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side僕③

 たった1週間で景色はすっかり変わってしまった。

 見上げられ、美しいと囁かれていた花は、今や地に落ち、誰の目にも留まらなくなっていた。

 

 だが、僕の気持ちは何一つ変わらない。

 

 ……それはつまり、この緊張感と1週間戦い続けたことも意味しているのだが……

 例に倣って、今日も寝不足。

 落ち着かない足取りで、家の中を行ったり来たり。

 何回階段を上下したのだろう。

 既に、目を閉じていても家中を歩き回れる気すらしてきた。

 

 君が国境を越えてってくるのは昼過ぎ。

 そう考えると、まだまだ約束までに時間が有り余っている。かといって何か作業が手につくとも考えられない。

 とりあえず、目に付いたソファに腰掛けた。

 リビングに限らず、今この建物の内側には自分しか存在しないので、僕の奇怪な行動を気にする者はいない。

 

 どの程度時間が経過したのかと、壁に掛けられた円盤に目をやるが、短針が12に辿りつくことすらも遠い未来のように感じられた。

 

 鼓動を押さえ込むように、両手を胸へあてがった。

 秒針よりも速く動く僕の心臓が、いつまで正常に時を刻み続けられるのか、不安でしかたがない。

 

 そんな気持ちを紛らわすように、ソファの端に無造作に置かれたテレビのリモコンを手に取った。

 何の目的も無しに電源を入れると、無音だった空間に音が広がる。

 

 

 同時、先程まで早鐘を打っていた心臓が止まった。

 

 

 画面に表示されたのは、1週間前にずっと見つめていた名前。

 

 大好きな、君の名前。

 

 アナウンサーがまるで機械のように抑揚もなく何かを言っている。だけど何も耳に入ってこない。

 なぜだろうか、いつもは意識しない彼らの無表情が、ひどく人間離れした冷めたもののように感じた。

 

 どこからか、考えるな、知らない方がいい、という警鐘が聞こえた気がする。

 

 

 だが、もう遅い。

 

 

 見開かれた目は捉えてしまった。

 

 “飛行機墜落”という文字を。

 

 

 緩められた右手から、リモコンが床に引き寄せられるように落ちていった。

 衝撃で、中に収まっていた単3電池が放り出される。

 それは手の届かない遠いところまで転がっていってしまった。

 


 ごろごろごろごろ、ごろごろごろごろと。



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