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新約:魔法少女マルクトマルコ  作者: 蓬松
第一章:白と黒の魔術師
2/8

2nd.魔術師と魔法使い(Wizard and Warlock)

「ん…あれ、私……!?」


目を覚ましたマルコは、己の置かれている状況に混乱した。

気が付いたら何故か手術着を着せられ、ベルトで手足を固定されたうえで冷たい手術台の上に乗せられているのである。

部屋の全貌は暗くてよく分からず、傍らにはなぜが手術用の手袋とマスクをつけた――見知った喫茶店のおねーさん、明が佇んでいた。


「あ…あの、メイさん…?」


「ふっふっふ~、今から貴女は変身ヒロインとなるのよぉ~、ね♪」


そう言って黒い笑みを浮かべる明の手には、何故か工事現場に使うような桐貫ドリルが握られている。

明がグリップを握るとドリルはギュリイィィィと歯医者のそれよりも重く嫌な音を立てて高速回転する。

あおむけの状態にその音に嫌な連想を掻き立てられたのか、マルコの顔はどんどん青くなって思わず首を横に振る。


「あ…あの、何が何だか…ひゃあ!?」


「じつはおねーさんはねぇ、悪の科学者なのよぉー、イカ女なのよぉー…ねぇ?」


「ねぇ?と訊かれてもぉ!!…ひぅっ、やぁ!!」


明は手術用に開けられた服の穴からマルコのおなかにひたひたとドリルの先を当てる。

当然先端は鉄なので冷たい、それに充てるモノがドリルである為危機感が触覚を上げているのである。


「やっ…やめ…やめてぇっ…メイさぁん…」


泪目で懇願するマルコに対し、ゾクゾクと愉悦に満ちた表情で明はマルコを見る。


「ふふふ、それじゃあ改造手術しましょうかしらねぇ~、痛かったら手を挙げて下さいねぇ~♪」


「麻酔なし!?…ぁーーーーー…!!!」


悲鳴がどこまでも暗い手術室にこだました。




「ふぁ!!」


冷や汗を大いに流しながら、マルコは鬼気迫る表情でカウンターから起き上がった。


「目が覚めたかしらぁ、ね?」


「……ッ!!!!!!!」


目の前にはグラスを拭く明の姿が…思わずマルコはズザザッ!と、音を立てて引きさがる。

よくよく周囲を観察すると、そこは明の営む喫茶Avalonだった。


「あらあらぁ…何もそこまで驚かなくてもいいじゃなぁい、ねぇ?」


くすん、とわざとらしく擬音を呟き、目元をハンカチで拭う明に、カウンターの上に乗った白い子竜が言い返した。


「夢の中で悪戯でもしすぎたんじゃないの?」


「失敬な、私だってそんな領域に干渉することなんか殆どないわよぉ!ねぇ?」


うるうると訴える瞳でマルコを見る明、しかし先程の恐怖の夢は少女に重いトラウマを刻みつけたのだろう。

軽くそっぽを向くマルコに、明はガン!と強いショックを覚えた。


「酷いわ酷いわ、私ただ真面目に働いてるだけなのにぃ!」


明はいじけたように言うとよよよとマルコの居る椅子に寄りかかった。


「ダウト、あんたほどフリーダムな魔法使い見たことねぇよ」


「あ…天使、さん?」


明を冷たくあしらうその幻想生物を見たその時、マルコはようやく自分の状況を思い出した。

自分は魔術師を名乗る転校生と、ブランクという怪物になってしまった人を助けるために…まるでアニメに出てくるような魔法使いになって…そして、ブランクを倒した瞬間に安心して気絶してしまったのだ。


「神賀戸くん!!神賀戸くんは!?」


「安心して、彼はいきなり魔力や意味ルーンを出し入れされて体が吃驚してる状態なのよね

だから今は店の奥で休ませているわ、安心して…ね」


優しくそう言うと、明はマルコの頭を優しく撫でた。


「んゅ…明さん、一体…この街に何が起きているんですか?

…神賀戸くんは……明さんは何でそんな事を知ってるんですか?」


焦って聞こうとするマルコの唇に、明は人差し指を充てて制止する。

カウンターの奥でゆっくりと紅茶を淹れて差し出しながら明は言った。


「落ち着いて聞いて…今説明するから、ね♪」


 ◆


「早い話、貴方は魔法少女になったのよ…いや、私が貴女を魔法少女にしたというべきねぇ?」


それを聞いたとき、一瞬さっきの手術台の夢を思い出し顔を青くするマルコ。

しかし、あれはあくまで夢だと思考を切り替えそれがブランクから助けてくれた天使を呼び出したあの優しい呪文だと確信する、あれは明の声だったのだ。


「魔法少女…いえ、私たちの業界では『魔法使い』と呼ばれる存在がいる。人類史の後継者、能力者、神仙…まぁ色々な名称で呼ばれているけど、根本はどれも同じもの。結構珍しい体質のようなものでね、運命によってそれになる事を定められた英雄的な存在…世界を巡る大きな大きな魔力…『大魔力(マナ)』を用い自らの意思でこの世界に奇跡を起こす事を許されたモノの総称ね」


そう言うと、明は手のひらを掲げて蒼色の焔を出して見せる。

それは否定の炎、空気の存在を否定する事でこの世に本来あり得ない変化反応を引き起こし、その余波としてこのような色の炎が生まれるのだ。


「わぁ・・・」


その神秘的な光にマルコは一瞬心を惹かれるが、その焔を握りつぶして明は続ける。


「といっても私はその中でも『悪い魔法使い』だけどね…

これは貴女に魔法を渡す前の話、私は元々持っていた魔法の力を使って『王国』の魔法を手に入れたのよねぇ。ここで問題が出てきたのよ…本来魔法ってのは一人一つしか持っちゃいけないって決まりがあって、魔法が上手く使えなくなっちゃったのよねぇ。しかもそこでこの街に何処かで私とは別の『悪い魔術師』が暴れてるみたいなのよねぇ」


魔術師…神賀戸も名乗っていた魔法のような不思議な力を使う者…

ブランクを作ったのも魔術師だって神賀戸や天使が言っていた事をマルコは思い出す。


「『魔術』っていうのは、魔法使いの起こす奇跡――『魔法』を、一般の人でも使えるようにしたものね。

ただし、自然や神の力を借りる魔法とは違って魔術は大きな代償を伴うし、面倒くさい準備を要するけどね。

たとえば意味(ルーン)、これは魔力…自然があらゆるものに持たせた運命のようなものね?

万物が持つあらゆる役割や運の良さや悪さ、あとはそれがどういった重さで未来でどういう状態になるのか決めるの…そう言ったものを持っているものは無意識に小さい魔力を放出して己の役割を果たそうとするのね。この魔力を『小魔力(オド)』というのね。

実は、長~い修行や儀式によって意味が寮の生んだのに余ってしまった小魔力ってのは溜めこむ事が出来るのね?魔術師はそうやって溜めこんだ魔力で魔法を再現した奇跡を起こせるわけなのよ。

でも、大量の小魔力を目的に意味を奪おうとする魔術師もいる…それが悪い魔術師がブランクみたいな意味を奪われたものを利用して意味を集める目的ね」


明はできる限りかいつまんで説明したが、詳しい事はマルコにはよく理解できなかった。

しかし、魔術師である事がとんでもないリスクを負う存在であり、同時に私利私欲の為に他人から大事なものを奪う人が居る…それだけは理解できた。


「で、そいつに対抗しようにも理由も手掛かりもないし私の魔法はブランクには相性が悪くてほとんど無意味。しかも一人につき一種類って制約のせいで『王国』が妨害して元から持っていた魔法もろくに使えないし

邪魔だなーどうしたものかな―と思っていたら、丁度よく貴女達が襲われていたから

私はとっさに『王国』の魔法を貴女に譲ったわけなのよねぇ♪」


「じゃまだなーって…あはは…」


魔法使いである事を明かしながらも、どこかいい加減ないつも通りの明にマルコはどこか安心していた。

しかしそこで、口を挟む少年の声。


「魔術は魔法の模倣であるがゆえに魔法使いも極めれば魔術を使える…そうして自分の弱点を補う魔法使いも居るんだ…

お前が一番怪しいんだ…『反論(クリフォト)の魔法使い』…!」


店の奥からよろよろと神賀戸が現れ、明を睨みつつ言う。

眼鏡を外した連のその視線は、青い宝石のような瞳からは信じられないような憎悪と侮蔑の念が込められていた。

その殺気にマルコは怖気づきながらも、神賀戸に反論しようと口を開く。


「そ、そんなことないよ、メイさんはちょっと怪しいしいい加減なところもあるけど

ずっと前からこの町にいる優しいお姉さんだよ?」


「そんなことは充てにならない、それも魔術の準備期間かもしれないし

そもそも明といったか?その女の魔法の性質は、通常ならまず得ることはできない

魔法でも魔術でもタブーとされている反論(クリフォト)の魔法…」

神賀戸が言い切ろうとしたが、明に指先でマルコと同じように制止される。


「言ったでしょう、魔法は先天的であれ後天的であれ魔術と違って体質のようなものだって…それともきみは善悪2元論のゾロアスター学派だったかしら?」


「……ならおまえがこの件にかかわっていない証拠は何だ、絶対悪の魔法使い(アンラマンユ)」


神賀戸が明のことをそう呼んだときに、マルコは気づいた。

明の口調が、いつもと違うアクセントの…彼女が落ち込んだ際に使う口調だということに。


「物理的な証拠はない、でも私はあなたたちの目指す『神』の域にこれっぽちも興味がない

それじゃあ不十分かしら?」


明がそういうと、魔術師は考える・・・重苦しい雰囲気が喫茶を包むが、やがて神賀戸は音をあげるように謝罪した。


「悪かった、事情の確証を得る前に確定するのもタブーだった…それに失礼だった」


それを聞いた明はわざとらしく安心するように胸をなでおろしてため息をついた。


「よかったわぁ、悪の魔女が悪いことをする前に犯人扱いされたら面目も何もあったものじゃないし、ねぇ♪」


元に戻った明の様子を見てマルコも安心する、どういった事情かは相変わらずわからないが、明にとって反論の魔法使いであることを非難されるのはきっと体質を非難されることに近いものなのだろう。

そして、明は唐突に神賀戸に抱きつき背中を撫で回した。


「ぶぁ!?…な!!」


「それにこんなかわいい子に殺気なんて向けられたらおねーさん悲しいわぁ」


「や…やめろっ!!こら…!!」


目を白黒させて明に撫で回され、神賀戸は顔を真っ赤にして混乱した

マルコや美香にいろいろおごってくれる理由も冗談だろうか、そう言っていたのだが


『可愛いは正義!』


それが明の信条らしい。


「あー…メイさん、ここに学ランの男の子こな…居た

…ふぅん、これはいったいどういう状況なのかなぁ?」


ドアを開けてアヴァロンに入ってきた美香は、その状況を見て一瞬呆然とするが

すぐ面白そうな顔をしてマルコに状況を聞きだそうとする。


「あ……えと、その…」


どう言おうかマルコがおろおろしていると、マルコの前に魔方陣と光る文字が現れる。


≪これは自動筆記、ご都合主義的に魔法魔術関係者にしか見えないから安心してね

とりあえず魔法云々については隠しておいてね、ばれたら魔法で動物に変えちゃうわよん

あなたの魔法については、また後で話すことにしましょうね By明≫


つい言葉で返事をしそうになるが、ばれたら動物に変えるという文を見て口をつむぐ。


「んー、どしたの?」


美香がいつもと違うマルコの様子に興味を持ち始める。


≪何故状況を隠す理由があるか聞かれる前に言っておくわね

お 約 束 だ か ら 、 ね ♪ By明≫


そんな明の文章とよくわからない行動理念に脱力しながらも、明の書いた状況設定に合わせながらマルコは何とか美香に納得いくような説明を開始した。


 ◆


「いやー神賀戸くんが明さんの従兄弟だったなんてー、じゃあ今朝に教えてくれたってよかったんじゃないの?」


 ココアを一口煽ってから、美香が文句を垂れる。


「あらー、だって折角の謎の転校生じゃないのぉ、黙ってた方が面白いでしょう、ね?」


「な…謎のって…くっ」


 お茶目に頬に指をあてて首をかしげる明の出したあまりにもあんまりな理由に神賀戸は呆れたような顔で抗議しようとするが

 明に一睨みで黙らされれる。当然、神賀戸が明の親戚である筈がない。

 総て明のついた嘘だ、彼女が詳細も知らない非日常の存在を名乗る少年をこのような形でフォローするのはひとえに『可愛いものは正義』という明の持論のみで判断された事であって、それに対して救われた神賀戸は何も言う事は出来なかった。

 しかし、ここで対応に遅れたがゆえにどうしようもなくなった哀れなマスコットが居た事も忘れてはならない。


「………っ!!………っっ!!!」


 美香の手元でひたすらふにふにされている白い竜やら鳥やらのような不思議生物は、ただ必死にぬいぐるみのふりをして耐えている。

 美香は特に、不思議な材質でできた仮称天使の鱗の感触が気に入ったのだろう、鱗を一枚いじり揉まれるたびにその影の薄さから先ほど自己紹介する事さえままならなかった哀れな大天使長補佐は悲鳴を上げそうになり鋼の精神でそれを押さえていた。


「このシルクのような真珠のような肌触り、今日一番乗りで喫茶店に入ったマルコへのプレゼントにしたって明さんはやっぱり太っ腹だよねぃ~♪早く私の分もできないかなぁ…」


「~~~~~~~~~~~~~っ!!!ぐへぁ…」


 美香は手作りぬいぐるみと言われた天使を力いっぱい抱きしめる。

 いくら天使とは言えそのサイズは小動物、肺の中の空気が一気に押し出され天使はぐえぇと言いそうになるがそれ以前に肺の中に空気がないため辛うじて発音せずに済んだ。


「み…美香、そろそろそのぬいぐるみ…」


マルコが美香におずおずと尋ねる。


(た…助かった、特例で人間に選ばれた魔法使いとはいえさすが私に祈ったにんげ…)


「その、まだ私もあんまりもふってないの…。」


「あいよ~♪」


 マルコの頬を赤らめたその上目づかいは状況を知らない人、或いはそれに慣れていない人であれば思わず理由も何も問わず財布の中の諭吉さんを問答無用で渡してしまうほどの威力を誇るだろう。

 しかし、天使にとってはそれが自分を拘束し拷問する二人目の悪魔の挙動にしか見えなかった。



 死にかけた天使の体がカウンターの上に置かれた頃、美香は門限の時刻に差し掛かった為マルコも今日は天使を鞄に入れてそのまま帰る事にした。

 明の従兄弟と言う事になってしまった神賀戸はそのまま明の喫茶店に残る事になってしまったが

 そもそも美香の家は門限や規則には厳しいため今日の早起きや早登校は許されたのだろうかとマルコは思う。

 しかしそんな疑問は些細なことだ。

 美香と一緒に帰路を辿る道中、力尽きて地面に寝る太一の姿があったが美香の提案であえて放置。

 それも些細なことだ。

 マルコはただ今日…それもついさっき遭遇してしまった非日常の事件の事が再び頭を埋め始めていた。

 

 ◆


目が覚めたばかり、明の話を聞いているときは正直夢うつつな感じで魔法使いとして二人のブランクを助けた事は頭のどこかでリアルな夢だと思っていた。

マルコはこの日、自分が寝起きが悪いという事を自覚した。

 いや、それにしても明も美香も喫茶店を含めた町の様子も何もかもが変わらな過ぎて…


(まるで初めからそれが当たり前だったかの様になってて…明さんは一体どうして…)


「…ルコ?マルコー?」


「はぅ!…な、なに?」


 美香が心配そうに話しかけている事に気付き、マルコははっとして美香に返事をする。


「しっかりしないと駄目だよマルコ~、今日から私達晴れて『公式』実行委員会なんだから♪」


 美香がそう言って、ばしばし肩をたたく。

 美香は何時だってそうだ、いつだって自分の美学に正直な女の子なのだ。

 鬼ごっこをしたいと思ったら、正直にグラウンド中から声をかけて周り大規模に鬼と人間の戦争を始め

 重い荷物を持ったおばあちゃんを見て助けたいと思ったら、総ての荷物を一身に背負って家まで送る。

 やりたいことを一番やりたい形で実現する事こそ美香の美学なのだ。

 そんな美香の姿と、ブランクを助けたいと思った時の自分の姿は何処かかぶっていたような気がした。


(あぁ、たまには私も我儘が言えたんだなぁ…)


 美香を見て、いつもパートナー役やサポート役に廻ることの多いマルコはそう思った。


『≪魔法の力については後で話しましょうね。

私も、とっさにあなたに渡しちゃったから後悔はしているのよ…

魔法も魔術も、本来マルコちゃんの世界には必要のないモノだから

必要ないと思ったら明日の朝にでも私に返しに来て…ね?≫』


 明がマルコに読ませた自動筆記の最後はそんな文章で締めくくられていた。


「美香…私人助けしちゃったんだ、今日」


「うん?」


 マルコの言葉に美香は耳を傾ける。


「助けたいって思ったから、我儘でもそう思ってむりやり助けちゃったんだ。」


「…ふむぅ、それで?」


 美香は何処か成長した感じを見せた幼馴染に、いたずらっ子な笑みを浮かべて問いかける。

 マルコもマルコで、その笑みにいい笑顔で答えた。


「なんだか、我儘を押し付けたみたいで…すっきりした」


「癖になるだろぅ♪」


 美香の…回答ともとれる問いに、マルコは笑顔でうなずいた。

 なんだか押し付けになってしまうかもしれない、或いは自分勝手だ

 でも、それでいいと正直に思えたのは自分がそんな正直で、そういった我儘が上手な友達に恵まれているからだと思う。

 あのブランク…意味を奪われた人々は、そしてその原因たる魔術師はまだこの街に居るのだろう。

 ならばマルコは明に再び我が儘をする、それだけの決意と理由をマルコは持っていた。



「で、『この町』に来た魔術師ということは君も何か知っているんでしょう、ね?


私以外からこの町の魔術的意義が知り合い以外にばれることはただ一人の弟子を除いて有り得ない

 それに私はあの弟子に関しては少なくとも私の師匠以上に信じているつもりだから通常それは 有り得ない しね?

 だとするとO∴H∴社か十字新派の騎士団から来たってところかしらね?」


「後者だ、流石だな。自分の周囲を守るためのコネクションは確立されているってことか」


 思考する余裕ができたとはいえ、神賀戸の顔はいまだ赤かった。

 何故なら未だ神賀戸はぬいぐるみよろしく明に抱きつかれたまま尋問されているからだ。

 明は普段コートで着やせ着膨れはしているがそれでも解るほどの造形的に見事なスタイ ルを持っている。

 少なくとも後ろから抱き疲れている神賀戸の後頭部には枕のような二つの塊が押し付けられているのだから

 たとえ魔術師を名乗るものであっても人間の男としては意識せずにはいられないのは必然である、絶対に。


「かーわいぃねぇ♪」


「うぐうぅぅ…」


 明は構わず…というよりむしろその様子を楽しんでいるようだ。


「言っておくが、外見がどうであれ僕はこれでも37歳…少なくとも君より年上だぞ?」


「知ってる、ちなみに私は二十歳よん…ね」


 この屈辱的な状況を打破するため、半分はのぼせ上がった脳で導き出した最後の手段…というより秘密だったのだがあまりにもあっさりと即答されてしまった。


「魔術の対価に年齢を差し出す魔術師がいるっていうのは聞いたことがあるけど、その類?

…何かそれって小説や漫画で出てくるような若返り目的で魔法に手を出すやからが喜びそうな白ものよねぇ」


 ぐぅと観念したように…しかし魔法使いに対して魔術のプロとしての性質か、正確なところを述べる


「…正確には魔力の絶対量を得るために肉体年齢のみを魔力に変換しているんだけれど

したがってテロメアや寿命の絶対量も増えることはない、それこそ魔法の域だ…ぬあぁ!?」


「ムキになっちゃってか~わいぃ~ねぇ♪」


 明の抱きつき攻撃に、問答無用の撫で回し攻撃が追加される。

 神賀戸はジタバタともがいて明の手から離れると距離を置いて、威嚇するように険しい顔をしていた。


「あぁん、折角の可愛い顔が台無しよん?」


「うるさい!お前に何が解る、魔術師の実験で勝手に成長を止められたんだ…だから僕は貴様等のような魔術師が憎くてしょうがない…僕は復讐者だ、それ以上僕を愚弄するな…!!」


突き刺すような視線にさらされながらも、明はあらあらと呑気に呟いて頬に手を置いた。

  

「成程ねぇ…さて、新しい魔術理論についての情報を得るのもいいのだけれどそろそろこの町に何がいるのか…何が行われようとしているのか言いなさい?

早くしないと、『間接権限』で騎士団を脱退させた上で本当に私の従兄弟として日本に戸籍を置かせるわよ?」


「団長…カイン・A・C…先代の反の魔法使いの直弟か…。」

 

 その名前を聞いたとき、明の目が糸から鋭い針のように薄く開かれる。


「お互い隠し事には向かない性分じゃない、ここは情報を共有した上で互いについて語りましょう?その為にあの偽善者は貴方をよこした、違うかしら、ね?」



「魔法使い…続けようと思うんだ」


「…偉い!それでこそ私に祈った者だわ!」


 夜、パジャマ姿でベッドの上でお互い正座―天使は普通に降りてるだけだが―しながら、お互いの第一声はそれだった。


「…でも、何で?」「え…?」


 天使の問いにマルコは首をかしげる。


「…他でもない魔法使いを選定する私たちが言うのも難なんだけど、魔法使いを続けるってことは

あのブランクやそれを作った魔術師と戦うことを意味するのよ?

さっき自分で言ってたけれど、あのメイって魔女がわざわざ自分だけで不利な相手と戦う事なんてしないだろうから

それに…何より魔法使いになったといっても貴女は特例でメイに選ばれただけの一般人じゃない…」


「天使さんは明さんとお友達なの?」


 マルコの問いに天使は両羽を持ち上げてやれやれと言ったポーズをとるが、否定も肯定もしない。


「私はメイに無理矢理召喚されたのよ。チート技で無理矢理呼び出しておいて邪魔とかいうもんだから意地でも離れなかったの

私を連れてるってことは『王国』の魔法使い権限も有してるってことだからね

…で、どうなのよ?」


「…よく、解らないよ…だけど、見ちゃったから。

あの白い化け物と戦ってる神賀戸くんも、化物にされて苦しんでる人も

だから助けなきゃ、どうしようもなくすっきりしないんだと思うんだよ」


 そう言うとマルコはパジャマの胸元を少しあける。

 相手が子供で同性?とはいえ、いきなりのマルコの行動に天使は顔を赤くしてそっぽを向きかけるがマルコの胸の真ん中にある傷跡を見てそれをやめた。


それは深く、大きな傷跡で…まるで絹の上に大きなかさぶたが張られているような傷跡。

大きくはないはずなのに、その深さと生々しさが小さいマルコに付いている事でより大きな傷跡に見えた。


「それは…?」


「私ね…死んじゃいそうになった事があるの

二年前奈良に家族で旅行に行ったときに、私だけはぐれて

そのあたりの記憶はあんまりないんだけど、目が覚めたら病院だった…通り魔にやられたんだって」


マルコは懐かしむように傷跡をさする。


「そんな私を助けてくれたのも…偶然奈良に来てた明さんだったっけ…通り魔をやっつけて病院に運んでくれたの。お礼を言ったら、『可愛い子を助けるのに理由なんかない、ね♪』だって」


はにかんだ笑顔を見せるマルコは、それでもやはり明に確かな憧れを持っていたのだ。


「…明さんも美香も、そんなわがままで人を助けちゃう人なんだよ」


「……」


 我儘、マルコは誰かを助けると言う事をそう表現した。

 事実、きっとその行為は誰かの運命を自分の思うままに改変すると言う行為ともとる事が出来るだろう。

 ましてや運命が定められている事を知る魔術師たちの世界に所属するエリヤなら尚の事それが理解できた。


 その上で、マルコはその我儘を通すと言った。

 それは憧れの為、美香のように全てを巻き込む我儘を、明のように誰かを救う我儘を。

 自分の選んだ道を突き進む、地味で臆病なマルコはそれでも頑固にその道を進む覚悟を持っていた。


 自分もそうだった…魔法で契約を結ぶ規制がゆるくなっていて…暫定的な主であった明が命じていたとしても本来厳格に魔法使いを選ぶべきであるはずの自分が彼女を魔法使いにしたのも、理由なんてなかったのかもしれない。


「だから私も、我儘で人を…ブランクにされた人たちや神賀戸くんを助けたくなったんだよ…だめ、かな?」


「ダメも何も、理由としては十分に合格点よ!いいわ、貴方が私の主人とこの大天使長補佐、片割れにして最後の剣サンダルフォンが認めてあげる」


「サンダル…フォン?あぅっ」


 サンダルに電話がくっついたようなものを想わず連想し、マルコは天使に羽でぺしぺし叩かれる。


「長いならエリヤでいいわ、よろしく!!」


「…うん!私はマルコ、晶水マルコだよ。よろしく!」


 二人は選ぶ者と選ばれるもの、そして仲間として握手(翼)を交わした。


「じゃあ、メイに連絡しないとね…自動筆記の仕方わかる?」


「え?…えっと、それって私にもできるの?」


「魔法魔術の基礎中の基礎だからね。これから魔法も練習してもらうわよ♪」


 そんなこんなでマルコはエリヤに教わった自動筆記の魔術で、明に手紙を送るのだった。


《魔法使い…やってみます! Byマルコ》


 ◆


ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピp


「んゅ…もう朝ぁ…?」


 目覚まし時計が差した時間は午前5時半、些かましになったとはいえマルコ達小学生にとっては早すぎる時間だ。



「いってきまぁす!!」


「おぉいってらっしゃい…ってまるこー、まだこんな時間だぞぉ?」


 のんびりした口調で話しかけてくるのは新聞紙を片手に持ったマルコの父、晶水計一郎(あきらみずけいいちろう)

 女子高の体育教師で、近所の野球チームのベテラン監督もやっている。


「いいのー、ちょっと明さんのところ行ってくる―」


「ふむ…」


計一郎は納得したようにかえすと、再び新聞を広げないように見入った。


「へぇ、最近はこういうぬいぐるみが流行りなのか…」


 新聞には最近大人気中の蜘蛛のぬいぐるみについての記事が掲載されていた。


 ◆


 喫茶店アヴァロンのドアを開けると、そこにはホットココアを用意した明と昨日とまったく同じ学ラン姿の神賀戸がいた。


「魔法少女…続けるみたいね?」


 満足そうに明が言うと、神賀戸は深くため息をついた。


「まったく、説明しなかった僕も悪いが…あんな理由で決められるとは」


「護られる側の人はおとなしくしなさぁい、君はしばらく魔術も殆ど使えないんだからね♪」


 ぐ…と神賀戸は黙り込む、先日意味を奪われかけてからただでさえ無駄使いできない魔力を大幅に失ったのだから仕方がない事だった。


「早速だけど、ちょっと感覚を済ませてごらんなさいね?」


「え………っ!!」


 言われるがままに肌の感覚を研ぎ澄ませたマルコは、ある一点に強烈な悪寒を感じた。

まるで皮膚を剥がれた他人の体に触ってしまったような悪寒、マルコは実際そんな事は経験をしたことなどないが、感覚としては非常にそれに近い怖気を感じてマルコは身を縮こませる。


「ブランクが公園に現れたわね。今はまだいいけど、このままだと遊びに来る子供たちからルーンを奪われる可能性があるわ。」


「……ッ!」


 エリヤの言葉に、マルコはブレスレット状のドラウプニルをぎゅっと握る。


「さぁ、魔法少女出動よ、ね♪」


 明がドアを開けると、マルコは駆け足で公園へ向かおうと走りだす。

 マルコの視界に追うように自動筆記が現れる。


≪子供は総ての生き物の中でも特に豊富な可能性と意味を持っているのね

特に魔法使いは存在するだけで大きな意味を持つから奴等にとっては極上の獲物

だからブランクたちは大人より優先してマルコちゃんのような子供を狙うから注意してね By明≫


「それで、その集めた意味はブランクには与えられずそれを作った魔術師へ魔力を供給し続ける…

だから新しく意味を作れる程の魔力をブランク本体に与えて魔術師とのラインを切ればいい、やり方は昨日のとおりよ!」


「…うん…」


 道中にマルコは、反対に歩く銀髪の少女とすれ違う。


「……ふぁ?」

「……?」


 流れるような銀髪をツインテールに結い、漆黒のマントを羽織っている

 すれ違いに互い見た横顔は、何処か人形のように無機質で…急に立ち止まって振り返るが、その場にはもう誰もいなかった。


「…どうしたの?」


「…何だろう…とにかく急がないと!」


 気を取りなおして公園の近くまでたどり着くと、その存在がおぼろげに見えてきた。

 反射する光も、影もない、均一に白い人型の何か…ブランクだ。

 数は2体、霧の漂う公園を徘徊するその姿はどこか大切な物を無くし、それを探す様を見るようで――それを見るマルコの心にずきりと憐れみを焼き付けさせる。


「…私が、助けるんだ…っ!!」


 決意を言葉にして、右手に装着したドラウプニルをブレスレットから腕輪の大きさに拡大する。


「いける?」「うんっ…大丈夫!」


 マルコは頷くと右手に装着したドラウプニルを掲げて表面の呪文を読み上げる。


「王の財宝よ、流れる円環の渦よ、再顕現せし『王国(マルクト)』の魔法を示せ。私は『王国』の魔法使い!

フェオ・ユル・ウル・アンスール!!」



 ゴォッ と、腕輪を起点に眩い魔力の奔流がマルコを包む。


「ふぇあ…!?」


 変身の最中に目を開けたマルコは、自分の服が破けるように大気に消えて行くのを見て慌てる


≪大丈夫よぉ、変身を解除したら戻ってくるからね♪

よっしゃ良い絵が撮れたわ…ね♪ By明≫


 明はマルコを落ちつけようと自動筆記を送るが、何処かから見ていたのだろうか思考が駄々漏れしているような文が入っている。


「ぅぅ…もうお嫁にいけないかも…」


 髪の色がレモン色に変化し、涙ながらにそう言うマルコを草色の服と皮によく似た素材の装甲が包む。

 消えた服とは逆に大気から再生するようにマルコの身に纏われていき、マルコは最後に現れた草色のベレー帽をかぶる。

 この瞬間魔法の知識がマルコの中を駆け巡り、王国の魔法使い…否、魔法少女マルコがこの世界に顕現した!

 その魔力の奔流に誘われるように、ブランクたちは無音の雄叫びを上げながらマルコに殺到する。

 しかしその2体がマルコに接触する前に、マルコは足元にドラウプニルの『環』を出現させそのまま一気に飛びあがる。

 地面から離れる瞬間に土が盛り上がり、マルコの跳躍を助ける

 それはマルコが地面の一部において生命の流れをコントロールした事によるものだ。

 数メートル離れたところに着地したマルコは増幅した自分の運動神経に感動したかのような高揚を感じる

 しかし一瞬の後にマルコの増幅した感覚はブランクが即座に次の行動に入った事を知覚し、思考を切り替えた。


「っ!!…エリヤ!」「オッケー!!」


 エリヤはマルコの指示と同時に県の姿になりマルコの手に握られる、そして迫るブランクの拳を受け止めた。

 そして拳をあてたブランクの胸の前にドラウプニルの環が現れる。


「やぁぁあああ!!」


 そのままマルコはブランクに大気中の魔力を循環させる

 はじめから大気を流れていたように幾筋もの光が束となり、集束した黄金の光がブランクを貫いた。

 やがて光が止み、ブランクが崩れたところでマルコは剣と化したエリヤでブランク自身を…ブランクと魔術師をつなぐ魔術の繋がりを断つ。

 ザン…!!という物質的な音と共に、ブランクは人間へと戻り意識を失って倒れた。

 もう一体のブランクにも環を使って魔力を循環させようとマルコは振り向いた…ところで目を見開いた。

 ブランクの体の表面にたゆたうように、一文字の紋様が浮かんでいる…それは始めからそれに刻まれていたのか

 それとも新しく浮かんだのか…


『フレイヤの衣、羽ばたく真名を原初の土人形に与える』


 録音されたような少女の声とともに、メキメキとブランクの腕の形が変わる…それは明らかに人間の腕のシルエットではなく、翼だった。


「・・・いけない!!マルコ、早く魔力を…」


 エリヤが叫んだのと翼を持ったブランクが羽ばたいたのはほぼ同時だった。


「く…!!」


 マルコが急いでドラウプニルの環をブランクに向けて飛ばすが、それを上回る速度でブランクは宙を飛び回る

 新たな意味を得たことを噛みしめるようにブランクは空を縦横無尽に飛び回る。

その様を見て剣の状態のエリヤ歯噛みする


「く…っどうすれば!!」「大丈夫!」


 マルコはエリヤにそう返すと、自分の周りにドラウプニルの環を4つ出現させる。

 一つは細く大きいリングが自身を環状に覆うように、3つは自分の背中と両肩周辺を高速で回転している。


「…飛んでみるっ!!」


 マルコはそう言って力いっぱい地を蹴り飛び上がった、すると周囲の環が空気の流れを操り始める

 それは飛行機のジェットに似ている原理で、環と不思議な力で繋がったマルコを持ち上げた。


「そんな、こんな魔法を…思いつきで!?」


「なんとかっ…わぁぁ!!?」


 少し環のコントロールを誤り公園を覆う林に突進してしまうが、自身を覆う環に当たりなんとか自身の身は守れた。


「ちょっと、大丈夫?」「うん、今度は…いけるっ!!」


 マルコは体勢を立て直して環を総べて地面に向けて空気の流れを噴射し

 バォウ!! という轟音と共にマルコの身は空高く飛び上がった。

 あとは周囲に浮かせた環が姿勢の制御と飛行の補助をする筈だ。


「凄い…過去様々な魔法使いにこの力を与えたけど、こんな使い方初めて見たわ…」


「ちょっと前に聞いたんだ、飛行機とかヘリコプターって空気を押したりかき分けたりして飛ぶんだって」


 ひょっとしたら…この子は科学の発達した現代においてとんでもない才能と発想を持って生まれた魔法使いなのかもしれない…

 エリヤは素直にそう感じた。


「メイ……あんた凄いの選ばせてくれたわね…っ!!」


「…いくよ!!」


 エリヤの独り言は聞こえなかったようで、マルコは空気をかき分けて空に見えるブランク追って飛行した!


『……!!』


 ブランクは声もなく驚いた様子を示した、空を飛ぶ意味(ルーン)もなく仇為す者が空を飛んで向かってきたのだから当然である。


「ドラウプニル、巡って!!」


 そう言ってマルコはブランクに向かって環を発射した。

 ガチン!! という音と共に環はブランクを補足し、砲門のように放った大魔力の奔流をブランクに打ち込んだ。


『………っ!!……っ!!』


 ブランクは魔力を循環させられたショックでそのまま墜落し、マルコは最高速度でそれを追う。


「間に合えぇぇ!!」


 マルコはブランクの落下地点に環を作り、大気を高密度で循環させ空気のクッションを作った。

 そしてふわりとブランクの体が浮いた瞬間に、マルコがブランクと魔術を切り裂いた。


「・・・ふぅ、修正完了。」「お疲れ様、マルコ」


 フォン とマルコの服と髪が元の姿に戻ろうとした…その時!


「マルコ!」


「ふぇ…!!?」


エリヤの叫びに、マルコは反射的に魔力を放射した。

それは変身した魔法使いとしての本能的な行為、驚いた時に誰でもとっさに身構える事と変わらない反応だ。

しかしその衝撃波は微弱ながらも、マルコの眉間めがけて飛んできた剣の起動を逸らした。

 ドカッ!と、すぐ後ろに刺さった鋭い剣の存在感に、マルコは固まった。

 それは、先程のブランクとは比べ物にならない確実な殺意だった。


「『王国』…魔法使いの顕現を確認」


 機械的なまでに抑揚のない声、それと共にマルコの目の前へと降り立ったのは大人ほどの大きさを持つ巨大な黒い鳥だった。

 しかし黒い鳥は地に足をつけると骨格を無視して急速に身を折り畳み始める。

 そして翼を開く――否、それは翼ではなく黒いマントだった。

 黒く、先端が羽毛のようにざわざわと風に流れるマント。その中から姿を現したのは、蒼みがかった美しい銀髪を風にたなびかせる――マルコと同じ歳くらいの少女だった。


「フレイヤの翅外套…!!!マルコ!!」


エリヤは再び剣の姿に戻るとマルコの手に収まった。


「気をつけて…!!こいつ、『威光(ケテル)』の魔法使いだ…!!」


「『威光』……?」


 感情を微塵も感じさせない、その少女の美しい青い瞳。

 マルコはどこか違和感を感じながら、その少女にドラウプニルを装着した右手を向けた。

 対に、マルコを見つめる少女は口を開いた。


「マスターの邪魔をする魔法使い…殺す!!」


 その言葉と掲げた黄金のカーテナ剣を合図とするように、少女の背後から黒い『威光』が吹き出し、その総てが大量の悪意を表すかのような凶悪な刀剣の姿をとった。


次回予告



第十魔法、王国の魔法使い


第一魔法、威光の魔法使い


空を舞う二つの神秘、しかしその差は圧倒的だった。


マルコはそのガラスのような瞳に何を見るか。


そして

威光の魔法使い、ジュリア=F=ヘンデル

威光の選定者、メタトロン

神賀戸レン

サンダルフォン

青銅欄


手札を切る魔術師同士の思惑が交錯する中


神賀戸の机に洗いたての靴下が投げ込まれる。



少年達は、負けず嫌いだった。


次回:3rd.負けず嫌いたち(It loses and dislikes up)

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