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幕間
――これでようやく、最後だ。
禍福の天秤は自分の中に確かに存在し、相手から幸せを吸い上げる度に予感としてその時が近づいていると知らせてくれた。
初めの一人から幸せを奪った時、人の言葉を手に入れた。人間は財産を失って飼い猫の自分すら置いて姿を消したきり、どうなったか定かではない。
言葉を話せるようにはなったが、それを隠してまた普通の猫として別の人間のそばに付いた。
同じように時が流れ、やがて禍福の天秤が傾くと人間は拠り所を失い、遠いところへ消えた。
そして自分は若い人間の姿を手に入れた。どうやら不完全なうちは猫の姿に戻ったりできるようで、そのおかげで三人目にも同じ手が使えたので助かった。
そして、三人目。
人間が好む酒という奇妙な汁をたらふく飲んだ次の朝、『予兆』となる胸騒ぎを感じた。
――ああ、これでようやく最後の一つを手にできるのか。禍福の天秤を与えてくれたカミサマノツカイという奴の話では、今回ので自分は本当に人間になれるらしい。
待ちに待った瞬間だ。