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俺達の冒険はこれからだ!!

 星を眺めながら時間が過ぎていく。


 彼女との会話のおかげか、最初に窓から星を見ていた時と違い、俺の気持ちは幾分か軽いものになっていた。

 それでも頭に浮かぶのは、やはりあの不思議な体験、不思議な力の事。

 そして、姫岸里利奈の事。


 彼女は今だ煉城聖我の事が好きだと言っていた。

 それは俺にとってすごく嬉しい事でもあったが、同時に物悲しさを感じずにはいられない。

 二度と戻る事のない死人を慕う彼女の境遇が、このままでいいとは思えなかったのだ。

 

 煉城聖我は死んだ。

 もはや幻影にすぎない過去の自分の為に、彼女が未練に囚われ、孤独を感じるというのなら、俺は彼女をそこから連れ出してやりたい。


『死んだ男の事なんて忘れろよ』。

『過去に囚われてるな』。

『新しい恋を始めようよ』。

『君にはきっともっと相応しい人がいるよ』。


 俺は俺だ。

 煉城聖我として生まれ、生き、死んだ。

 そうだ。

 俺は俺だ。

 だが……、イージスであって煉城聖我ではない。


 今の俺がどんな言葉を並べたところで、彼女には届かない。

 それは身勝手な男の傲慢と自惚れにしかとられないだろう。


 彼女は煉城聖我に伝えたくても伝えられなかった思いを今も抱き続けている。

 そんな彼女を救えるとしたら、それは煉城聖我以外には存在しえない。


 そして煉城聖我もまた、彼女に最後まで伝える事の出来なかった思いがある。


 だったら……。


 一つの結論めいたモノが俺の中で生まれた時、どこかしらから声が聞こえてきた。


「いつまでもそんなとこいると、風邪ひきますよ~」


 天使ミカエルだ。


「天使様……、いったいいつからそんなところに……」

「君がかっこつけて星空眺めてる頃からよ。具体的には……」


 キリリとダンディさMAXの顔になり、俺の声真似をし始める天使様。


「俺は俺だ。煉城聖我として生まれ、生き、死んだ。そうだ。俺は俺だ」

「やめて、人の思考を盗聴するのはやめて。恥ずかしくて死んじゃうから!!」


 それに対して顔真っ赤で俺が抗議すると、声真似を中断する天使様。


「盗聴なんて人聞きの悪い。君の思念があまりに濃かったから、勝手に漏れ出てたのよ」

「漏れるって……、そういうものなの?」

「そういうものよ。私に聞かれたくないのなら、これからは無意味に星空眺めながらかっこつけるのはやめておきなさい」

「はい……」


 これじゃあオチオチ自己陶酔も出来やしないな。

 ……そんな事よりもだ。

 ここで天使ミカエルが出てきたのは都合がいい。

 丁度聞いておきたい事があるのだ。


「……ところで天使様、お聞きしたい事があるのですが」

「なに? 例の力の事なら、残念ながら企業秘密よ」

「いや、そうじゃなくて、いやそれも気になるんだけど……、あれですよ、あれ!!」

「あれ?」


 読んで欲しい時に、思考を読んでくれない天使ミカエル。


「転生する時に言ってたあれですよ!!」

「だからあれって何よ」

「『神様たちが君のお願いを聞いてあげない事もないような気がするキャンペーン』ですよ!!」


 俺の発言に、ミカエルは超絶微妙な表情を浮かべる。


「あぁ」

「いや、あぁじゃなくて!!」

「そんな事も言ったような、言わなかったような」

「絶対言ってた!! 今さら無しは無しですよ!!」

「うぅん、けどあれって、NPC役のお仕事頑張ったご褒美って話だったでしょ」

「ええ、だから……」

「まさか、今日まで頑張ってきたから、ご褒美くれって図々しい事言うんじゃないでしょうね」

「いえ、そこまで俺も図々しくはないです」

「そう、じゃあ何よ。急にこんな話題持ち出してきて」

「俺考えたんです。俺に与えられた役割、このギルドガーディアンの仕事をどこまで頑張れば、認めてもらえるだろうかと」

「それで?」

「俺はギルド『ナナム』に雇われてるNPCです。もしこのギルド『ナナム』を、トップランクのギルド、いいえ、このイロモ世界でのナンバーワンギルドになるまで成長させたら、それはもう誰にも文句がつけようのない俺の頑張りって事になりませんか!?」

「それは……、まぁたしかに」

「そしたらご褒美を貰う権利も、ばっちりあるはず!!」

「まぁ、出来たらね」


 ナナムの現状は初心者三人が仲間内でわいわい遊んでるだけのギルドだ。

 トップランクのギルドになるなど夢のまた夢の話。

 ましてや、廃人がうじゃうじゃ所属しているギルド群を押し退けてナンバーワンギルドになるなど、これはもうまず不可能だと言ってしまっていい。


 だがその不可能を可能にするぐらいの働きを見せねばいけないのだ。

 それぐらいでなければ、人間の生き死にすらもただの『色』として塗りつぶしていく神々の目にとまる事は出来ないだろう。


 ひどく傲慢で身勝手な彼らの目にとまって、初めて俺は、超常の可能性を手にする事が出来るのだ。


 そうすれば、もう届くはずのない煉城聖我の言葉を、思いを、あの人に届ける事も出来るはず。


 それが、俺が一夜費やして悩み抜いた上での結論だった。


「うおし、やる気出てきたぞ。絶対ナナムをナンバーワンギルドにしてやる!!」


 俺が決意を声に出した丁度その時、暁に陽が昇る。

 夜明けの太陽が、まるで俺を応援してくれてるかのように昇っていく。


 徹夜明けのテンションで太陽に向かって俺は叫んだ。


「うおおおおおおおお!! やってやるぞおおおおおおお!!」


 そしてこの時、この瞬間から『ナナム』をナンバーワンプレイヤーギルドにする為の、姫岸里利奈に愛を伝えるための、俺の戦いの日々が幕を開けたのである!!





「やる気満々ねぇ、それでまずはトップを目指すにあたって何から始めるのかしら」

「うん、とりあえず……」

「とりあえず?」


「眠いから寝る!!」


 睡眠は大切だよ!! いい子は徹夜なんてしないようにね!!

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