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ご無沙汰しております

 その日、最初にログインしてきたのはアイルだった。


「にゃにゃ、何でイージスがまだいるにゃ? 昨日のうちに帰ったんじゃなかったのかにゃ?」

「まぁ、いろいろあってね。いい機会だし、プロージアさんと親睦を深めてたのさ」

「プロージアちゃんは美人さんだからにゃあ。でもイージスじゃ釣り合いがとれないから諦めた方がいいと思うにゃ」

「いや別にそういう意味でお近づきになろうってわけじゃないんだけど……」


――嘘です。ちょっぴり下心はありました。


 だって男の子だもん。仕方ないよね。


「いつまでもこっちで遊んでたらライナ達に怒られないかにゃ?」

「大丈夫、大丈夫。その辺緩いギルドだから」


 実際のところ姫岸さんやポム嬢はともかく宝条のやつは小うるさそうだけど、無視しておこう。

 一日ぐらい好き勝手やったところで、さすがにギルドガーディアンをクビになったりはしないだろう。


「暇してるならイージスも今日のクエ、アイル達と一緒にいくかにゃ?」

「OK、手伝うよ」


 猫娘からの誘いを二つ返事で了承するものの、実のところ俺にその気はない。


 何故なら俺は知っているからだ。

 これから彼女らはクエストどころではなくなる事を。


「おっす、おっす」

「うおおおお、はやく新武器の威力ためしてぇ~!!」


 アイルがログインしてきてから三十分もしないうちに、ハセやツカオ、オグさんと『無明に宿る赤き黄金の月団』の面々が続々とログインしてくる。

 そして最後に昨日はいなかったメンバーがログインしてくる。

 それは『童貞四兄弟桃園の誓い』を破りし大罪人、ギントだ。


「おお、オグさんにアイルまでいるじゃん。俺のためにみんな揃ってくれたの?」


 軽い調子で言うギントに呆れながら猫娘は言う。


「そういう事にしておいてやるにゃ」

「おい、ギント。オグさん達からプレゼントだ」


 そう言ってハセがギント用に残しておいたレアアイテム達を並べる。


「おお、すげぇ何これ、どうしたの?」

「オグさんが向こうの街の福引イベントで当ててきたんだよ。お前も団長の腕輪の金だしてただろ。その取り分だ」

「まじで!! こんなにいいの!?」


 驚くギントにオグさんは黙って頷く。


「まじか。なんかすげぇ得した気分だわ。いいのかな」

「俺達の分はもう取ってあるからな。全部お前のだぜ」


 そうしてレアアイテム達を受け取る寸前、思わぬ事をギントが言い出す。


「……いや、やっぱいいよ。俺の分はハセやツカオが貰ってくれ」

「はっ? 何言ってんだよ!?」


 まさかのレアアイテム受け取り辞退に驚く仲間達にギントは言う。


「最近イロモで遊ぶ時間減ってるからさ。お前らが貰った方がいいだろ」


「いや、そうは言ったってこれはお前の取り分だからなぁ」

「なんだよ、まさかお前イロモ辞めるつもりか?」


 レアアイテムの権利を理由もなく他のメンバーに無償で譲るなんて、イロモに熱中していた頃のギントならありえない事だ。

 そんな人間がこうまで変わってしまうなんて……、イロモへの情熱がそれだけ失われている証に違いない。


 ギントはイロモを辞めようとしている。

 ハセ達がそう思ったって何ら不思議ではなかった。


 だが彼らのそんな懸念をギントは否定する。


「別にやめはしないよ。ただ最近思うんだ。……俺だけこんな幸せでいいのかなって」


 そう言ってしみじみとギントは己の胸の内を語る。


「ハセもツカオもさ。毎日イロモばっかしこしこプレイしてて、彼女と映画見たり、お喋りしたり、手を繋いだり、そういう幸せとは無縁な生活してるだなって。そう思ったら何だか、お前達がかわいそうでかわいそうで……」


 わざとらしく手の甲で己の目を拭いながらギントは言う。


「だからせめて、俺の分のアイテムぐらいは分けてやろうかなって。彼女がいる幸せに比べれば百分の一にも満たないちっぽけな幸せだけどさ。……俺から二人への幸せのおすそわけだよ」


 満面の笑みを浮かべるギント。

 これほど腹立たしい笑顔は近年まれに見るレベルだが……。


「ああ、そう……」

「んじゃお言葉に甘えて貰っとくわ」


 ハセやツカオは存外普通に受け答えする。


 だが、表情はいたって冷静な二人なれど、その内心思う事はきっと俺と同じであろう。


――こいつ、ぶん殴ってやりてぇ!!


 だがその衝動を堪えて、俺は拳を握り締める。


――ギントよ。彼女をちゃっかりつくっちゃうどころか幸せ自慢まで始めてしまうクソ野郎のギントよ。今のお前はめちゃくちゃ腹立たしい野郎だが、我が正義の鉄拳をおみまいするのは勘弁しておいてやろう。


 何故なら今日はとても大切な日だから……。

 お前の血でこの場を汚すわけにはいかないのだ。


 リア充オーラ全開のギントを前に、俺は気持ちを切り替え、自身がなすべき事に集中する。


 今この場には『無明に宿る赤き黄金の月団』の全員が揃っている。

 手紙の件を仕掛けるならタイミングはここしかない。


――今です!!


 俺は他のメンバーには覚られぬようアイコンタクトでプロージアさんに合図を送った。


 その合図にプロージアさんはこくりと頷く。

 そして彼女は俺が書いた手紙を手に、雑談するアイル達のもとへと近寄っていき……。


「ミンナ、ダンチョウシツノトビラニ、コンナモノガハサマッテタンダガ」


――うわあああああ!! な、なんて芝居が下手なんだ!!


 こんな短いセリフでも彼女の演技の下手くそさは極まっている。

 そもそもさっきまでここで突っ立ってた人間がその切り出した方をするのはどうなんだ!?


 プロージアさんのあまりの大根っぷりに焦る俺だったが……。


「どうしたのにゃ?」

「何だコレ?」


 案外みんなの反応はいたって普通だった。


――そうか。俺が茶番だと知ってるからこそ、そう見えるだけなのかもしれない。うん、そう思う事にしよう。


 そう自分に言い聞かせて俺が経過を見守る中、大根娘から手紙を受け取ったハセがその封に書かれた文字を読み上げる。


「『無明に宿る赤き黄金の月団』』のメンバーのみんなへって……、この下手くそな字って団長の字じゃん!!」


 彼の言葉に一同驚きの声をあげる。


「うわたしかに団長の字っぽい」

「ええ!! じゃあこれ団長からの手紙かよ。ってなんで手紙!?」

「にゃにゃにゃ、そんな事より団長からの手紙が部屋のドアにはさまってたって事はだにゃ。これは団長が団長室で書いてたってことかにゃ?」


 アイルの言葉にみんな慌てて団長室の方へと移動するが、当然その部屋にはギルドマスターの姿などあるはずもない。


 それでも誰も使ってないはずの部屋にごく最近使用された形跡がある事を、いつも定期的に掃除してくれているというオグさんがいち早く気がつく。

 そしてそのオグさんの訴えにみんなは確信するのだ。


「さっきまでここに団長がいたって事か」

「プロージアちゃんは気づかなかったのかにゃ!?」


 猫娘の問いにプロージアさんは申し訳なさそうに言う。


「ああ、すまない。まったく気づかなかったよ」


 久しぶりにログインしてきた仲間に一目ぐらい会っておきたい。

 そう思うのが人情というもの。場には微妙な空気が漂った。


 されど、このままボーっと全員で突っ立てるわけにもいかない。


「とにかく手紙の内容読んでみようぜ」

「ああ、そうだな」


 ツカオに言われ封から手紙を取り出すと、ハセがその内容を読み上げ始めた。


「『ご無沙汰しております、団長のセイガです』」


「やっぱり団長の手紙だにゃ!!」

「ご無沙汰にもほどがありすぎだろ……」


 ざわつくアイル達を尻目にハセは続きを読んでいく。


「『何も言わず急にみんなの前に顔を出せなくなって、ごめんなさい。ただ当方としてもいろいろ事情がありまして、ぶっちゃけイロモにログインする暇がなかったのです』」


――生まれ変わっちゃったから……、ログインというかもう俺はここで生活してるのだ。


「『そんな状態がまだまだ続くので、これを区切りにして、このまま新しい人生ってやつを頑張ってみようと思ってます』」


「新しい人生って……」

「リアルの生活頑張るってことだろ」


――まぁそういう風にとるよね。実は文字通り新しい人生っていうかNPC生やっとります。


「つまり団長はイロモやめちゃうのかにゃ?」

「そういう事だろ」

「そんなの勝手すぎにゃ!!」

「急に引退するとか言われてもなぁ。ギルドのことどうすんだよ。丸投げか?」


「その辺の事も書いてるみたいだぞ」


 そう言ってハセは手紙の続きをさらに読みあげる。


「『という事で、ギルドの今後に関してですが、それはもうみんなで勝手に決めちゃってください。他のギルドに移るもよし、新しいギルドを作るもよし、新しいギルドマスターを決めるもよし。俺から何か言う事があるとするなら『無明に宿る赤き黄金の月団』』というギルドがみんなの枷になるような事がないようにして欲しい。ただそれだけです』」


「『ただそれだけです』って、マジで丸投げじゃねぇか」

「アホ団長!! こういう話はちゃんと顔を会わせてすべきだにゃ!! 手紙ですまそうなんて勝手すぎだにゃ!!」

「いまさら面と向かってってのはやり辛いってのもあるんじゃねぇの。事情があったとはいえ俺達のこと無断で放置してたわけだし」

「なればこそだにゃ!! こんな手紙一枚で済まそうだなんて最低にゃ、見損なったにゃ!!」


――アイルさん。オイラだって会って話ができるなら苦労しないのよ。でもセイガさんはもう死んどるんです。


「まぁまぁ、とりあえずまだ続きがあるからそっち先に読んぢまおう」


 憤る猫娘をなだめながらハセはあらためて手紙の続きを読む。


「『オグさん。最初にこのギルドに入ってくれてから副団長としてずっと支えてくれた事に感謝しています。冒険ではあなたほど頼りになり、息が合い、俺の背中を任せられると思ったプレイヤーはいません。間違いなく団長セイガにとって最高の相棒だったと思ってます。ありがとうございました』、メンバー当てに一言って感じだな」


「さすがオグさん高評価だ」

「実際、二人の息はぴったり合ってたよね。団長もオグさんと一緒の時は頼もしさ三倍だったよ」

「アイルは!? アイルの事はなんて書いてるにゃ!!」


 さっきまで不機嫌そうにプンスカ怒ってた表情をころっと変えて猫娘はハセに問うた。


「次がお前あてだよ。えーと、『アイル。我がギルドのムードメーカーとして その持ち前の明るさで戦力としてのみならずマスコット的活躍もしてくれていましたね』」


 その一文にツカオとギントが言う。


「マスコット的活躍ってなんだよ」

「他に書くことなかったんじゃない」


「ギントの馬鹿。なんてひどい事を言うのにゃ。アイルの愛くるしさに団長もメロメロだったって事だにゃ!!」


 ご機嫌な猫娘を無視してハセは続きを読んでいく。


「『そして好き勝手やってるようで何だかんだとみんなの事を考えて行動してくれてたと思います。特にいつも無口なオグさんとは意思疎通ばっちりで彼がギルドの皆とあれだけ馴染めたのは貴方の力も大きかったと思います。これからもオグさんとは仲良くね』」


「団長なんかに言われなくてもオグちゃんとはこれからもずっと親友にゃ!!」


 そう言ってオグさんと顔を見合わせるアイル。

 実際この二人の仲は今後も心配する必要はなかろう。


「『それから最後に、俺にはアイルに謝っておかなければならない事があります』」


「何だにゃ? アイルが大事にとってたプリンを勝手に食べた事ならもう許したにゃ」

「いや、わざわざそんな事手紙には書かんだろ」

「なんか揉めるような事あったっけ?」


 アイル、ツカオ、ギントの三人にはこの先書かれている内容は想像もつかないご様子。

 無理もない。

 俺が最後に伝えようとしているのは己の胸に秘め続けていた彼女への思いなのだから……。


「『ギルドに勧誘する為はじめて声をかけた時、その独特な口調で喋るアナタを見て、こいつやべぇな、声かける相手間違えたかも。とか思ってた事を白状し謝罪しておきたいと思います。ごめんなさい』」


「にゃああああ!! 最後のは余計な一言だにゃ!!」


 怒る猫娘だがハセ、ツカオ、ギントの反応は彼女とは違った。


「まぁ俺も思ったよ、この女イタいなって」

「たしかに俺も思ったな、この女だいぶキてるなって」

「ああ俺も思った、この女マジもんだなって」


「お前ら最低だにゃ……」


 散々な言われようにご立腹のアイルだったが、彼女のことだ。

 五分後には、いつもの調子に戻ってるだろう。


「これ加入順に書いてるのか。ってことは次はハセか?」


 ツカオの言葉にハセは言う


「いや、俺プラスお前だな」

「二人まとめてかよ。手抜きだなぁ」


「にゃははは、ハセとツカオはおまけ扱いにゃ」


――五分もいらなかったな。もう元に戻ってる。


「はいはい、おまけでいいから。続き読むぞ。『ハセ、ツカオ。お前達とは趣味も合い、いろいろと三人で馬鹿な事もやりましたがそのどれもが俺にとっては大切な思い出です』」


「あれ、なんでその並びに俺が入ってないの」


 ギントの言葉にアイル達が言う。


「たしかに不思議だにゃ。馬鹿やる時は四人で一セットだったにゃ」

「お前だけ最後に別枠みたいだな」


「もしかして俺って密かに団長に気に入られてたのかな」


「『とくに三人で挑んだ『朝まで生激論。女の魅力はおっぱいなのかお尻なのかお正月スペシャル』で至った画期的な結論、あの感動は今も忘れる事ができません』」


「お前らそんな事やってたのかよ……」

「正月そうそうアホだにゃ」


 呆れるギントとアイルを無視してハセは続きを読んでいく。


「『これからも二人のエロ紳士としてのご活躍をお祈りいたしております』、……か。ふっ、団長こそ立派なエロ紳士貫くんだぜ」

「あんたこそ日本一のエロ紳士だったよ」


 ハセとツカオの言葉に俺は心の内で返答する。


――よせやい。俺なんてまだまださ。


「それで終わりかよ」

「ひどすぎる内容にゃ。さっさと次いくにゃ」


 ギント達には俺達の厚い友情が理解できなかったらしい。

 だが、それでいい。


――わかる人がわかってくれればいいのさ。我らが行く、エロ紳士道の尊さはな。


「最後はギントだな」

「おお、何書いてくれてんだろ。何だかんだといろいろあったからなぁ。ふふ」


 いざ自分の番となりちょっぴりワクワクしてるギント。

 そんな彼に俺から送る最後のメッセージは……。


「んじゃ読むぞ。『ギントへ。ちんかすクソ野郎』」


 一瞬の間をおいてギントは言う。


「えっ? えっ? ちょっと待って。おかしくない? 今なんかおかしくなかった? ハセ、もう一回読んでくれる?」

「『ギントへ。ちんかすクソ野郎』」

「ええええええ、なんでよ!! なんで俺だけそんな罵倒を浴びせられなくちゃいけないの!? 俺そんなに団長に嫌われてたの!?」


「あっ、続きがあったわ。『間違えました。ギントは最初に俺達義兄弟の誓いを破りそうな気がするので、そうなった場合ちんかすクソ野郎のあだ名を授ける事にしようと思います』」


「えっ、おかしくない!? 手紙なんだから間違えたらその文消せばいいじゃん。わざとでしょ、これ絶対わざとでしょ!!」


 騒ぐギントを尻目にハセとツカオはウンウンと頷きながら言う。


「さすが団長だぜ。見抜いていたんだな」

「こいつは立派なちんかすクソ野郎でしたよ」


「これいじめだろ。無断でギルド放置するような男にちんかす呼ばわりされたくねぇよ!!」


「まぁそう怒るな、ちんかす」

「人間、笑顔が大切だぜ、ちんかす」


「やめろ、勝手に縮めるな!! それ以前に他人様をそんな呼び方するんじゃない!!」


 ぎゃあぎゃあ騒ぐ男達にアイルは言う。


「アホなこと言ってないでさっさと続き読むにゃ」

「へいへい。え~と『というのは冗談でマジで彼女出来たら、その子のこと大切にしろよ。お前の事好いてくれる子がいるなんて奇跡レベルの出来事なんだから』」


「こっちが本題か」

「にゃはは、たしかにギントに彼女ができるなんて奇跡だにゃ。大切にするにゃ」


「モテナイちんかす団長に言われるまでもなく大切にしてるよ!! なんなのこの人、なんで俺が彼女作ってる前提で手紙書いてるわけ? 団長がログインしなくなってから付き合いだしたのに」

「団長は何でもお見通しってことなのにゃ」

「怖ぇよ……」


「これでおしまいかにゃ?」

「いやまだ少しあるぞ。『ハセ、ツカオも彼女ができたらちゃんと大切にしましょう。お父さん君達一生独身じゃないかって心配してます』、……なんで急にお父さんキャラになってんだよ。ってか他人の事心配してる暇あんのか? 団長もかなりもんだろ」


 自分で読み上げた文につっこむハセ。

 そんな彼のつっこみにツカオも同意する。


「ああ。かなりのモテナイっぷりだったからな。だがこの余裕、……まさか団長のやつも彼女ができたとか!?」

「あのイロモ廃人が急にリアル頑張りだす理由としては十分ありえるな」


 二人の会話に憤りながらギントが発言する。


「だとしたら団長こそが地球最大のちんかすクソ野郎じゃないか」

「まぁ団長は彼女がいようがいまいがちんかすクソ野郎でいいと思うけどな」

「となるとちんかすの称号はギントから団長に返上だな」


――あれれ、なんかおかしくない。いつのまにか俺に矛先が向いちまってるような。これが人を呪わば穴二つってことか……。ギントさん、申し訳ございませんでした。


「聞くにたえない会話だにゃ」


 男達の下品さに呆れる猫娘を無視して、ツカオはハセが手にする手紙をのぞき見る。


「あれ? まだ続きあるじゃん」

「おう、あるぞ。『最後に一言。オグさん、アイル、ハセ、ツカオ、ギント。みんながいたからこそ俺はこのイロモサーガを100%全力で楽しめました。ほんとうにありがとうございました。そして、まことに勝手ながらこの手紙をもちまして『無明に宿る赤き黄金の月団』の団長セイガはイロモサーガを引退にすることにします』だってさ」


 手紙の内容は全部でこれだけだ。


「ホントに団長辞めちゃうのかにゃあ」


 寂しげな口調で言うアイルにツカオが言う。


「そのつもりみたいだな。だけどあの法則があるからなぁ」

「わざわざ引退宣言するやつは必ず戻ってくる法則だな」


 ハセの言葉にツカオとギントの二人が頷く。

 三人とも俺がそう簡単にイロモを断てるわけがないと思っているのだ。


――いやたしかにMMOあるある法則ですけど、俺の場合戻りたくても戻りようがないからね。そんな事にはならないです。


 このままなんちゃって引退宣言扱いされたままならどうしようと、俺が思っているとツカオとハセの二人が言う。


「でもまぁ本人がこう書き残してるわけだし、いちおう一区切りって事でいいんじゃない?」

「よーし。今日のクエは中止して、団長が無事リア充生活をおくれる事を期する。団長不在の送別会をして盛大におくってやろうじゃないの!!」


 その提案にギントも乗っかる。


「いいね、それ。どうせなら笑って送り出さないとね」

「送別会じゃああああ!!」

「パーティーじゃあああ!!」


 盛り上がる男三人に猫娘が言う。


「お前ら自分達が騒ぎたいだけじゃないのかにゃ」

「何だよ、じゃあアイルは送別会不参加か?」

「参加するに決まってるにゃ!! アイルがいなきゃパーティーは始まらないのにゃ!!」


 しんみりお別れなんて『らしくない』。


 団長セイガ不在の送別会を開く準備に取りかかる為、みんなはぞろぞろと団長室を後にした。

 そんな中、プロージアさんが俺に声をかけてくる。


「最後の手紙があんな内容でよかったのか?」


 俺が書いた手紙の内容に少しばかり呆れながら言う彼女に、俺は口元に笑みを浮かべながら答えた。


「大丈夫ですよ、みんな知ってますから。団長セイガはそういう奴だって」

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