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決意の夜

 勝利の宴も過ぎ、夜も深まった頃には、ナナムのギルドハウスには俺一人の姿しかありはしなかった。

 ナナムのメンバーも、シラハさん達も現実世界へと帰ってしまっていたのだ。


 静寂が包む夜の中で俺は一人、窓から星空を眺め物思いにふけっていた。


 漠然と考えていたのは、記憶がないなどと嘘を付いた理由。


 いや、本当は理由などわかっている。


 怖かったのだ。


 静かな怒りのままに、他者を平然と蹂躙する事が出来た自分自身というものが……。


 トウタ達を圧倒したあの不可思議な力。

 それを怒りのまま、募った憎しみのまま振るったのであったのなら、今の心境はもっと軽いもので済んだのかもしれない。


 だけどあれは違った。


 もっと無感情で、無機質な怒り。

 ゴミを処分するだけの感覚。

 そんな感覚で他者に暴力を振るえた自分に愕然とするのだ。


 自分の中に知らない自分がいた。


――俺は残酷な人間なのか?


 答えが出ないまま、同じ問いを繰り返していた。


 そんな中で、背後に感じる自分以外の何者かの気配。

 思考を中断し、気配がする方へと振り向くと、そこには見知った少女の姿があった。


「ご、ごめんなさい!! ……お邪魔でしたか?」


 それは姫岸里利奈のPCリリナだった。


「いや、邪魔だなんてことは……」

「よかった……。真剣そうな顔で、考え事をしてたみたいだから……」

「別にたいした事は……、それよりこんな時間にマスターがいるなんて珍しい」


 姫岸さんの生活は前世の俺と違って規則正しいものだった。

 こんな夜中に、イロモにログインしてくるなんて滅多にありはしない。

 というか俺が知る内では初めての事だった。


「その……、なんだか眠れなくて……」


 ゲームといえどあれだけの出来事があったのだ。心優しい彼女にはひどく恐ろしい体験だっただろう。


「そっか……」


 何と慰めの言葉をかけるべきか俺が悩んでいると。


「それで、その……、よかったら少しお話しませんか?」


 思い詰めたような表情で姫岸さんが言った。


 彼女の表情には少し面食らったものの、俺に断る理由などあるはずもない。

 好いた相手だ。

 落ち込んでいるなら励ましてあげたいし、言い方は悪いかもしれないが己の沈んだ気持ちを紛らわすには丁度いい。


 俺は彼女の誘いに乗り、ギルドハウスの屋上へと移動する。

 そして。


「私この場所が好きなんです」


 夜空を眺めながら彼女は言った。


 この場所が好き……、いったいいつ見ていたのだろうか。

 この場所で、この美しい夜空を。


 少なくとも俺が転生してから、屋上で夜空を眺める彼女の姿など見た事がない。

 俺が気付かぬ間にこっそりと? それとも単純に久しく来ていなかっただけなのか。


 しかしまぁ、そんな事を探ってどうなるものでもない。


「うん、綺麗だよね」


 てきとうな調子で話を合わせ、同意する。

 そんな俺に対して姫岸さんはどこか悲しげな笑顔をこちらへと向ける。


 それは胸をざわつかせるほどに美しかった。


 落ち込む女の子の笑みを見て、綺麗だとは……。

 何とも随分な話ではあると、自分自身思わないでもない。


 申し訳なく思うと同時に、自己嫌悪すら覚える。


 だが、それでも彼女の危うさすら感じさせるほどの可憐さに、惹かれずにはいられなかった。


 今さらも今さらではあるが、やはり俺はこの人の事が好きなのだと、あらためて強く思った。

 そうして、複雑怪奇な感情を胸に抱きながら言葉を失っていた俺に、彼女は言う。


「その……、実は、あらためて御礼をと思って……。ちゃんと御礼言えていなかったですし」


 簡単な礼なら既に言われていた。


 だけど、事件のショックもあったし、そんな彼女を励ますのは親友である宝条やポム嬢の役目であり、俺とはあまり多くを話せる雰囲気ではなかったのだ。

 それが彼女の負い目となっていて、あんな悲しそうな顔をさせてしまったというのなら、こっちが申し訳なくなるくらいだ。


「いや、そんなあらたまって御礼だなんて。マスターが無事こうしてみんなのもとに帰ってこれたってだけで十分だよ。お礼なんて別にいいよ」

「よくないです!!」


 思いの他強く否定する彼女の口調に俺は驚く。

 そして……。


「よくないんです……」


 またあからさまに元気のなさそうな調子に戻ってしまう姫岸さん。


「えっ、そうなのかな……。まぁそれでマスターの気が晴れるなら……」


 こんな雰囲気で礼も糞もあったもんじゃないよなぁ、と内心思いながら、俺は彼女の次の言葉を待った。


「……助けてくださって本当にありがとうございました!!」


 顔を俯け加減で礼を述べる姫岸さん。


――そんな無理しなくてもいいのに、相変わらず真面目な人だなぁ。


 なんて事を思っていると……。


「それと、それと……、本当にごめんなさい!!」


 と、言って深々と頭を下げる彼女に俺は唖然とするしかなかった。


――お礼はともかく、ごめんなさい!? えっ、どういう事!?


 脳内にたくさんのクエスチョンマークを浮かばせていると、姫岸さんは捲くし立てるように言葉を続ける。


「イージスさんが私の事を必死に助け出そうとしてくれていたのに、自分だけ逃げ出すようにログアウトしちゃって、本当にごめんなさい!!」


 ああ、なるほどその事か。

 目の前で一方的に他人が殴られてる様を延々見続けるなんて、女の子には耐え難いだろうし、別にそんな責められるような事でもないと思うのだが……。


「そんな事、気にしなくてもいいのに。マスターが謝るような事じゃないよ。悪いのはあいつ等であって、マスターは悪くないよ」


 まぁこれが彼女の現実世界の話なら、なんとか抵抗するなりしろと思う人もいるかもしれんが、自分が暮らしている世界に対してこんな事言うのもアレだけど、所詮ゲームの世界だしな……。

 ログアウトしちゃうのも無理ない事だろう。


「怒ってませんか?」


 不安そうに尋ねてくる姫岸さん。


「なんで怒ったりするのさ。ありえないよそんな事」

「でもあれから一人、イージスさんは戦ってたのに……、私は……」

「いや、だから仕方ないよ、それは。マスターはまだレベル低いし、あんな捕まった状態じゃさ。それに、別に責める意味はないけど、あのままこっちの世界にいても何も出来なかっただろうから」


 役立たずと暗に言われたと勘違いしたのか、余計しゅんとなる姫岸さん。

 ありゃ、ちょっとまずったかな……。


「なんて言うかな。むしろこっちが謝りたいぐらいだよ」


 愛しのお方をへこませたままにするわけにもいかず、俺は少々話題の方向性を変える。


「イージスさんが?」

「うん。威勢良く助けに来て、あんな様でさ。マスターに辛い思いさせちゃったし、情けないなって」

「そんな事ないです!! イージスさんはこうして私の事助けてくれました!! 情けなくなんてないです!!」

「いやぁ、結構偶然と言うかなんと言うか、そんな戦い方だったから……、正直、奴らに勝てたのはラッキーなだけだったと思う」


 あの現象をラッキーと表現とするのは違うかもしれないが、だからと言ってアレが己の実力なのかというと、それもまた違うような気もする。


「運も実力のうちです!!」


 励ましになってるような、なってないような姫岸さんのフォローに俺はつい笑ってしまう。


「ははっ、確かにそうかも」

「そうですよ!!」

「……ありがとう、マスター」


 礼を言うと、少し顔を赤く染める姫岸さん。

 それからちょっとだけ間を置いて、彼女は言う。


「……よかった。もしかしたら軽蔑されてるかもって思って……、心配だったんです」

「だからそんな事ありえないって。マスターがすごく心の優しい人だってのは俺も知ってるしさ」

「私、優しくなんてないです。卑怯な人間なんです」


 俺の言葉にまた暗い表情となってしまう姫岸さん。

 たかがゲームでそこまで思い詰められても、反応に困るんですが……。


「そんな事ないって、あれは何て言うか、不可抗力というか、とにかくマスターは悪くないから、ホントに」

「そうじゃないんです!! そうじゃなくて……」


 どうやら今回の事件だけの話じゃなくて、もっと別の根本的な悩みが姫岸さんにはあるようだった。

 それをはっきりさせないことには、彼女を元気付けることはできないのだろう。


「う~ん、言い辛い事だったら無理には聞かないけど、話すだけでもやっぱ気分が楽になる事もあるだろうし、よかったらマスターの言いたいこと、ちゃんと俺に聞かせてくれないかな? それとも俺なんかじゃ頼りにならないかな」

「でもこんな話、イージスさんにしてもご迷惑なだけでしょうし……」

「いやいや、俺なんかで良ければ、全然話聞くよ。やっぱりさ、同じギルドに所属する者同士、どんな事でも助け合いが大切だと思うんだ。悩みでも何でも、俺はマスターの力になりたいよ」


 だいぶ深刻そうなお悩みのご様子。

 これを解決してあげれば、彼女の好感度アップ間違いなし。 


 ぜひとも聞かねば、ぜひとも開かねば、姫岸里利奈のお悩み解決相談室を!!


「イージスさん……、いいんですか?」

「もちろん」


 俺の言葉に意を決した姫岸さん。

 少しばかり小さな声で彼女は自身の苦悩について打ち明け始めた。


「私、好きな人がいたんです……」


――ウーオ、ウーォ、ゥーォ。


 俺の脳内で赤鉢巻おじさんがKOされた効果音が鳴り響く。


「ご、ごめん。ちょっと聞き取れなかったからもういっぺん言ってもらえるかな」

「あ、はい、ごめんなさい。あの、えっと、私……、好きな人がいたんです」


 苦し紛れの現実逃避は、俺のハートに追撃のダメージを与えていく。


 聞きとうなかった!!

 憧れの人の恋のお悩み相談室なんて開きとうなかった!!


――助けてくれー。誰か、十秒ほど時を戻して、紳士面して話を聞こうとしている俺をぶん殴って止めてくれー。


 姫岸さんのノーモーションパンチの威力に、打ちのめされそうになりながらも、俺は何とか耐える。

 何とか耐えた後、彼女の話の続きを聞いていく。

 辛い……。


 彼女曰く、どうやら意中の相手がイジメに合っていたらしく、それを見ている事しか出来なかったとの事。

 今回の救出劇、逃げ出すようにログアウトしてしまった事が、その時の自分と重なってしまったようで、己の臆病さに心底、嫌悪しているとの事だった。


「私、こんな自分を変えたくて……、変わらなくちゃと思ってたのに……」


 思い詰めた様子で、そう呟く彼女を見て、俺は思う。


 優しい子だなぁ。いじめ許せんなぁ。被害者の子も、姫岸さんも辛い思いをしてかわいそうだ。

 ってな事を。


 でも、俺はあえて言いたい。


 ひどいいじめの話を聞かされて、彼女の落ち込んだ表情を見せられて。

 そんな中。


 俺はあえて言いたい。


――知らんがな!!


 と。


 だって、良いじゃない!!

 いじめられてもさぁ。

 こんな可愛い子に好かれるなら、いじめバッチ来い、ですよ。


 こちとらガンガンにいじめられまくりの人生だったけど、そんな嬉し恥ずかしイベント一つもなかったよ。

 タダ働きならぬ、タダいじめでしたよ。


 そんな俺と比べたら、そのいじめられていたって子、かわいそうどころか、ラッキーボーイですよ。


――羨ましいなぁ!!


 なんて言えるわけもなく、俺は彼女にありきたりな言葉を掛けて慰めてやる事しか出来ない。


「いじめってやつはいろいろ複雑な要素があるからね。子供心に助けるってのはなかなか大変な事だと思うよ」


 実際前世で俺はいじめられてる子を助けていたが、それが同級生達に嫌われていく原因にもなった。

 だからといって、その事を後悔なんてしてないけどね。

 俺にとって、いじめの傍観者になる事の方が、自分が嫌われていく事よりも耐え難かったのだから。


 彼女の場合は、恐れの感情の方が優っていた。だから傍観者になる事しか出来なかったのだろう。


 その気持ちもよくわかる。


 だから、彼女を責めるような真似など出来ない。


「難しい問題だからね。俺から言える事は過去を悔やんで塞ぎこむより、今、これからどうするかだと思うよ」

「そう思って変わろうとしてたんです。なのに……」

「何事も一気に変えようとしたって、なかなか上手くはいかないよ。少しずつ変わっていくしかないよ。そうだなぁ、まずはあっちの世界に帰ったら、そのいじめられてたって子と友達にでもなってあげたら?」


 うう、何が悲しくて、憧れの人の恋の応援しなくちゃならんのか……。

 心を痛めながらアドバイスする俺に、姫岸さんは意外な反応を示す。


「それが……、出来ないんです」


 ぬっ、出来ないって……。まぁ、言ってもまだ中学生だし、いじめられる側に回るのが怖いのかなぁ。


「じゃあ、友達とはいかずとも、こっそり話し相手になってあげるとか」


 俺の言葉に、姫岸さんは再び首を振る。


「無理なんです」


 そして彼女は衝撃的な一言を発する。


「だって彼はもう、……亡くなっているんです」


――えっ!?


「それは……、なんて言うか……、ごめん」

「いえ……」


 気まずい。大変に気まずい。

 とてつもない地雷を踏み当ててしまったようだ。

 まさか、姫岸さんの意中のお人が既に死んじゃっていたとは……。


 どうしよう。なんて言って慰めよう。


 別に死んでも生まれ変わりがあるから、きっとその子も新しい人生エンジョイしてるよ!!


 なんて言ったところで、輪廻転生がある事を彼女が信じてくれるはずもなし。

 そもそも、そういう問題なのかって話だし。


 どうしたものか……。


 しかしまぁ、誰なんだろうな、彼女が好きだった人って。


 姫岸さんとは小中と同じ学校に通ってたわけで、当然俺も知っている人物という事になる。


 ヒントはいじめられてた子って事だけど、自分が知ってる奴らだけでもそこそこの数いるな。

 誰だろう。

 なかなかのハンサムボーイだった鈴木かな。いや佐藤って線もありえるか。

 山田だったらちょっとショックかも……。

 う~ん。


 色々顔が思い浮かんでくるが、どうもしっくりこない。

 というか、今思い浮かべてるような人物が正解だったのなら、自分がいじめから助けた子が死んじゃったって事にもなるわけで、それはそれでへこむ。


 俺がいなくなって、またいじめられて自殺しちゃったとかなら悲しすぎるぞ。

 さすがにそれはないと思いたい。


 事故とか病気とかかなぁ。

 事故とか病気……。

 事故とか……。


――ん? 事故!?


 そういえば、いるじゃねぇか!!

 いじめられまくって既に死んでる野郎が一人。俺のよく知る人物が!!

 よく知るって言うか。


――俺じゃん!!


 いや、落ち着け。

 まだあわてるような時間じゃない。


 早合点するな俺。


 確かに、姫岸さんの言う人物の条件に俺は見事当てはまっている。


 しかし、他に誰か別人が当てはまっていないと言い切れるか?

 過去にいじめられて、もう死んでしまった人間がいないと。


 すでに向こうの世界の情報からは遮断されてるも同然なのだ。

 俺が死んだ後に、誰か別のいじめられっ子が死んでしまっていたとしても気付きようもない。


 何かないか。それとなく確かめる方法は……。


 死因を聞く?


 隕石がぶつかって死ぬ人間が俺の他にいるとも思えない。

 これを聞けば俺か、そうではないかがはっきりするはず……。


 いや駄目だ。わざわざそんな彼女の気分を害するような事をしてどうする。


 別の方法があるはず。

 もっと安全に、それとなく確かめる方法……。


 そうだ。あれがある。

 あれなら完璧だ。


 彼女の気分を害する事なく、自然と聞ける!!


――いじめが始まった原因を聞いてみよう!!


 しかし、いきなり不躾に聞くのも変か。

 まずはその人がどういう人だったのか、人柄を聞き出す。

 惚れてた相手だ。悪く言うはずがない。


 そこですかさず俺はこう切り出す。

『すごくイイ人なんだね。そんなイイ人がどうしていじめなんかにあっちゃったの? 聞いてる限りじゃとてもいじめられるような人には思えないのに……』。


 完璧だ。

 この作戦完璧すぎるよ、孔明さん!!


 我ながら恐ろしい。

 瞬時にここまで思考してしまう自分が怖いわ、官兵衛さん!!


 よ~し、早速オペレーション開始だ!!


「……マスターが好きだったってその人、どんな人だったの? やっぱり素敵な人だったんでしょ?」


 少々強引に話題を狙いの方向へともっていこうとする俺。

 表面上は不自然な話題の転換。しかしその実、これは巧妙な計算の上で切り出した発言なのである。


 ついさっき、俺は姫岸さんの意中のお人が既に亡くなっているという事を知らず、その部分に触れるという特大地雷を踏むような行為をしてしまった。

 そこからのこの発言である。


 姫岸さんからしてみれば、この話題転換は気まずい部分に触れてしまったが故の急な話題転換にしか思えていないはず……。


 これは、強引かつ自然な話題転換という高等テクニックなのだ!!


「はい、とても……」


 姫岸さんが少し寂しげに言う。


「優しくて、勇気があって、困ってる人がいたら迷わず助けに行くような人でした。私なんかと違っていじめられてる子も積極的に助けてあげていて……」


 完璧だ、完璧な流れですよ半兵衛さん!!


「立派な人だったんだね。けど、そんな人がどうしていじめなんかにあっちゃったの? そりゃ反感を食う事もあったかもしれないけど、マスターの話聞くかぎりじゃ、とてもいじめられそうになんか思えないけど……」


 ハンニバルの包囲殲滅戦もかくやという、美しき我が戦術。


「それは……」


 姫岸里利奈は導かれるままに言葉を紡いでいく。


「ある事件があったんです……」


――事件!! きたきたきた、きましたよ!!


 流行る気持ちを圧し殺しながら俺は聞き返す。


「事件?」

「はい、覗き魔が出たんです。女の子の着替えを覗いた人がいて……」


 覗き魔事件、小学校時代、俺がいじめられる直接の原因となった、忘れもしないあの事件!!


「彼がその犯人に疑われてしまって……」


――やっぱり俺じゃん!!


 嬉し恥ずかし決定打。


 ここまで条件が一致する人物が俺以外にいるはずがない。


 憧れの人、姫岸里利奈の好きな人は、なんと俺だったのだ!!


 ばんざーい!!

 ばんざーい!!

 ばんざ……。


――……手遅れやないかい!!


 気付かないよ、そんな素振り全然なかったじゃない!!

 オイラもう死んじゃってるよ!! 生まれかわちゃってるよ!!

 オイラ恋愛マスターじゃなかったから乙女の繊細な心なんてわからんのよ……。


 どうするの? どうしたらいいの?


 この恋しさと せつなさと 心強さとが混在する状況において、俺に出来る事。


「覗きだって……、まさか信じられないなぁ。マスターの話聞く限りじゃそんな事する人には思えないよ。何かの間違いじゃないのかなぁ、はは……」


 それはせこい自己弁護を図る事だった。


「そうなんです!! そんな事するような人じゃないんです!!」


 力強く姫岸さんが言う。

 そんな無垢な彼女の言葉に、俺の良心が痛む。


――ゴメンナサイ……。


 本当は知ってるんです。

 その子、滅茶苦茶スケベな男なんですよ。町内一、二を争うドスケベマンなんです。


――しかし!!


 これだけは言いたいよ!!


 確かに俺は少年のスケベ度を競う、スケベ少年コンテストが開かれていたら県代表に選ばれるぐらいの自信はあるほどのスケベボーイだったかもしれない!!


 だけど、あの事件には……、覗き魔事件には闇に葬られた真相があるのだ!!

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