内外戦況
砦の外、シラハとクレイブの戦いは今だに続いていた。
地面のあちこちがえぐれ、窪みが出来ており、その光景が戦いの激しさを物語っている。
この終わりの見えない戦い、その最中、突如クレイブは動きを止める。
そして彼は言った。
「おめでとうシラハ、ゲームはお前の勝ちのようだ」
この戦いの決着を意味する言葉だった。
「勝ち……」
「ああ、そうだ。お前達の勝ちだ。残念だがこっちの駒切れさ」
クレイブの言葉にシラハは少し驚いたような表情を浮かべる。
――まさか彼が……。
砦内の戦況の悪さを把握していたシラハにとって、この勝利は予想外のものだったのだ。
「だったら……、約束は守ってもらうぞ」
「もちろんだ。……次も楽しめるといいなシラハ」
「とっとと失せろ!!」
シラハの言葉を一笑し、クレイブは彼の目の前から姿を消した。
同刻、砦内。
PKキスカは戦いの最中に念話によって送られてきたクレイブからの命令に怒り、壁を蹴り、大声で怒鳴った。
「糞がっ!!」
彼女の傍には戦いでボロボロとなったレティリアの姿と、その仲間、魔術師マリーの亡骸が転がっていた。
外での待機役が本来の役目だったマリーだが、実は彼女は、ログアウトしたリリナからイージスの窮状を伝えられ、その救援に向かっていたのだ。
しかしその道中、劣勢のレティリアに加勢したものの、キスカに討ち取られてしまっていた。
二人を同時に相手にして戦い、やっとこさ後一押しで勝ちだという所まで来ての退却命令、キスカが腹を立てるのも無理ない事だろう。
だが、だからといって命令を無視してまで戦いを続けるわけにもいかない。
このまま無理に戦いを続けても外の戦いを終わらせたシラハがすぐにでも駆けつけてくるはず、そうなれば彼女とて分が悪い。
「運の良いばばあだ」
そんな言葉を残し、キスカはレティリアを睨みつけながら砦の出口へと向かい去っていった。
何とか劣勢の戦いを凌ぎ切り、生き残ったレティリア。
手負いの身ながらも、彼女は急いでイージス達の後を追い、砦の奥へと向かう。
散乱する敵味方の死体の数々を通りすぎ、大部屋の扉に手をかけるレティリア。
そして扉を開け、中の光景を目にした時、彼女は一瞬言葉を失った。
「何よ、これ……」
まるで巨大な怪物か何かが大暴れした後のように、壁や天井のあちこちが崩れ、ひび割れている。
レベル5程度のNPCとの戦いでこのような事になるものだろうか……。
状況を理解し切れず戸惑うレティリアだったが、床に倒れているイージスの姿を発見すると、思考を中断し、慌てて彼のもとへと駆け寄った。
そして彼女は彼が気絶しているだけなのだと確認すると、安堵の溜め息を漏らしたのだった。




