している時間はなかった。


 挨拶と少しばかりの雑談を交わした後、レティリアさんが言う。


「それじゃあ準備に問題がなかったら、そろそろ移動しましょう。ゆっくりしすぎたら時間に遅れちゃうわ」

「はい、じゃあレティリアさん、ゲートの方よろしくお願いします」

「ええ、任せて。コスジャからラーベンまでの道案内はイージスくん、よろしくね」

「はい」


 コスジャからラーベンまではさほど複雑な道のりでもないが、さすがにみんなを放っておいて一人勝手にメルフォーネの力で移動するわけにはいかない。

 俺はあまり隣国の田舎国家について詳しくないであろう彼女らに、いろいろとカナイについての話をしながら、みんなをラーベンの街まで案内した。


「ここがラーベンの街か。さっきの街も見事な田舎だったけど……、よりいっそう田舎だな!!」


 到着後、街を眺めた宝条の第一声がこれ。

 相変わらずの都会人気取りには呆れるが、まぁラーベンの街がコスジャの街と比べても田舎なのは否定しようがない。


 そしてそんな田舎街では見慣れないプレイヤーの一団は自然と目を引く。

 とくにシラハさんやレティリアさんのようなトッププレイヤーの装備はなおさらだ。


「すげぇなんだあれ」

「あんな装備あったっけ」

「あれ『ジルノームの靴』じゃね? 装備してるヤツ初めて見た。なにもんだよアイツら」


 コソカナの街では超超超有名人のシラハさん達もカナイの田舎街ではさすがにそこまで名が知られているわけではない。

 それでも気づく者は気づく。


「ってかネームにシラハって表示されるけど……、まさかマジであのシラハじゃね?」

「誰だよ」

「イロモで誰が最強のPCかって、ネットの掲示板でもでてくる名前じゃん」

「そうなの?」


 ラーベンの住人達の会話を耳にしながら姫岸さんがシラハさんに言う。


「シラハさん。すごい注目されてますね」

「はは。まぁ装備も装備だし目立っちゃうよね」


 そんな風にシラハさんが苦笑していると。


「本物かな?」

「直接聞いてみろよ」

「んじゃ俺がちょっと声かけてみるわ」


 それまで遠巻きに眺めるだけであったPC達のひとりが声をかけてきた。


「すいません。あの、もしかしてシラハって、あの巨人殺しのシラハですか?」

「ああ……、うん。まぁそう呼ばれる事もあるね」

「おおっ!! 本物だ!!」


「マジでマジで!?」


 有名人とお話しようとひとりが食いつけば、俺も俺もと続く者達もでてくる。


「聖槍を一目でいいから見せてくださーい」

「俺『カンタコラルの大盾』が見たーい」

「ステータス100越えしてるってマジですか?」

「レベル11ってどうやってなりました? 俺10から全然あげられなくて!!」


 日頃閑散としている街だからこそ、突然の有名プレイヤーの出現にラーベンはちょっとした騒ぎとなった。

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