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side僕④

 あの日から数年が経った。

 

 あの春の桜は散って、また咲いて、そして散っていった。

 

 大学には真面目に通っている。何の目的もないけれど。

 もともと君がいるという理由だけで選んだ人生だ。何がしたいかなんて、わかるわけもない。

 

 僕はあの時、何の考えも無しにテレビをつけたことを後悔している。

 真実を知らなければ、いつまででも桜の下で君を待つことができた。たとえ君が絶対に来なかったとしても、僕は待ち続けることができたのだ。

 

 なのに、僕は知ってしまった。

 

 どうしてあの時、リモコンなんて手にとってしまったんだろう。

 どうしてテレビなんて見ようと思ってしまったんだろう。

 

 自責の念に駆られてばかりだ。

 

 見なければ、聞かなければ、知らなければ……

 そうすれば、どんなに小さな希望にも縋りつくことができたのに。それなのに真実は、そんな小さな希望すら容赦なく奪っていく。

 

 ボタン一つ押さなかったからといって、未来は何も変わらないことくらいわかっている。

 僕がどう足掻いたところで、事実が揺らがないことくらいわかっている。

 

 だけど、何か。何でもいいから自分を責めていないと、認められない。

 今もまだ君の帰りを信じて、待ち続けていない僕を。

 君を置き去りにして時を刻み続けていく僕を。

 

 

 弱虫だ、って笑われるかな。過去ばかりに囚われて不甲斐ない、って思われているかもしれない。

 

 自覚はある。

 

 でも、“今”に溶け込めている自信だってある。

 

 こんな僕だけど就職が決まったって言ったら、君は驚くだろう。

 

 僕には、自覚も、将来も、未来もあって、明日だって来る。

 

 失くしたのは希望。来てくれないのは君だけだ。


 

 

 あの日以来、大学の桜の木に近寄れたためしがない。

 意識的に回り道をしたり、気がつけば避けていたこともあった。

 それは、希望を失ったはずの僕が、君がそこで待っていることをどこかで期待しているからかもしれない。


 

 終わってしまったあの日。終わってしまったあの春。

 終わってしまった君の人生。

 だけど、終わらない僕の心。

 

 散ってしまった飛行機。散ってしまった桜。

 散ってしまった君の命。

 だけど、散らない僕の言葉。

  

 

 

 僕は君に恋をしている。


 この恋に終末はやって来ない。


 僕はずっと大好きな君に、恋をしながら生きていく。

 


 初恋は永久だ。





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