動き出した両輪
後日、ギルドハウスにて。
ナナムのメンバー達のログインをいまかいまかと待ち続ける俺。
そこにひょっこり顔を出したのは、愛しの姫岸さんただ一人だった。
どうやら、他の二人はリアルの都合が悪く、今日はログイン出来ないらしい。
いつもなら二人の都合が悪いと、姫岸さんもログインしてこないはずなのだが、前回の一件もあってか、彼女にも心境の変化があったようだ。
今だレベル2のままの姫岸さん。
このままではいけないと彼女も考えていたらしく……。
「これ以上みんなの足を引っ張らないように、頑張ってみようかと思いまして」
宝条達と遊べない日も積極的にログインして少しでも経験値を稼ごうというのだ。
嬉しい事言ってくれるじゃないの。
「もし、よかったら手伝ってもらえませんか?」
彼女の誘いを断る理由はない。
そもそも、ナナムのメンバーを、彼女を手助けする為に俺は雇われたNPCなのだ。
「もちろん」
「ありがとうございます」
にっこりと笑みを浮かべる彼女に俺は言う。
「礼なんていらないよ。それに、俺は今燃えているんですよ!!」
「燃えている?」
俺の発言に、顔にハテナを浮かべる姫岸さん。
ふっふっふ、丁度いい。
彼女にこの間決心した、俺の大いなる野望を聞かせようではないか!!
「俺は決めました!!」
彼女の両肩をがっしりと掴む俺。
わぁお、大胆。
「は、はい」
その迫力に、思わず息を呑む姫岸さん。
よ~し、びしっと決めてやるぞ、びしっと!!
「ナナムを、世界一のギルドにしてみせると!!」
「世界一……」
「そう。世界、一です」
俺は、己が抱いた大いなる野望を愛しの彼女に宣言してみせた。
「つまり……、どういう事ですか?」
あら……。
まぁ、別にギルド間の競争なんかに微塵も興味のない初心者プレイヤーの彼女に、急にこんな事言ったって伝わるはずもなかったか……。
「つまりですね。俺が超絶すごい活躍をし、ギルドポイントをがんがん稼ぎ、このナナムを一番のギルドにしようって事ですよ、マスターリリナ!!」
「一番……、それって……、すごく大変な事では?」
「イエス!! すごく大変です。めちゃ大変です。ですが、目標は大きく、前向きに!! その方が気合が入るってもんでしょ!!」
「前向きに……」
「そうです。何事も前向きが一番!!」
「な、なるほど……。確かにそうかもしれませんね」
「イエス!!」
気合入りまくりの俺に姫岸さんが言う。
「なんだか今日のイージスさん、すごく……熱血キャラですね!!」
「イグザクトリー!!」
テンションも上がろうものさ。
何せ今日は、両思いと知った女の子と、二人っきりの時間を過ごせるのだもの!!
それからギルドハウスでの会話もそこそこに、さっそくいつもの酒場へと移動し、クエストを適当に選ぶ俺達。
そして……。
「それじゃあいきますか」
俺の言葉に姫岸さんが頷く。
「はい」
こうして俺と姫岸さんは、建物の屋上から見送る人影に気付く事もなく、コソカナの街から出発するのであった。
よ~し、かっちょいいところみせるぞ!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
経験値稼ぎのクエストに出発する二人を遠目から見送る二つの影。
その正体は、荘厳に美しき女と、白い羽を持つ少女だった。
「楽園を追放された二人が出会い、運命の両輪がついに動き始めた……」
「詩人ねぇ、けどいいの? あなたまだ彼の事を……」
「あら、私を誰だと思っているの? 運命に負ける程度のやわな恋なら、最初からしたりなんかしないわ」
「たいした自信ね。まっ、いちおう応援しておいてあげるわ、アストビア」




