お約束ST
「必要な物はだいたい揃ったしそろそろ行こうか。残ったアイテムは餞別としてここに置いていくよ」
アイテムの整理を終えて建物の外へと出た俺達は、犯人達の拠点に乗り込む前に一度ナナムのギルドハウスへ向かう事にした。
そこで救出作戦についてシラハさんと最終的な打ち合わせをする為だ。
だがルル・ルクルス本部の敷地外へと移動するその途中、後方から聞き覚えのある声が俺達を呼び止めた。
「シラハ!!」
振り返った視線の先に立っていたのは、さきほど部屋にいたエルフの女レティリアさんとその他多数のプレイヤー達。
ぱっと見で十人はいるだろうか。
シラハさんのあとをついて部屋に地図を運んできていた男の姿もある。
彼女達の姿を見てシラハさんは言う。
「わざわざ見送りに来てくれたのか?」
「馬鹿言わないで、そんなんじゃないわ」
レティリアさんは俺達を見送りに来たわけではないのだと、否定した。
「……だったら、文句でも言いにきたのかい?」
「そうね。言ってやりたい事は山ほどありますけど、それはまた今度にしておいてあげる」
少しだけ寂しそうに微笑み、レティリアさんは言葉を続ける。
「……私達もあなたについていくわ、シラハ」
「よせ、お前達にまで迷惑をかけるつもりはない」
「あら、今まで散々迷惑をかけられた覚えがあるのは気のせいだとでも?」
「茶化すなレティリア。真面目な話だ」
「だからよ。……日頃気まぐれにつき合わせて他人に散々迷惑をかけてる癖に、深刻な問題になると途端に自分一人で抱え込もうとする。あなたの悪い癖よ」
「そうは言っても今回ばかりは……」
「今回も何も、困った時は素直に助けを求めてくれたっていいじゃない。それとも私達はそんなに頼りにならない?」
そう言ってレティリアさんは自身の金の狼のバッジを外し投げ捨てる。
それに続くようにして他の者達もバッジをシラハさんの目の前で捨てて見せた。
「シラハさんのいないギルドなんてつまんないっすよ」
「俺達もう腹決めてますから」
「困ってる女の子一人助けられないんじゃヒーロー失格だからな」
「いつもシラハさんに助けてもらってたし、私達も恩返ししたいんです」
「ロクショウさんのもとに残るより、シラハさんについてく方が断然面白そうだしね」
「私も、私もついていきます~!!」
口々に自身の意思を表明するシラハさんを慕う者達。
「あなたが彼女達の力になってあげたいと思うように、ここにいる皆は、あなたの力になりたいと思っているのよ」
レティリアさんの言葉に、少しだけ声を震わせながらシラハさんが言う。
「全く困った奴らだ。……だけどありがとう」
「お礼を言うのは、リリナちゃんを助け出してからよ」
「そうだな。よし、皆、力を合わせて囚われの少女を助け出そうじゃないか!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よろしいのですか? ロクショウ様」
ルル・ルクルス本部のとある一室で、仮面の一人がロクショウに尋ねた。
その声は若く、女のものだった。
「なにがだ」
「シラハ達をこのまま行かせてしまっては、事件の黒幕を掴むのに支障が……。それに彼に追従しようとする者はレティリア達以外にもまだいるかと」
「それでいい。ステージは次の段階に進んだのだ。奴の信奉者を抱えていてももはや邪魔になるだけ、かえって掃除する手間が省けるというものだろう。尻尾を出すかどうかもわからぬ黒幕の正体など安い代価だ」
「ですが大丈夫でしょうか。巨人殺しの名はイーゴスにおいて今なお大きな影響力を持っています。我々と対立するギルドも放ってはおかないでしょう。もし、あの男がその何れかに与するような事があれば……」
「『アリアンロッド』、『ダスク』、『ローゼンドーン』、それに五つの騎士団。お前の知っているシラハという男がいったい何れのギルドに与するというのだ」
「それは……」
「奴にはたいした野心がない。野心がないから利害で動かぬ、動けぬ。他のギルドが誘いをかけて素直に応じるような人間ならば、そもそもここを自ら去るような真似はしていない」
「このまま放っておいても問題ないと」
「野心のない者など。牙の抜け落ちた獣と同じだ。金の狼であってこそ、巨人殺しの名には大きな価値があったのだ。奴はもうただの一プレイヤーに過ぎない。いつでも潰せる」
去っていくシラハ達を部屋から見送るロクショウ。
彼の表情には、古くからの戦友との別れに対する哀愁の色など一切ありはしなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇◇◇レティリア◇◇◇
レベル15:魔法戦士:エルフ
MAXHP163:MAXSP43:MAXMP37:精霊(緑)
赤3:青3:緑9:黒-5:白1
力:85
知力:91
頑強:79
俊敏:90
器用:96
魔力:88
精神力:91
◇スキル◇
ゲート:転移魔法
ゴーレム召喚:魂無き操り人形ゴーレムを大地から生成し使役する
などその他いろいろ
◇装備◇
『祝福された銀の剣+3』『霊樹の弓』『エルフィンアーマー+3』『ジルノームの靴』『連鎖生成の指輪』




